冬暁
2026-03-06 01:43:00
3303文字
Public ホム主
 

フロントの朝日

ぐろおか展示作品その2。
疲れて眠れない彼女と、そんな彼女に寄り添うホムラの話。


「ん、ゥ……?」
 瞼の裏が赤い。眩しさに顔を埋めようとして、布団がないことに気づく。
 目元を片手で覆って瞼を持ち上げる。目の前にはホムラがすやすやと寝息を立てていた。長い睫毛に光が反射して薄い色になっている。微かに震えるたびに、光が散りばめられているみたいで綺麗だった。何度見ても整った顔立ちをしてる。
 体を起こせば視界には朝日に照らされた海が見えた。
 軽く身動きすればパキリと音が鳴る。車で一晩過ごしたからか、あちこちが固まってしまったみたいだった。
 かけられていた膝掛けをホムラにかける。静かに車から降りれば、冷たい潮風に迎えられた。
 グッと体を伸ばすと気持ちがいい。体はバキバキだけど気分はスッキリしていた。
 きっとあのままベッドにいたなら、何度も目が覚めて憂鬱な気持ちで朝を迎えていたかもしれない。
 浜辺へと降りると潮騒の音が心地良い。以前はあまり馴染みなかったのに、今はすっかり生活の一部になってる。
「あ」
 波際を歩くカニを見つけてしゃがんだ。
「おはよ〜。今日も元気だね」
 カニは止まってハサミを振ると、少ししてまた動き出す。
 ザァァと砂が引かれる音に耳を傾けていると、背後から砂を踏む音がした。
「どこへ行ったのかと思ったら」
「おはよう! ホムラ!」
 胸に飛び込めばふらつきながらも受け止められる。
「おはよう、朝から元気だね。その様子だと体調は大丈夫そうだ」
「おかげさまでね! ありがとう」
「感謝されることなんてしてないよ」
 ぎゅぅと抱きしめられると、ホムラの体が軋む音が聞こえた。ホムラも体が凝ってるよね。
「お礼に仕事が落ち着いたらマッサージしてあげるね」
「へぇ? それは楽しみだな」
 額を肩に擦りつけて強く抱きしめ返す。深呼吸すれば、潮の香りとホムラの優しい匂いがした。
「よし! 今日も頑張ろう!」
「着替えに戻っても朝食を摂る時間はあるよね。何食べたい?」
「んー、肉料理が食べたい気分」
「あははっ、朝からガッツリいくね」
 ホムラと手を繋いで車へと戻る。砂浜に残る足跡はどちらも軽やかなものだった。


Posted by 冬暁/薄明