「ああ、いたいた。やはりアトラックナチャの娘と戦った後でしたか。松下さんも、どうも。ご健在のようでなによりです。」
夜の美術館、人気のない廊下。
同じ顔の人間がふたり、と松下と呼ばれた人間がひとり。
ふらりとやってきた同じ顔の男は壁に手をつき、もう片方でスコップを持ちにこりと笑った。
「はあ、これはまた。」
そう言ってもう片方が自身の頭をポリポリと掻いた。
「ドッペルゲンガーというやつでしょうか。見たら死ぬ
…ということしか記憶にありませんが。この場合"見つけられた"私が死ぬことになるのでしょうか。"僕"は僕を探していたようですし」
「ご名答!やはり自分相手だと話が早くていいですね」
パン、と手を打って来訪した男は話を続ける。
「松下さんからお話は聞きましたか?シャンと呼ばれる寄生虫について」
「ええ。しかし信じがたいことですね。」
「でも分かるでしょう?松下さんが僕たちを見て驚かないのが何よりの証拠です。」
そういって仰々しく松下の方を手のひらを上にして指す。ぴくりと眉をあげた松下はスラックスのポケットに手を突っ込んだ。
「銀の鍵だろう」
「こちらもご名答!今松下さんがお持ちの"ソレ"です。」
今度はポケットの方を指さすと、松下は鍵を転がしていた手を止めた。
「元々ケイさんの所有物です。今回は奪う気はありませんよ。
…では本題に移りましょうか。」
「僕、もとい芽城ツバキ。貴方にはシャンが寄生しています。既にね?」
「だから今から僕が言う言葉を繰り返してください。ケイさんに教わった"シャンの退散"です。これをすれば貴方を殺しても周りの誰かにまた寄生することはない。」
「僕を殺すのはこの世界に芽城は2人もいらないと?」
「それもあります」
「ではなぜ"僕"は此処に?」
「洲宮マイカさんが死にました」
「
……。なるほど?」
「正確には、ケイに植え付けられた正気を吸って咲く種を、今から貴方の中にいるシャンが咲かせて殺します。」
「ワオ。それは困りましたね。警察なのに前科持ちなんてシャレにならない。」
「みなまで言いませんが後は分かりますよね?」
う〜ん。とこの世界の男は昼食のA定食かB定食どちらにしよう、といったような軽い調子で首を捻ってから、ひとつ頷く。
「分かりました。さっき痛い思いをしたばかりなのがいただけませんが、そうであるならば。では松下さん、お分かりかもしれませんが口外は避けてください。この殺人犯が何をするか分かりませんからね」
「嗚呼。お前たちが納得して決めたことならば俺がとやかく言えはしないだろう。」
これから殺される男は求めた答えを得られたようで笑う。
「それでは彼女らが話している間に終わらせましょう。ケイさんには悪いですが、僕の身体を乗っ取ったツケとでも思っていただこうかな」
常にひとりを殺している男は「かちっ」と声に出し、ライターをつけて見せた。
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