Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
mohu09
2026-03-25 22:14:10
3353文字
Public
Clear cache
愛してると言って
愛してると言って怒られるジェなジェマク?
1
2
「それ何回目だ?」
酷く不機嫌そうに顔を歪めたマークにそう問われて、ジェイクは「は?」と短く声を漏らした。何の話だかわからず困惑する。首を傾げてみても、マークは眉を顰めたままだ。
回数の話だよな、と自身の中で今一度整理してみる。そんな回数を数えていなければならない話、今していただろうか。多分、していない。
「何のことだ?」
自問自答しても答えが出なくて、ジェイクはついに声に出して聞いてしまった。思い当たるものがどうしてもなかったのだ。
すると、マークは仕方ないといった風に読んでいた本を閉じ、ジェイクに向き直った。改めて真っ直ぐに見つめられると、少し居住いを正してしまいたくなる。
「その"愛してる"とか態々言ってくるやつだ。何回目だ、それは」
「はぁ?」
そんなもの数えているはずがないだろう。だってジェイクとマークは恋人同士で、当たり前だけれどジェイクはマークを愛していて、それを伝えたいから「愛してる」と言う訳で。そんな当然の愛情表現を数えている方がおかしい。今だって、マークが静かに本を読んでいる姿が妙に様になっていたから「愛してる」と言って髪の毛にキスをしただけだ。それの何が駄目だと言うのだろう。さっぱりわからなくて、ジェイクは思わず瞠目する。
「そんなの数えるかよ。何が言いたい?」
「やめて欲しい」
「何を?」
「その"愛してる"って言ってくるのをだ」
そう言ったマークは、まだ不機嫌そうに表情を歪めている。
今度は絶句するしかなかった。恋人同士だと言うのに、何故愛情表現をやめなければならないのか。理解ができない。ジェイクは今までも何度もマークに愛情表現をしてきたつもりだし、彼だってそれを黙って受け入れていたはずだ。まあ、確かにマークからそれが返ってくることはなかったけれど、てっきりちゃんと愛情を受け止められているのだと思っていた。まさか一方通行の感情だったなんて。流石のジェイクもショックだ。
「何でやめなきゃならないんだよ」
「しつこい。朝から晩まで愛してる愛してるって何度も言われたら、食傷気味にもなる」
「だってしょうがないだろ。お前のこと愛してるんだから」
「だからやめろ、それ」
マークは心底嫌そうにして、ジェイクの口を手で塞いだ。まさか食傷気味と言われる程にまで思われていたとは。想像もしていなかった。
ジェイクは、思ったことはすぐに口にしたいタイプだ。それが愛情だろうと憎悪だろうと。好きな相手にはきちんと口と行動で伝える。嫌いな相手にだってそうだ。そこに違いなどない。感情を口にしない行動で示さないということは、思っていないのと同義だ。だからジェイクはきちんと感情を伝える。相手にわかって欲しいから。
だがそれがマークにとっては煩わしかったようだ。こんな風に顔を歪めるくらいには。何とも悲しい話である。
「お前、俺のこと好きじゃないの?」
「
……
そうとは言ってない」
「じゃあどう思ってる?」
「そんなこと言う必要はない」
ふい、とマークが顔を逸らした。ジェイクは違和感を覚える。マークは別に、ジェイクのことが好きではないという訳じゃないらしい。むしろ、マーク的な表現から察するに好きだと思われている。まあ、恋人同士なのだから当然だが。
では何故愛情表現をしてはならないし、マークも愛情表現をしないのか。それが疑問だったのだけれど、何となく今の反応でわかってしまった気がする。その答えをマークの口から言わせたい、という欲求が湧いて出てしまった。ジェイクの悪い癖だ。
「言う必要はないって言うけどさ、俺たち恋人同士だろ。たまにはお互い愛情を伝え合うのも大事だと思うんだよな」
「お前はいつも伝えてきてるだろう。だからしつこいと
……
」
「"俺は"な。マークは?」
沈黙が走った。マークはまだ顔を逸らしたままだ。言いたくない、という意味だろう。わかりやすくて大変助かる。
「お前ってほんと自分の感情口にしないよな。そんなんでよく爆発しないな」
「余計なお世話だ。何も困ってない」
「よく言うよ。本当は言いたいくせに」
「何をだ」
「俺を好きだって」
マークがバッとジェイクの方を向いた。また顔を顰めている。漸くこちらを向いてくれたな、と思った。
恋人関係を破棄していないのだから、本当はマークだってジェイクを好きなのだ。そこはジェイクも確信を持っている。ずっとマークを見てきたからわかる感情だ。だが、彼はそれを口にしようとはしない。何でも一人で内側に抱え込む性格だからだ。それはわかっているけれど、今はどうしても彼に「好きだ」または「愛してる」と吐かせてみたかった。ジェイクのわがままだ。
「別に言いたいなんて思ってない」
「それはショックだな。お前は俺を好きじゃないと?」
「だからそうじゃないとさっきも
……
」
「言わないなら、思ってないのと同義だ。だったら別れた方がいい」
そう残酷に告げると、マークは目を溢れ落ちそうなほどに見開いた。その反応がより確かな確証となって、ジェイクは笑いを堪えるのに必死だった。マークはきちんとジェイクを想っている。確認行動なんてしなくてもわかっていたことだが、こうしてみるとマークは意外とわかりやすいなと思った。
マークが見開いた目でふるふると虹彩を震わせたと思ったら、顔を伏せて小刻みに震え出した。それは怒りなのか悲しみなのかわからないが、相当に堪えているのは確かだろう。
「
……
お前の愛情は、そんなものだったのか」
絞り出すように吐き出されたマークの言葉は、小さくて風の音にでも掻き消えてしまいそうなほどだった。こういう反応が返ってくるのは目に見えていた。だからわざと言ったのだけれど、この恋人はわかりやすくて本当に助かる。
「俺は何度も言っただろ。愛してるって。それを返さなかったのはお前だよ、マーク」
「
……
だから別れるって?」
「お前が俺を好きじゃないならそれでもいい。この後は簡単な話だ。わかるだろ?」
わざと意地悪な表現をすると、マークが低い声で唸った。何かを言いたそうにしている。さぁほら、言ってみろよ、とジェイクは心の中でマークを煽った。
「
……
じゃない」
「ん?」
「そうじゃ、ない」
「何が?」
意味なんてわかっていて聞いた。でないと、マークは意地でも次の言葉を口にしないだろうと思ったから。
「
……
好きじゃないわけない。俺は、お前をあい
……
愛してるから、恋人になったんだ。今更別れるなんて許さない」
マークは涙目で精一杯ジェイクを睨みつけて、震えた声で告げた。思った以上の言葉が返ってきたので、ジェイクは感動に口笛を吹いてしまいたいくらいだった。
好きどころか愛してるときた。想像以上の出来だ。マークにしたら一世一代の告白にも近いものだったのではなかろうか。ジェイクの告白に「そうか」と冷静な反応を返してきた奴と同じ人物とは思えない。
「良くできました」
ジェイクは満足気に呟いて、震えているマークを強く抱きしめた。するとマークは涙をポロポロと溢しながら抵抗してきて、力一杯ジェイクの背中を叩いてくる。少し痛い。
「おま、おまえ、試したな!」
「ごめんなぁ? お前が俺を泣くほど愛してるとは思わなくてさ」
「愛してない! 嫌いだ! 大嫌いだ!」
「はいはい」
先程とは全く逆のことを叫ぶマークの瞳からは、まだ雫が溢れている。別れると言ったことが相当にショックだったらしい。少し意地悪しすぎたかなと思ったが、こうでもしないとマークは思っていることを口にはしなかっただろう。本当に、手のかかる恋人だ。
「俺は愛してるぜ、マーク」
「だからやめろと言ってる!」
「素直じゃないな、お前も」
ジェイクは仕方がないなといった風に呟いて、マークの唇にキスを落とした。すると途端に黙り込むマークがどうにも愛おしくて、ジェイクはふはっと息を漏らして破顔したのだった。
終
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内