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保科
2026-03-14 13:19:44
3306文字
Public
超かぐや姫!
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しゃるうぃー!
いろヤチ
花火大会の、いこー?の時に、かぐやが茶化すでもなく泣きながら誘われたことに感謝してる構図がマジで好き
「
――
ヤーチヨさーん、元気?」
ぬる、と現れた彩葉に声をかけられたのに、私は作業の手を止め、開いていたコンソールをすべて閉じる。おおよその場合において、彩葉よりも優先すべき事項はヤチヨの中にはないのです。
「彩葉だ!こっちでは久しぶり〜、どうしたの?
珍しいね、こんな時間にツクヨミに来るなんて」
閉じる瞬間の日本時間の表示から考えれば、普段なら大学に通ってる時間だし、彩葉は基本真面目だから家以外でスマコンは使わない。
それに最近は資格試験で忙しくて、ろくにツクヨミにも来れてなくて。タブレット越しに会話をするのがせいぜいだったのだ
――
ついつい浮かれ気味の私の問いかけに、彩葉はまあね、と曖昧な相槌を打つ。
そうして、誰もいない天守閣を(FUSHIは巡回中。勤勉で偉い、はなまるあげちゃう!)、落ち着きなくキョロキョロと伺った後。
「その。
……
今忙しい?」
「え?忙しい
……
」
予想外の質問に、むむ、と唸る。ヤチヨにとっての稼働率は非常に導きが難しい。
「そうだねぇ。分裂してるミニヤチヨのうち、大体20%が現状動いてるかな〜。えっと、全体の稼働率でいうとエリア別で
――
」
「あ〜、ごめんそういうタスクマネージャー観点じゃなくて。
えっと、
……
今、目の前にいらっしゃるヤチヨさんの、ご予定的な?」
「えっへへ、ミニライブの配信は夜8時!要チェックなのです!」
「当然、スケジュール出た時点でリマインドはつけてるって
――
いや、そうじゃなくって
…
」
ガシガシと頭を掻いた彩葉が、途方に暮れたようにため息をつく。なんだろう。ピースサインを掲げたまま首を傾げる私に、何故か彩葉は申し訳なさそうだ。
「どしたの彩葉、なんかヘン?」
「
……
、なんだろ、自分の成長のなさに呆れてたというか
……
そんな感じ?」
「ええ?彩葉の成長速度ほど目覚ましいものも無いんじゃないかとヤチヨは思いますが
……
?」
「いや、皆それ言うけどさ
……
別にやることやってるだけだよ。評価されることじゃないって」
そのやることをやるのが難しいんですよ?彩葉さん。相変わらず自己評価の歪が治りきらず、特異性に一番無自覚な御本人は、私の褒め言葉に微妙な顔をした後。こほん、と咳払いを一つ。
「
……
つまり、だけど。
今から時間ある?ヤチヨさんは」
――
やっと意図が組めた。私の今のスケジュールについて。それなら返答は一つだけだ。
「ああ、そういうこと?そりゃもう、ありあまりの有明海でございます。なんなら、彩葉のためならサーバーダウンの時でも駆けつけるけど
……
」
「そこは管理人しなさい。
あー、じゃあ、まあ、えっと
……
暇ってんなら、その。
私も、講義、休講になってさ」
「そうなんだ!
……
彩葉的にはラッキー?」
「そ、どちらかといえばラッキー。ラッキーなんだ。だから、んーと
……
ヤチヨさん」
「はいはい?」
そういえば、何故か今日の彩葉は、私のことをさん付けだなぁ、と思いつつ、続く言葉を待つ。
所在なさげな眼差しが、ゆらゆらと揺れながらも私を見据える。徐に手が差し出された。それを反射で握ろうとして、
「
…………
デートしよ?」
彼女の顔、血流を反映して赤らんだ頬は、照れているときのアバターエフェクトだ。手を握る。温度はない。でも、熱いと思った。
「
………
、
……………………
でーと」
オウムのように繰り返す。
「うん」
彩葉の相槌が、なんだか遠い。
――
なんだっけ。
でーと、って。ふじゅーで買えるやつだっけ。
ぱしゃり。水面に鯉がはねて、波紋が生まれる様子を、私はぼんやりと眺めている。物理演算がよく働いている証拠で、今日もツクヨミは平和である。水面に映る私はいつものライバー衣装から、ラフな変装用の服装に着替えている。
そんな私の隣、手をつないだまま、同じようにソファに腰掛けた彩葉が、ポツポツと説明するに曰く、
「この前、散策してて見つけたんだ。穴場で
……
って言っても、ヤチヨに言ったって驚かないよね、流石に」
そりゃもう、知っている。何せこの空間の施工主ですので。この、外れにある憩いのエリアの池と建物はチル用のスポットとして用意したけれど、メインエントランスへのアクセスが悪いから、ユーザーからはあまり重用されなかった。とはいえ需要を読み切れないため放置していた場所で。知っている。けど。
「彩葉」
「うん?」
「ヤッチョの理解乏しく申し訳ないのですが、
……
結局、何ゆえ、ここに?」
「
……
デート」
駄目だ、回答がずっと変わらない。獣耳を伏せた彩葉に、何回言わせるの、とつっけんどんに反論されても、何回言われても理解できないのだから仕方ない。なにせ、貴女からそんな甘いお誘いを受けるのは初めてなのだ。
「
……
あー、その、そういうののセオリーから逸れてるとかだったら、ごめん」
「
……
ううん、ヤチヨだって正解なんか知らないよ、知らなくて
……
」
「嫌?」
「嫌じゃない」
それだけは本当だ。彩葉が私のことを考えて、私をわざわざ連れてきてくれた場所だ、嫌なわけがない。顔を向け、それだけは即答すると、そっか、と安堵した様子で彩葉が笑う。
――
眩しい。彩葉ってこんなに眩かったっけ。
妙にキラキラの彩葉に、サングラスをかけながら顔を顰めていれば、なにそれ、と呆れたみたいな優しい声で返されて。
「ほら。最近、ヤチヨと話すのも二三言位だったから。ちゃんと時間取りたくてさ。
……
強引だったかな」
「そんなことないよ?彩葉のお誘いはいつも最適なのです」
「あーほら、すぐ甘やかす。それヤチヨの悪いところだからね」
「いえいえ、怒る時は怒るよ?般若ヤッチョはげに恐ろしきだよ〜?」
「
……
やば、ちょっと気になる」
「こら」
成程、私と話したかった、だなんていじらしいことを言う。サングラスを片付けつつ、思わず口角があがるのを抑えきれなくて、
――
でも。
「なら、誘い文句は息抜きとかでもよかったんじゃないの?」
「
……
そんなに気になる?」
「なっちゃう」
彩葉が、こういう冗談を口にするのは珍しい。再三の追求に、口元に手を当てた彩葉が、えと、と視線を惑わせて。
「
……
、やりたかったことは、『散歩』でも『息抜き』でもラベリングが違うだけで同じだから。
それなら、
……
私が勝手な名前つけても、いいかなーって」
「
―――
」
「ほ、ほら。
貴女とのお出かけが、特別なものなら、嬉しいから
……
」
彩葉の言葉が、その贈られた柔らかな気持ちが、じわじわとこの体に染み渡るようだった。そんなふうに思ってくれて、それを私に押しつけてくれることが、嬉しい。ちょっとだけわがままな彩葉は、今はまだヤチヨだけが見られる特権だ。
「
……
えっへへ、そっか。そっかあ。
彩葉はヤッチョとデートしたかったんだ?」
「う。
……
そーですけど。悪いですか。
……
てかずっとそう言ってるのに、何でそんなに何度も確認するの?」
「ふふふ、悪くないよー。
そうだ!なら次は、テーマパークエリアとか行きたい!あのね、お揃いのコスチュームに〜、お揃いのアクセのカチューシャで〜」
「ええ?次って
……
てか、ツクヨミ内じゃあんた目立つから流石に
……
」
「だめ?」
むぐ、と下唇を噛んだ彩葉が、汗をダラダラかきながら「
……
それやめよ?」とボソボソつぶやく。ふふ、やめませーん。
「ヤチヨ、彩葉が来てくれなかった間、ずーっと寂しかったなあ
……
?」
「い、いや、だからその埋め合わせは今」
「行きたい、なあ
……
?」
「
……………………………
次の休み確認してくる」
「やったあ!」
「あ゛ーーーーー
……
」
顔を押さえて俯く彩葉のうめき声にけらけら笑いながら、そっか、と無性に嬉しくなる。私のおねだり、まだ、聞いてくれるんだ、彩葉。
「いろは」
「はい今度は何!私だって何でもはやりませんよ!」
「デート、すっごい楽しい」
「
……………
、
………
そーですか」
ぶっきらぼうな返答といっしょに、手を改めて握り直される。そんな、なんでもできちゃう彩葉の、ほんのちょっとの不器用さが、どうしたって私にはうれしいのです。
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