七海ななみ
2026-03-31 06:49:53
2216文字
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貴方が見つけてくれた①

ルカキリ。フリンズ先天性女体化ですが、見た目変化無しくらいの背丈もあって貧乳です。周りからも男性と思われています。
ファルカってレディの扱い、素晴らしいじゃないですか。そんなんされたら惚れるわ。終わりは決めてないが続く。


名前も、見た目も、声も、体格も男性のようだった。昔から女性のように振る舞ったら指を指されて笑われ、男性のように振る舞ったら、女性から黄色い声があがった。
お洒落に興味はあったが、諦めた。似合わないものはどうしようもない。周りに不快感を与えるなら止めたほうがいい。
ライトキーパーに所属しても、男物を着こんだ。みんな、僕を男性だと思っているだろう。道端の花をちらりと見る。可愛らしい花は僕に似合うわけもない。そう、思っていたのだ。
夜明かしの墓で、騒音が鳴り響く。様子を見に行くと、男性が荷物をぶちまけていた。酒でも割れただろうか。男性は濡れている。ひとまず、部屋に案内をすることにした。

「こちらにどうぞ」
「いや、ここで結構だ。レディーの部屋に入るわけにはいかないからな。悪いが、タオルを貸して貰えないだろうか」

レディの部屋。思わず固まってしまった。

どうした?」
………あの、レディ………?」
「美人なレディー、だろ? ああ、口説いてる訳じゃないからな。見知らぬ男に美人と言われても不快だろ。悪かった」
「い、いえ」

今まで、女性らしい所はなかったから、男性のように振る舞うことを受け入れていた。諦めていた。
でも、初めて、男性の振る舞いをしていたのに、女性として扱って貰えた。
すごく、嬉しい。
顔が熱くなる。落ち着け、タオルを渡さなければならない。
ふと、鏡を見る。男のようで乙女の表情をしている自分自身が写り、一気に冷静になった。
気色が、悪い。浮かれてた自分が、馬鹿馬鹿しい。
タオルを取り出し、男性の元に戻る。
危ない所だった。この男性の目を汚す所だった。

「お待たせしました。こちらをお使いください」
「ありがとな!」

男性は笑顔でタオルを受け取り、濡れた身体を拭き始める。
男性の姿をよく観察すると、がっしりとした筋肉をしていた。胸は僕よりありそうだ。顔立ちも整っている。
見とれそうになるが、自分を叱る。何を考えているんだ。

「助かった。顔色が悪いが、大丈夫か?」
「そうでしょうか。いつもこんな顔色なので」
「そろそろ冷えてきたせいかもな。レディーなんだから、身体を冷やさないようにな。本当にありがとう。俺はファルカ。近いうちに礼をさせてくれ」

そういって、男性、ファルカさんは去っていた。この辺りは確かに寒い。ふるり、と身体が震える。

『レディーなんだから、身体を冷やさないようにな』

顔が熱い。心なしか、世界が輝いて見える。女性扱い、してもらった、だけなのに。


────────


煌びやかな舞踏会。男物の服を身に包み、会場内を歩いている。

『あれが例の?』
『あんなに肩幅もあると、着られるドレスが可哀想ね』
『声も聞いた? 可愛らしさの欠片もない』

女性達がひそひそと話している。
いつも、そうだった。扇の影には嘲笑いが見えていた。

『ああ、あいつが』
『なんであんな男物を』
『あんな背丈なら男物しか似合わないだろ』

男性達がひそひそと話している。こちらを見て嘲笑っている。
女性らしさもなく、かといって完全な男性でもない。どちらにもなれない、不完全な存在。
どうすれば、いいのだろうか。どうすれば、よかったのだろうか。いつもわからなくなる。
立ち止まり、下を俯いていると、頭上から声がした。

『美人なレディー、だろ?』

顔を上げると、ファルカさんがこちらに手を差しのべていた。
エスコート、だ。初めて、エスコート、された。
手を取ると、見慣れた天井があった。

………ゆめ、か」

懐かしい夢だ。思い出したくもなかったが。
初めて女性扱いされたから、浮かれているのだろう。らしくもない。
身を整えていると、コンコン、と扉を叩く音がした。

「どなたでしょうか」
「俺だ、ファルカだ。昨日助けて貰ったお礼を持ってきたんだが

ファルカさん?!
格好を見る。とても人前に出れる姿ではない。

「す、少しお待ちください!」

慌てて着替える。普段ならそこまで気をつかわないのに。
顔が熱い。鏡を見る。男のようで乙女の表情をしている自分自身が写る。

『美人なレディー、だろ?』

少なくとも、ファルカさんは、レディとして扱ってくれる。
乙女の表情のまま、扉を開けた。

「悪かったな、都合も考えず押し掛けたな」
「お、きに、なさらず」
「これ、お礼だ。受け取ってくれ!」

色とりどりの花束が渡される。花なんて可憐なものは似合わない、そう言われたのに。
震える手で花束を受け取ると、ファルカさんは太陽のように笑った。

「うん、やっぱり美人には花が似合うな! そうだ、名前まだ聞いてなかったな。教えてくれないか?」

かつて、名前を名乗ったら男の名前と笑われた。今は、女性として気づかれなくなった。
でも、ファルカさんなら、きっと。

キリル・チュードミロヴィッチ・フリンズ、です。フリンズと、お呼びください」
「フリンズ、よろしくな!」

男のような、名前だと、笑わないでくれた。
ファルカさんの顔を見る。世界一、かっこいい男の人だ。
女性として扱ってくれた、ただそれだけで、僕の世界は変わった。



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