adashino-kitune
2026-03-13 00:01:49
2439文字
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【捏造ゴッホ】きつねの過去

きつねの過去





「おかーさん、どこいくの?」
小さい子狐は、巣穴から出ていこうとするお母さん狐にききました。
『すぐよ。食べ物をとってきたらすぐ戻ってきますからね』
お母さん狐はあいさつをするように、子狐の鼻を前足でちょんちょんとつつきました。
外は空から白いものが降ってきて、明るいけれど巣穴の外はとっても寒いです。
子狐はお母さんが取ってくる栗が大好物。それと滅多に食べられないけどウナギも大好きでした。

「おかーさん、まだかな
ところがいくら待ってもお母さん狐は戻ってきません。
冬が終わるまで自分の尻尾を枕にして、何とか耐えていました。そして地面に小さな芽が出てきても、お母さん狐が戻ってくることはありませんでした。

子狐はとうとう言いつけを破って、外に出てきました。お母さんに危ないからと言われてきた、灰色の硬い地面を歩いてみます。

「あ!狐だ!」
(きつね?)
立ち止まると、自分よりはるかに大きい生き物がなにか喋っています。
「あらぁ本当ね、まだ赤ちゃんだから山から降りてきちゃったのかしら」
「かわいい〜、狐ちゃんこっちおいで!」

『狐』という単語がわからないまま、子狐は人間の足元へと擦り寄っていきました。
それからと言うものの、町へ降りて食べ物を貰う度に『狐』と呼ばれるようになりました。


そして、ある日兵十と出会ったのです。




手元に並べた編入書類を前に、兵十は唸る。
「なぁ、本当に名前は きつね でいいのか?」
きつねは商店街のおばちゃんから譲り受けたランドセルに、教科書を詰め込んでいた。
娘はもう使わないから丁度良いと言ってくれたのだ。
きつねが喜んで背負うと、おばちゃんも顔を綻ばせた。

「うん!きつねがいい」
何で?」

「怒られる事もあったけど、みんなが嬉しそうにきつねって呼ぶの。アタシのこと。だからこれが良い」
それに兵十、名前のセンスないんだもん。とつけ足す。
「あぁそうかよ」
悪かったな、おっさんのネーミングセンスが無くて。

「んじゃ、今日からお前さんはきつねだ!」
名前の欄にボールペンで『伏見 きつね』と書く。
名字は俺が辞典を開いて似合うのを選んだけど、まぁ悪くないんじゃないかと腕を組んだ。

これで窓から眺める日々にも、お別れだな。

ゆっくり成長していけよ、きつね。






__________


「兵十〜」
「なんだ?」
「明日ねー、牛乳パック3本とラップの芯使う〜」


「だから何で前の日に言うんだお前はァ!!!」

前言撤回、とっとと成長してくれ。