kanaco
2026-03-28 08:03:46
803文字
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【十二信】オーバーキル

《十二信》十二と信一が任務に出るも、敵の数が多すぎて…。1ページ目は縦書きver、2ページ目は横書きverです。


十二信 『オーバーキル』
 
 (多い……
 十二は声に出さず、ぼやいた。
 どれほどの人数を切ったのか、数えるのはとっくに止めてしまった。
 
 キリがない。

 体のあちこちの痛みより、息が上がっていることの方が問題に思った。目当てのカードは、信一が持っている。目的のためには、信一を先に逃がすのが得策だ。
 
 そう簡潔に伝えると、信一が片眉をヒクリと上げた。
 
 突然、胸ぐらをつかまれた。まるで顔面がぶつかるような勢いで、信一の顔が近づいてくる。物理的な衝撃は、想像よりもなかった。しかし、朦朧としていた脳内には、爆発するほどの衝撃が起きた。
 
 触れたのは、柔らかい唇。
 噛みつくようなキスだった。

 一瞬なのに、時が止まる。
 体中の痛みなど吹き飛ぶような威力。
 こんなもん、オーバーキルだ。
 感触以外、ぶっ飛んだ。
 額から流れる血が、目に入ったなんてどうでもいい。
 信一の顔を凝視した。
 
「生きろよ」
 真剣な瞳の、信一が言った。
「死ぬな」

 十二は何か喋ろうとして、声が出ず、やがてふっ……と詰めた息を吐く。ニヒルに笑ってやろうとして、腑抜けた顔しかできなかった。

 それでも、信一の顔を見て……辛うじて、言った。
 
「呪いかよ」
 死ねなくなった、と十二が子供みたいに拗ねる。

「おまじない、って言えよ」
 信一が悪戯っぽく、そして美しく笑んだ。

「生き延びて、後で俺をギュっとすりゃいい」

 簡単とは言わない。
 けど、実に単純で、シンプルなことだ。

 無茶を言いに逃げて、信一が駆けだした。
 十二は体をゆらりと揺らしながら、立ち上がった。


 単純?言いやがる。
 いや……
 確かに、実にシンプルだ。


 十二は刀を握る手に、再び力を籠める。
 
 それから押し寄せる軍勢に対し、不敵に笑ってみせた。