ふうすい
2026-02-18 23:14:54
15805文字
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【ゼロリナ小説】明るい夜の後

明るい夜の続き。バレンタインネタ。
今更だけど独自設定ばっかり

無断利用禁止 No reuploading /No AI training
@husui_parashi @[email protected]


 あの夜。
 大変奇妙な流れで、漆黒の魔族と何故かデート(のようなもの)をすることになり、次回の約束までさせられたあの夜。
 解散間際になって、その魔族——ゼロスが妙なことをしてきたせいで、以来あたしは落ち着かない日々を過ごすことになった。
 妙なことというのは、まあ……人間の恋人同士がするようなこと、である。
 あの時の、あたしをのぞきこむ目とか、頭を後ろから支える腕の力強さとか……意外と柔らかかった唇の感触を……ふとした瞬間に思い出してしまい、その度に心臓がおかしくなる。
 表には動揺は出していないつもりだったのだが、勘のいい旅の相棒などは何か察したらしく、生温かい視線を送ってくる始末。あたしだけがこんなに動揺しているのは理不尽である。ストレス発散のための竜破斬《ドラグ・スレイブ》連発ぐらいは許してもらいたい——ちゃんと空に向かって撃ったし。
 あの件の弊害はもう一つあり、それはゼロスが次回の約束をする際、『デート用の服装』などというものを所望してきたせいだった。
 雑貨屋などでそれなりにかわいい服を見かけるたびに、つい、眺めてしまうのである。
 旅をしている身であり、いきなり戦闘に巻き込まれる、という機会も人並みにはある立場である。見た目には一応気を遣っているものの、かわいらしい、を重視した服など今まで選んだことはない。
 ……別に、彼から指定されたのは『彼の好みに合わせた服』であって、かわいい服とは言われていない。なのでショルダーガードなどの装備を解いた普段着で行って『これがあんた好みだと思った』と言ってもいいはずなのだが、適当な態度だとなんかまた面倒くさいこと言われそうだし……センスに自信がないと思われるのも、心外である。ここは人間の女の子として規範を見せるべきであるとか、思ったり、思わなかったり。
 しかし……
 ——だぁぁぁっ、やっぱり恥ずかし過ぎる!!
 今回は出直そう、と何度目かの踵を返そうとした瞬間、
「買ってやろうか?」
 などと、いつの間にか後ろにいた旅の相棒が言うものだから、驚いてしまった。
 相棒——背の高い金髪の青年、ガウリイの顔を呆然と見上げる。
 彼は別に、あたしの懐事情を心配したわけではない……はずである。換金用の素材もそれなりに蓄えがあるし、むしろ彼よりもお金持ちと言える——別に報酬の分配で彼の取り分をちょろまかしたりはしていない。必要経費を差し引いているだけで——
 純粋に、うじうじ悩んでいるあたしの背中を押そうとしていることがわかったから、驚いたのだ。
……
 いいわよ……別に」
 自称保護者の優しさで、何となく胸がいっぱいになり、うつむいて断りの言葉を発するので精一杯だった。
 彼もそれ以上何も言わなかった。

 ——やっぱり彼には伝えておこう。
 伝えるつもりではあったのだが、今日言おう、とその時決意した。

「今度ゼロスと会うわ。二人で」
 宿屋に併設された酒場兼食堂で、旅の相棒に告げる。
 ゼロスが魔族……しかも上から数えた方が圧倒的に早いほど高位の魔族であることは、あたしたち共通の知識だ。いかにガウリイの頭が空っぽと言えども、ゼロスが魔族であり、かつて共に旅をしていたことぐらいは覚えているはずである。
 魔族——この世界に生きるもの共通の敵。負の感情を糧として、世界を滅ぼすために暗躍するもの。
 あたしとガウリイは二人とも、魔族には良くない思い出をいくつも作らされた。
 ゼロスには直接危害を加えられたことはない——むしろ協力関係だったことすらある——ものの、知り合いがらみで笑えないちょっかいをかけられたこともあり、普通なら心証を悪くして当然の相手だ。
 そんな存在と二人きりで会い、内緒で逢瀬の約束までしたのである。しかも今回は陰謀に巻き込まれたわけではなく、ほとんどプライベートのようなもの。悪感情を抱かれても仕方ない話である。
 もちろんこちらにも思惑があり、会いたいから会う、などという単純な話ではないのだが……
 ……会いたい気持ちがない、と言えば、嘘になる。
 そんなあたしに、これ以上旅に付き合えない、とガウリイが判断するなら、無理に付き合う必要もない……そう決意して告げた言葉だった。
 だが、
「道理で!」
 相槌としては若干変なことを、手をポンと叩きながら言うガウリイ。
「道理でって、あんたね」
 確かに、最近よく上の空になってた自覚はあるが……今肝心なのは、相手の男の名前であって……
「すこーし前に、なんか視線っぽいのを感じたんだけど、あれってゼロスがお前さんを見てたんだなぁ。会えてよかったな」
………………ちょっと待って?」
 勝手にうんうん頷きながら納得する彼に、待ったをかけた。
 絶対に、あたしが知るべきでないことを聞いてしまった気がする。
「すこーし前って、いつのこと?」
「うーん……前の村に着く直前だったから……何日前だ?」
 ————
 絶句した。
 ゼロスとあたしが会ったのは『前の村に宿を取ったその夜』である。それより以前に、彼はあたしに気付いていた?
 ……整理すると、こうである。
 仕事のために偶然あの村周辺に居たゼロスは、あたしの存在に気付いたが、その時点では会うつもりはなかった。精神世界面《アストラルサイド》からこっちを見ていたので、視線の気配だけがあったと考えられる。
 鉢合わせないようにしていたのだろう。いつ敵になるかも知れないという間柄であるし、彼の仕事内容を知るあたしに見つかれば、面倒なことになるのは目に見えている。
 近隣の村に気付かれないようひっそり『写本の処分』という仕事を果たしたが、そこへ、盗賊目当てであたしがひょっこりやって来て、結局気付かれることになってしまった、と。
 想像以上に、気を遣われていたのだ。
 ……これ、知られんのかなり嫌だろーなぁ……
……聞かなかったことにするわ」
 自分から問いただしておいて、あたしの出した結論はそれだった。
「それより……何か無いの? あたしが、その、ああいう奴に会うことに。
 一回くらい止められるかと思ったんだけど」
 もしあたしが知り合いに『魔族とデートするわ』とか言われたら、やめとけ、をあらゆる語彙で伝えて諭すだろう。それぐらい情が無い、人間を利用するか、餌にするかしか考えていないどうしようもない存在なのだから。
「だって、リナは好きなんだろ?」
「すっ……!?」
「で、向こうもリナを気にかけてると。誘ったのもあっちだろ?」
「っ……!!」
 一瞬で耳まで熱くなりかける。が……
「そういう……ことじゃないのよ」
 無理やり頭を切り替えて、熱を冷ます。
 あたしはもう、魔族について知り過ぎている。無邪気にあれと戯れられるような立場ではない。 
「素直になっていいと思うけどなー。自分の感覚を信じるしかなくないか?」
……あんたは何も考えてないだけでしょーが……
 でも、そう……
 そう言ってくれるのか。
……じゃあ、行ってくる」
「おう」
 ごく普通のことのように、そう背を押された。

 ゼロスに指定された日。
 あたしは宿屋の外に出た。
 待ち合わせ場所は決めていないが、向こうから見つけてくれるだろう。ひとまず広場に向けて歩きながら記憶を反芻する。
 前回は、あたしがゼロスに目をつけておけば、彼の手にかかる人命を減らせるかも知れない……という思惑で誘いを受け入れたのだが、それは彼にとっては余計なことだったらしい。デートなのに気が散っている、とかなんとか。だから今日は『仕事』をせずに行くと言っていた。——まあ……それはつまり、デートの時は他人を気にせず、ゼロスのことだけ考えていて欲しい、という意味になるのだが……。思考がそこに至ると、毎回頭がぐちゃぐちゃになりかけるので今は脇に置いておく。
 しかしながら、だ。
 上の命令に絶対服従である魔族にとって、それに逆らうのは死を意味する——確証はないが、認識は大体合っているだろうと思う。あたしのために仕事を中断する、というのは、それだけでどれほどのリスクを負わねばならないのかは想像もつかない。人間が仕事をサボるのとは訳が違うのだ。
 もしかすると、魔族に寿命はないが、それに近いものを減らしているのでは……とさえ。あたしたち人間が生きるために必要な行為……呼吸に例えると、ゼロスは今日一日、呼吸を止めると言ったのだ。あたしはその事実を受け止める必要がある。
 彼が何故デートなんぞというものにそこまで拘るのかは不明だが、だからこそ、口だけではなく、信じられる気がした。
 こうなると、あたしの目標はシンプルである。
 今日というわずかな時間は『仕事』をサボってくれる。ひとまず、今回彼に付き合う見返りとしてはそれで充分だ。
 あとは、魔族のなんか新しい情報も仕入れられたら、今後の処世で役に立つかも知れない、という思惑も当然ある。……彼が今日にどれだけ本気でも、ここは譲れない一線。あたしが人間で、彼が魔族である以上は。
 頭の整理、終わり!
 さて、改めて今日の服装について確認しよう。
 結局、彼の好みなんていう、あるのかどうかも疑わしいものに合わせるのは早々に諦め、まあ大人しめの格好なら彼と並んでも合うだろうと考えて、落ち着いた色味の、あたしなりにかわいいと思う服にした。
 珍しくスカートなぞを穿いているので、スースーしてしょうがないが、これにズボンを合わせれば、ギリギリ旅装でも使えそうな物である。一回きりで処分するのももったいないし、普段使いできるかもちゃんと考慮済みだ。
 問題は、相手の方だが——
 背後に気配が現れたのを感じて
「待たせたかしら?」
 振り向けば……おぉっ!?
「いえ、僕も今来たところですから」
 いつもの神官服ではなく、旅人と町人の中間、というかんじの服に身を包んだゼロスが居た。
 黒を基調としているのは普段と同じだが、野暮ったいかんじもなく、なかなか様になっている。いつもよりスタイルも良く見えるし……流行りに合わせるなどという感性が、こいつにあったとは……
 あたしも彼にデート用の服装を所望しており、それに応えてくれたのだろう。
 ——くそぅっ、もしいつもの法衣で来たなら、店に引っ張り回して着せ替え人形にしてやろうと思っていたものをっ……
 というのは置いといて。
 あたしたちは少しの間、お互いの姿を見つめ合っていた。
 ハッとして、沈黙を破る。
……で、どうなの? あんたが言い出したから、こういう服にしたんだけど」
「よくお似合いだと思います」
 いつもの笑顔で、嘘が本当かわからんことを言って頷く彼。
「それがリナさんなりの、僕を落とすための服、と……。そう思うと、余計に感慨深いものがありますねぇ」
「そおいうわけじゃないんだけど……!」
 前述の通り、これはあたしの好みと実用性で選んだ服である……
「僕の方はいかがですか? リナさんのご期待には添えましたかね?」
 いつもより柔らかく見える笑顔でそう聞いてきた。
「思ったより面白くはなかったけど、まあ、たまにはそういうのもいいんじゃない」
 何となく彼に視線を合わせづらくて、斜め下の地面を見ながら、当たり障りのない感想を述べる。
「面白い格好……って、どういうのを想像されてたんですか?」
「半裸に全身ボディペイント」
……
 ゼロスは数秒間遠い空を仰いだのち、あたしに目を戻した。
「僕がそれで来たらどうしてました?」
「帰ったわね」
「ご期待に添えたようで何よりです。わざわざ着替えた甲斐がありましたよ」
 あたしの言葉を綺麗にスルーしつつ、背をかがめてあたしに顔を近づけるゼロス。
 こ、この距離は……! どうしても前回のあれやこれやを思い出してしまうというか……
「照れ隠しでしょうかね? 今のしょうもないお話は」
「しょうもないとは何よ!」
 確かに我ながらしょうもない返しだったし、その前の言葉も、悔しいことに否定できないが……
 思わず言い返したものの、それで余計に彼の顔が近くなってしまった。距離を取るあたし。
「おや、どうされました?」
……。あんたが、あんな、変なことするからでしょーが」
「変なこと?」
 ゼロスは少し考えて
「キスしたことですか?」
——!!」
 ハッキリ言いおった……
 全身の血が顔に集まるあたしに、人差し指を振りつつ口を開く彼。
「あのですね、リナさん。前回僕が言ったこと覚えてます?」
「前回……!?」
「『続きは次回のお楽しみ』って言いましたよね。
 そんな調子で大丈夫ですか? 続き」
 …………
 ————!!!!!!
 すっっっかり忘れてた……!!
「あ、あ、あ、あれはちゃんと断ったわよあたしっ! あんたが聞かずに帰っちゃっただけで!」
「まあまあ、途中でリナさんの気も変わるかも知れませんから、それは置いといてですね」
「置くな!!!!」
 つと、あたしの前に片手が差し出される。
 彼の顔を見やると、それはいつになく優しく微笑んで、
「デートですから」
 と言った。

「今日はお祭りみたいですよね。ご存知でしたか、リナさん?」
 人混みの中を歩くあたしたち二人。
 彼に促されるまま手も繋いでいたりする。彼と手を繋ぐ機会は何回かあったとはいえ、人前でこんな恥ずかしいことをやらかした日には暴れて然るべきなのだが、今日に限ってはあたしたち二人の姿もあまり目立っていなかった。
 屋台の並んだ通りを埋める人々の中には、カップルが多く見受けられたからである。
「あんたは知らなかったのね。あたしは『これ』のために来たのよ」
 『これ』というのはもちろんどこからか湧いてきたカップルたちのことではない。屋台に並ぶお菓子のことである。
「このへんの地域では、今の時期はお菓子のお祭りなの。で、名店揃いのこの街に来たわけ」
 敢えてざっくりと説明する。
「二人連れの方が多いのはなんででしょう?」
 ——うっ。
 彼からの鋭い質問に言葉を詰まらせた。こいつ、本当に知らないんだろうな?
 カップルが多いのは当然理由がある。
 甘いお菓子と共に『恋心を伝える』日でもあるからだ。
 普段勇気が出せない片想い中の子が、お菓子に想いを込めて相手に渡す。場合によってはお菓子を渡すだけで告白になるという。
 この日はお菓子のイベントであると同時に、恋人たちのためのイベントでもあったのだ。
 あたしは今回、本気で美味しいお菓子食べ歩き目当てでこの街を目指していたのだが……それがこんな、魔族と二人で出かける日に被ったのは全くの計算外だった。
「それはまあ、仲のいい人にお菓子を贈る日でもあるからね」
 嘘はついていないが、ぼかした説明をする。実際、友人間で贈り合っている人も見かけた。恋愛絡みに限った風習ではないのだろう。当人の意識次第ということだ。
 ……とはいえ……
 つい、肩から下げたバッグを手で押さえた。
「そうなんですか。まあ、ちょうどいいですかね。
 リナさん、どれか買ってさしあげますよ。お菓子」
「はぇ!?」
 驚きの申し出に、変な声が出てしまう。
 ゼロスはその声に驚いたらしく、目を丸くした。
……そんな驚きます?
 僕からお誘いしたわけですし、今日は何かご馳走しようと思ってたんです。
 リナさんのお目当てがお菓子なら、それがいいかなと」
 ——いっそ普通の食事なら、何の気兼ねもなく奢らせたというのに……
 世界一要らん気を利かせる魔族である。だが奢りという響きは、断るには魅力的過ぎる。
「ちなみにさ、今日の会計は全部僕が持ちます! とか言うつもりは?」
「やですねぇ。それだとリナさんが『終了までどれだけ食べられるか』チャレンジを始めちゃうじゃないですか。僕そっちのけで。本末転倒ですよ」
 人をどれだけガメツい奴だと思ってるんだろうか。精々食べる量が二倍か三倍になるぐらいだというのに。しかしながら、納得できる理由ではある。
……まあ、大口叩いて、またお金貸すことになってもしょうもないか……
 今回は細かいのが足りないとか言わないでしょうね。ちゃんと資金あんの?」
「それは——秘密です」
 そこは秘密にしたらダメだろ。
 あたしのお金は銅貨二枚であっても重いのだ。今度貸すことになったら、うんと利子つけちゃる。
「というか、あんたがこういう人混みにいるのって、なんか不思議ねぇ」
「こういうお祭りはわりと好きですよ」
 あたしのとりとめもない言葉に、のんびりと返すゼロス。意外な情報を聞いた。
「あー、お祭りだとみんな感情昂ぶりがちだから、負の感情も沢山ありそうよね」
 深く考えず言ったあたしの発言に、彼は引きつった笑顔を向ける。
「あの……リナさんは僕のことをどういう目で見てらっしゃるんですか?
 もしかして、よほど食べるものに困ってると思われてます?」
 ……なるほど、そういう捉え方になるのか。
「悪かったわよ。じゃ食事目当てじゃないのね」
 心外だったらしい発言を、素直に訂正する。ゼロスは呆れた顔で頷いた。
「当然です。
 僕はただ、色んな感情を爆発させてる方がいるなぁ、と楽しく見物してるだけです」
——ただ単に性格悪いだけかァ……
 そんなことを言っていると、彼が何かに気づいて声を上げた。
「あれなんかどうです?」
 どれ、と目を向けると、カフェの店先になんとも美味しそうなチョコレートケーキが飾られていた。
「ホールでも、リナさんならお一人でペロリですよね。おやつに丁度いいのでは?」
……。んー……
 今日がこういう日でなければ、喜んで奢らせただろう。
 だが、恋人だの告白だのが頭を過ると、どうしてもためらいが生じてしまった。
 しまいには、我ながらどうかと思うのだが……
 『こんなところではもったいない』みたいな気持ちも、若干芽生えてしまい……
……もーちょい保留。あれは自分で買うわ」

 カフェでの食事を終え、表に出ようとしたところで、
……あっ」
「おっと」
 中に入ろうとしたゼロスと鉢合わせた。
 そう、一緒に入店したにも関わらず、あたしは中で食事を取り、彼は外で時間を潰していたのである。
 これはまあ、あたしが原因のようなものなのだが……
 テーブルについたゼロスは、お茶しか頼まず、食事中ずっと、本当にずーっとあたしを見ていた。いつもと変わらぬ、何考えてるのかわからない笑顔で。
 さすがに落ち着かないので、こう言ったのだ
「まだ時間かかるから、その辺でも見てくれば?」
 と。
 ——そこ、溜息つかない!
 我ながら空気の読めない台詞だったとは思う。仮にもデートで、これはないんじゃないかと、後になって思いはした。
 しかし、ゼロスもゼロスで
「そうですね。リナさんにお勧めするお菓子も、どれも決め手に欠けるようですし。
 ちょっとリサーチしてきますね」
 などと言って、あっさり出ていってしまったのだ。一応お茶の代金を置いて。
 これで落ち着いて、美味しい食事を味わえる……と思ったのだが、彼が出て行った後は、何だか妙に味気なく感じてしまった。
 結局、つまらない気分で手早く料理を片付けて店を出た、というわけである。
 ……居ても居なくても落ち着かないとは、自分のことながらどうなってんだか……
「お食事終わりに間に合ってよかったです。では行きましょうか」
 ゼロスは当然のようにあたしの手をとって歩き出す。機嫌は悪くなさそうである。
……なんか面白いもん見つかった?」
 微妙に後ろめたさのようなものを感じつつ、話を振った。
「秘密です」
「あっそう……
 ゼロスは楽しそうだが、あたしの気持ちは晴れない。
 狭い路地に入り、人通りが少なくなったところで、
 ——ちょっとは謝っといた方がいいかなぁ……
 そう思って口を開いた。
「ねえ、さっきは……
 その瞬間、ゼロスが急に足を止めた。
「?」
「面白いものは見つかりましたが……
 一体何を見つけたと言うのか。ニヤリ、と人の悪い笑顔を向けてくるゼロス。
「リナさんには刺激が強いかも知れませんねぇ……別の道行きます?」
 むっ。
 にわかに持ち前の負けず嫌い精神と、野次馬根性が騒ぎ出した。
「何だってのよ。見るわよ当然」
 ノリに任せて言うあたしに、ゼロスは苦笑しつつ、半歩横へ身を引いた。
 そして生垣の隙間を指す。
 彼の指した方を覗けば——むぅっ!?
 人気のない狭い路地裏では、青年と少女が密着していた。
 激しくキスをしている。
————んんっ」
 少女がなやましい声を漏らしながら、青年に縋る。
 少女に応えて、青年は彼女を壁に押しつけ逃さない。
 ……めちゃくちゃバカップル、だ。
「おぉ……
 思わず感心の声を上げるあたし。ここまでのアレには普段なかなかお目にかかれない。
 別に、見たいか見たくないかで言われたら、それほどでもないのだが……それはそれとして目が離せないというものもこの世には存在する。
 興味深く観察していると——
「ひゃっ……!?」
 小さい悲鳴が出てしまう。カップルには幸い気づかれなかったようだが……
 手を握る彼の力が、急に強くなって驚いたのだ。
 急にどうしたというのか。隣を振り向くと、彼はあたしの顔をまっすぐ見つめていた。
 路地裏の二人には目もくれず、あたしだけを。
 すぐそこでは恋人たちが絡み合っており、時折甘い声が漏れ聞こえるこの状況。
 そんな中でじっと見られると……なんというか……すごく落ち着かないというか…………
 命令されたかのように、何故か彼から目が逸らせない。
 あたしたちがお互いに目を奪われている間に、カップルはキスを終え、熱気を残してどこかへ歩み去っていった。まあ、行き先は……大体そーぞーつくけど……
「な、なかなか見応えがあったわね。じゃあ行きましょうか!」
 我に返ったあたしは、謎の批評を述べつつ歩き出そうとした。のだが……
 ゼロスが動かない。
「ちょっ……!?」
 手を繋いでいるので、彼が動かないとあたしも動けない。
 ゼロスはまだあたしを見つめていた。
………ゼロ…………?」
 見つめたまま、やっと口を開いたと思えば、こんなことを言い出した。
「ああいうのも、デートの楽しみですよね」
……へ?」
「場所空きましたよ……リナさん?」
 !!!!!!
 ちょっと待て!!!
 あまりの発言につい、先ほどの少女と青年の姿に、自分たちの姿が重なってしまう。壁に押しつけられて彼に縋るあたしと、激しく求めるゼロスが……
 んなアホな!!!!!!!!!
「な、なにふざけて……!」
 急にあたしの手を引っ張って、あの二人が使っていた位置に足を向けるゼロス。——ちょっと!?
「だ、ダメ!! ダメだってば!!」
「リナさんのダメってどっちの意味ですか?」
「どっちもあるかぁ!!!! ちょっ…………!」
 引きずられそうになって慌てた次の瞬間、あたしを引っ張る力が消えた。
「あ……
「その場の勢いも有りかな、と思ったんですけど、リナさんにはやっぱり刺激が強かったですね。今はまだ」
 足を止めて、困ったように笑うゼロス。
 ……まだ心臓がバクバクしている。顔どころか全身も熱い。繋いだ手なんか燃えそうだ。
 本気で嫌だったら、呪文の十や二十ぶっ放している。
 それどころか、彼が歩みを止めた時、少しだけ残念に思う自分もいて。
 もう、どうしようもなかった。

 何とかどうにかして気分を切り替えた後……あたしたち二人は再び屋台の並びを歩いた。
 お菓子もご飯も合わせて色々なものを食べた。
 相変わらず、ゼロスに奢ってもらいたいような品は見つからず、全部自腹である。
 最初の数回は彼も『あれはどうですか』などと提案して来たのだが、すぐに諦めたようだった。
 なんか、厚意を無下にするようで、ちょっと悪いことをしている気がしないでもないが……。もう少し、もう少しだけ待って欲しい……と思いつつ今に至る。
「そういえばさ……
 比較的人気のない区画。用意されていたベンチでクレープをかじりながら、極力何でもないことのように、ずっと気になっていたことを聞いた。
「なんでデートなの? そりゃ、最初に言い出したのはあたしだけどさぁ。
 ……あんな反応されるなんて思わなかったわよ」
 更に、別れ際にああいう……こと、までされて……。二回目まですることになってしまって。激動にもほどがある。
「そう言えば、してみたかったなぁと。リナさんとデート」
「っ……!」
 動揺して、クレープを喉に詰まらせかける。この男はまた平然とそういう……
「あんな単語、僕からは言い出せませんから。
 もし僕が一方的に、純粋にデートにお誘いしたら、リナさんは一生、僕のこと信じられなくなるでしょうし」
 ——もし、彼から唐突に『デートしましょう』などと言われたら……
 まあまず絶対信用しないだろう。こいつ本人の企みでなくても、こいつの上の存在の陰謀も疑わなくてはいけない。
 一度『デート』という単語を使われたら、その後もずっとその言葉を警戒しなくてはいけなくなる。
 あたしと何の関わりも無い状態で、完全に不意打ちで言われたからこそ、その単語を使うことができた、と。
「それは、わかった、けど……
 何で、そんなにデートしたかったんだろう。
 初歩的なことがずっと気にかかっている。
「何故したいのか、ですか」
……
「秘密、と言いたいところなんですけど……
 うーん……僕にもよくわかりません。してみたかったから、としか」
「は!?」
 納得いかないあたしに、ゼロスが楽しそうに笑いかける。
「強いて言うなら……リナさんがそうやって、悩んだり警戒してくださるから、ですかね」
「どういう意味よ……
 なんか迷惑なことを言われてることだけはわかるが。
「悩むのは、断りたくないからでしょう。僕の誘いを」
 ——
 ぽかん、と口を開けてしまった。
 その後遅れて、恥ずかしいような、きまりが悪いような、もやもやした気持ちが湧いてくる。
 いくらでも否定できそうだが、そうすると余計に立場が悪くなりそうで。
 なんかもう、叫び出したかったが、それもまた肯定にとられそうで。
 黙ってクレープを食べるしかなかった。
 すっかり大人しくなってしまったあたしは
「ここ、クリームついてますよ」
 などと、ごくごく自然な動作で、唇の端を指ですくわれて、ますます固まってしまうのだった。
 ゼロスは指についたクリームを舐めながら、またあたしを見つめて微笑んでいた。

 日が傾いて、終わりの時間が近づいてくる。
 あたしは焦りのようなものを感じていた。バッグの中の存在のせいである。
 ……今日は、どっちかって言うと、楽しかったし……。お礼としてなら、あげてもいいかも知んない……
……あのさ」
 辺りに人がいないことを確認してから、何気ない風を装って、バッグから小さい包みを取り出す。
「今日はそれなりに楽しかったし、そのお礼」
 あたしが差し出したのは、チョコレートが収まった小箱だった。
 ありがとうございます、なんて軽く返ってくるかと思いきや、なかなか返事が来ない。
 ちらりとゼロスの顔を見ると、驚いたような表情を浮かべていた。
「リナさん、これは……前もって用意してくださっていたんですか?」
「ほ、ほんとは自分で食べる用に昨日買ったのよ。
 二箱買って……いっこ余ったから」
 そう、何故か二箱買ってしまったのだ。
 恋い慕う相手に想いを伝える日——そんな情報を知ってから、どうしてもこの性悪魔族の顔がちらついてしまったなどと……
「味はいいと思う。あんたは食べ物に興味ないだろうけどね。
 ……もらってくれる?」
 まあ拒否されたらあたしが食べるだけだが。
 そう思っていたところ、彼の両手が、あたしの手ごと小箱を包む。
——ええ、よろこんで」
 何故だか、噛み締めるように、大事そうに言うので、あたしはまた顔が熱くなってしまった。
……リナさん」
 手を離さぬまま、彼が静かに言う。
「さっき一人で街をうろついていた時なんですけどね」
「うん?」
「先ほどの男女とは別に、親密な二人組を見かけまして。
 女性が相手に告白していたんですね。まさに今リナさんがなさったように、両手でお菓子を渡しながら」
 ————おい、まさか!
「『本命』ですって。
 それで納得がいきました。何故街全体がこんなに浮ついているのか。
 長生きしても、知らないことってあるもんですねぇ。もしくは最近生まれた風習なのか」
…………
 本気で逃げ出したいのだが。まさに蛇に睨まれた蛙である。握られた手は大して力も入っていなかったが、動けなかった。
「リナさん。これ、『本命』ですよね」
 とんでもない発言に、時間が止まった気がした。
 先ほどの、チョコを受け取った時の彼の返答を思い出してしまい、更に頭の中が真っ白になる。
 そんなわけで……反論する機会を完全に失ってしまったのだった。
……リナさんは、魔族について知りたいと思っていますよね。
 敵対した時有利になるような情報を、あわよくば僕から得たいと」
——
 ゼロスはあたしのことをよく理解している。急に冷や水をかけられたように体温が下がった。しかし彼の口調は優しく、責めるような気配は微塵もない。
「魔族の、と言うより、僕のことではいかがでしょう。お役に立つかはわかりませんが。
 僕も、リナさんに知って欲しいと思っていたので」
「ゼロス……あんた、何を……?」
 彼は一方の手でチョコを鞄にしまい、もう一方の手はあたしの手を握ったまま。
 そのまま彼の方に、あたしの左手を引き寄せる。
 彼自身の首の側面をあたしに触らせ、その上から彼が手を重ねた。
 首——人体における急所。
 もっとも、人の姿を真似ているだけの存在に、急所も何もないだろうが。彼のこんな場所を触ったのは初めてだ。
 伝わってくるのはゼロスの、脈のない体温と…………————

 『あり得ない光景《ヴィジョン》』 が 。

「ぁ…………!」
 人間の理解力を超えたものを、人の目では正しく見えないはずのものを、無理矢理頭の中に叩き込まれる。それがゼロスだと理解させられる。巨き過ぎる。あんなもの、欠片だって入らない。あたしが『壊れてしまう』。
「こないで……! 入ってこないでぇっ……!」
 錯乱して手を引こうとするあたしを、ゼロスは微動だにせず離さない。
「落ち着いてください。重なってはいますが、侵してはいません。
 手の感触があるでしょう。リナさんはちゃんとここにいますよ」
 そう言ってあたしを宥めていた彼が、クスリと笑う。
……おかしな人ですね。『あのお方』よりも、僕の方が怖いんですか?」
「だって、あんなに、あたしを、見てる……
「それは……見ますよ。リナさんがいるんですから」
 彼が言葉をかけ、肩を撫でてくれたおかげで、段々と落ち着いてきた。いつの間にか荒くなっていた息が、鎮まってくる。
 首を触らせたまま、あたしの様子を見守っていたゼロスは……ふと思いついたように、少し屈んで、顔を傾け——
「ちょっっと待ったっっ」
 重なろうとした唇を、すんでの所であたしの手が遮った。もうほとんど、手のひら越しにキスしているような距離だ。
「こんな所で、どさくさで何してんのよっ……!」
……もっと深く触れようかと」
「っふ……!?」
 口を手で塞がれた状態で、もごもごと言う彼。手に伝わる吐息と感触と、発言内容のせいで一気に頭に血が昇ってしまう。
「『こんな所で』人に見られたら……ってことですか。
 じゃあ人目が無い場所ならいいんですね?」
 首を更に傾げて生意気に聞いてくるゼロス。
「そっ、それは……!」
 咄嗟とはいえ余計なことを口走ってしまった。
 慌てるあたしに、彼は笑って、首を触らせたままだったあたしの手をやっと解放する。いつの間にかあの光景は消えていた。
「いやぁ、気になってたんですよね。
 リナさんは僕の正体をご存知なのに、どうして『僕を人間の男のように意識してくださるのかって』」
「え——?」
 ゼロスの言葉は、少し衝撃だった。
「姿形にイメージが引っ張られるのは、その辺の無知な人ならわかるんですけどね。リナさんは僕のことをよく知ってくださってるじゃないですか。
 もしかしたら、リナさんも僕の中身よりも、外見に重きを置いてるのかなぁ、と。
 僕としては、どっちでもよかったんですけどね? この見た目を気に入って下さるのも嬉しいので。
 でも、気になることは気になりまして」
……
 ……あたしは……
「そうですね。
 こんなに僕の本質を知った上で、キス未遂で真っ赤になっちゃうようなリナさんは——
 僕のことが、内外まとめて全体的に好き、というわけで」
 どこか晴れやかなゼロスの笑顔を、あたしは唖然と見る。何と言うか……驚いたような、呆れたような。
 中身か見た目か、なんて。
 まるで、人間同士の恋愛の話ではないか——……
「リナさん。遅くなりましたが、僕からのプレゼントです。
 当初の想定よりはだいぶ小さくなりましたが……これがいいかと思いまして。こっそり買ってました。
 ——受け取っていただけますか?」
 彼の手のひらには、あたしがあげたものに似た、告白にピッタリなサイズの、チョコの小箱があった。
 ……彼が本気なのは、もう充分わかった。からかっているわけではない。
 でも、これを受け取ったからといって、恋人にはなれない。少なくとも人間の恋人関係のようには。
 些細なボタンの掛け違いから始まった、奇跡のような時間は終わる。あたしが引き留められるのはここまでで、彼はこれからも世界を滅ぼすために働き、仕事や食事で人を殺すだろう。だから、明日にも敵同士になって殺し合うかも知れない。
 こんなものは、ただの……
 ただの、心残りの確認だ。
 でも。
 手の中のものを受け取る。
「うん……。これが、欲しかったの」
 自然と、そんな言葉が出た。
 彼にそっと抱きしめられる。
……リナさん。僕のこと、もっと知りたくありませんか?」
……、」
 囁かれた誘惑に、息を呑む。
「僕、あなたとは別の宿に部屋を取ってるんですけども……
 もっと触れ合って……
 髪を乱すように撫でられて、ゾクゾクとした感覚が体の芯に走った。
「ひとつになるぐらい、混ざり合ったら、もっとわかるかも知れませんよね……?」
 思考を放棄しそうになる。
 なにか条件を出そうかと、残りわずかな理性で考えた。
 例えば、『明日も仕事のことを忘れて』と言ったら……
 きっと彼は呑むだろう。この状況で後には引けないからだ。
 そう確信して……
 ……だからこそ、言わないことにした。
 彼の生存を揺るがすような条件を、あたしから提示してはいけない。明日敵になるかも知れないからこそ、である。
 あたしはそれを利用するしかなくなるし、ゼロスも二度とあたしを誘えなくなる。
 それは、あたしたちの関係らしくない。
 だから、今は——
……おしえて。あんたのこと」
 この言葉だけで充分だ。
 ゼロスがくすくす笑う。
「あなたらしいですね」
 彼はあたしの考えも、最終的な返答も、すっかり予想していたようだった。

 そこからの記憶が曖昧で、どうやって連れて行かれたかは覚えていないのだが。
 ゼロスに手を引かれて歩いたような気もするし、精神世界面《アストラルサイド》を介して空間を渡った気もする。

「リナさん、僕のあげたお菓子を」
 ベッドに腰掛けたあたしに、隣に座った彼がまず要求したのはそれだった。
「なんで?」
 言われた通りお菓子を取り出すものの、理由はわからない。
「味見する暇がなかったので、どうせならと」
 意味不明なことを言いながら、あたしがもらったチョコを摘まむ。そしてなんと、そのまま咥えてしまった。
 抗議する暇もなく、ゼロスがあたしの両肩を抱く。なんか、顔が近い……
「んんっ……んむ……!?」
 口移し、というやつをされた、と思った瞬間には押し倒されていた。
 彼の舌がチョコを押し込んできて、それごとあたしの舌を強く擦る。
「んンん……っ」
…………
 混乱と苦しさで身を捩るあたしと、逃がさないゼロス。シーツを乱しながら、二人で絡み合う。
 すっかりお菓子の形が無くなるまで、そうしていた。
 唇についた残滓も舌で舐め取られて。ただただ、甘い。
「っぷは……はぁ……
 これじゃ、あのバカップルより、はずかしいことしてるじゃ、ないの……
 乱された呼吸で憎まれ口を叩けば、彼は笑って
「バカップル! いいですね。甘んじて受け入れましょう。
 今日この街のバカップル・ナンバーワンは僕たちですから」
「わけわからん宣言をするな……って」
 再びチョコを咥えるゼロス。そっちはあたしがあげたやつだが!?
 影がまたあたしを覆う。
「ま、っんん……っ」
 お菓子を押し込められた口内をかき混ぜられ、くちゅくちゅ水音を立てられて、時折チュ、と吸われる。
 死ぬほど恥ずかしい。でも快感が遥かに上回っていた。
…………結局ほとんど、あたしが、食べたん、だけど……
 終わって、息を切らしながら指摘する。
「僕には食べ物の美味しさがよくわからないので、リナさんにも味見してもらえて助かりますよ。
 で、お味は?」
「わかるかっ!!」
 叫んで、ごろんと寝返って枕に顔を突っ伏した。いい加減恥ずかしさの限界である。
 あたしの限界を知る由もない魔族が、背中に覆い被さる気配がした。
 前に腕を回されて、服を脱がされていく。

 そのあとは……
 二人で何度も、何度もベッドを軋ませた。

 もう二度と訪れないかも知れない時の中で、彼を知りたくて、必死に触れ合った。

「リナさん……また、しましょうね」
 ——約束していいの? そんなこと。
「いいえ、これは、約束ではなく——
 ——うん、あたしも……

 ——共に抱く、願いごと——