信原/しのはら
2026-03-01 18:10:44
3584文字
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ゴールデンカムイ自由研究②/表尺の話

表尺が何なのかわかってなかった話。


余談①

「それにしたって2kmは長距離すぎる」と思った人もいると思う。
不動産屋の基準では徒歩1分が80mだそうなので、2km先は2000÷80=徒歩25分の距離ということになる。お近くの徒歩25分の距離にあてはめて「2kmは無理だろ」を感じていただきたい。
なお五稜郭で尾形が目測したヴァシリとの距離は800m、徒歩10分。十分遠い。
ではこんな超長距離の目盛りは何のためについていたのか。

脅しの次のコマで有効射程の解説があり、日露戦争中に一斉射撃で1km以上先のコサック騎兵を食い止めた話が出てくる。
日清・日露戦争のころの小銃の使われ方のひとつが、このように集団で斉射して弾をばらまき歩兵の接近を食い止めることだったらしい。
弾をばらまく目的なので狙撃のように個別の目標を狙う必要はないが、狙った距離には届かなくてはならない。2kmのような超長距離の目盛りは、そういう目的で作られた・使われたものだそうだ。
例えば「敵が1kmの目印のところまで迫ったらそこで食い止める」と事前に決めておき、表尺を1kmに合わせておいて待機し、敵集団が目印のところに差し掛かったらみんなで撃つ、という使い方である。
先のコマで言われている「一斉射撃」は、おそらくこういう使われ方のことを指している。

つまり尾形が言っているのは「嘘ではないが本当でもない」というラインでハッタリに近いものなのだが、詐欺師とはいえ専門外の鈴川にそんなことが見抜けるわけもないのだった。
後のこと(五稜郭)だが800mを「俺なら当てられる」と言う人間が言うと信憑性が出るという話でもある。そういえば三八式も表尺の目盛りを盾にとってゲットしてたな(12巻114話)

ちなみに1km先をスコープなしで狙うとなると、フロントサイトで標的が隠れてしまうレベルらしい。
五稜郭でのシーンで「アイアンサイト(スコープなし)での最長の殺害記録は1,406mだが、撃ったビリー・シンはまぐれと証言している」ことが注釈的に挟んであるが、「そりゃ腕利きでもまぐれって言うわ」という気持ちになる。



余談②

狙撃関連で、ミリタリー素人なりに「あっこれはすごいわ」と思ったシーンがある。
樺太の日露国境での尾形vsヴァシリの狙撃手対決の決着だ。

このシーン、
囮に引っかかったヴァシリが最初に1発撃つ
→リロード
→アシリパさんたちの耳に3回銃の音が届いて
→さらに1発
という流れで、つまりヴァシリは棺に5発撃ちこんだあと尾形に顎を撃ち抜かれている。

ヴァシリの小銃は、ウイルタのお父さんが撃たれたとき尾形が「木の影からモシン・ナガンの銃身が少し見えた」と言っているのでモシン・ナガン。そしてモシン・ナガンは三十年式と同じく5連発の銃なので、5回撃ったら装填が必要になる。
つまり、ここで尾形はヴァシリに5発撃たせて、即座に撃ち返せない状態になったことを確信してからカウンターを撃っているのだ。

ちょっと格好良すぎるのでは?
尾形の歴戦のスナイパーぶりがよくわかるし、漫画の演出としてはヴァシリがカウンターを食らうシーンへの溜めにもなっている。
尾形も野田先生もすごくてすごいな(蒸発する語彙)



参考資料

ウェブサイト:
・照準器 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%85%A7%E6%BA%96%E5%99%A8
・照尺のお話~昔の小銃はなんであんなに照尺が長いのか~ - posfie
https://posfie.com/@C11katao/p/KOAvV8h
・ノッチサイト?ピープサイト? 銃のアイアンサイトの違いと特徴を解説 | HB-PLAZA
https://hb-plaza.com/rear-sights/#index_id8
・サイトの話の続きです | Chicago Blog
https://regimentals.jugem.jp/?eid=407#gsc.tab=0

書籍:
・大波篤司『図解 ヘビーアームズ』
http://www.shinkigensha.co.jp/book/978-4-7753-0651-2/



おわり!