Kaori
2026-02-15 17:16:09
2653文字
Public ウルトラマンアーク
 

宿す闇への信頼

シュウさんとギルアークの絆が少し深まるお話

 
先日描いたシュウさんのイラストから湧いてきたネタです。
(イラストは一番下に貼っておきます)
―――――



内ポケットに入っているキューブから熱を感じて、シュウは身構える。
その直後、どろりとした気配に囲まれた。
即座にエレマガンを取り出してあたりを見据える。すぐに攻撃してくる様子がないのを確認してから、空いている方の手で黒いキューブを取り出した。

「警告ありがとう、ギルアーク」

その声に応えるように、キューブの熱が少し上がった。

「こちらに仕掛けてきたということは、ユウマくんたちの方にも手を出していそうですね。さっさと片付けて向かわなくては」

その言葉が合図になったのか、どろりとした塊から細長いモノが伸びてきた。
くるりと地面を転がって躱し、片膝をついて身を起こす。
左手に握ったキューブが赤い光を発する。
訴えるように明滅して強くなる光が眼鏡に反射する。
その光にシュウは唇の端を引き上げた。

「ギルアーク、まだ君の出番ではありません」

掲げた左腕に右腕を乗せて、エレマガンの照準を固定する。

「私ができることは、私がします」

いまだ姿が曖昧な敵に向けて、シュウは躊躇いなく引き金を引いた。


◇◇◇


バシュッ、バシュッ、という音が聞こえて、ユウマは自分を囲む青い光の向こうに耳を澄ませた。

「あの音は……
『向こうも始まったようだ』
「シュウさん、また無茶してるんじゃないかな」
『シュウには彼が付いているから大丈夫だろう』
「そうだね」

身の内に響いてくるアークの声に頷いて、ユウマは自分の目の前に意識を戻す。
暗い色合いのどろりとした気配があたり一面を覆っている。その真ん中に一人で立つユウマの周囲には、彼を守る青い光が立方体を作っていた。
どろりとした気配から細長いものが伸びて攻撃を仕掛けてくるが、その青い光に触れると弾かれたように触手を引き戻す。

「大丈夫だとは思うけど、やっぱり早くシュウさんたちと合流しないと」

この青いバリアの内側にいれば攻撃を受けることはないが、ただこの中に篭っているだけでは何も事態は変わらない。
ユウマは青いキューブを取り出して見つめる。
キューブの一面がそれに応えるように青く輝く。

「行こう、アーク!」
『ああ、ユウマ!』

キューブを掲げて、ボタンを押し込む。
周囲の重い気配を打ち払うように、青い光が強く広がった。


◇◇◇


「あー、無事に終わって良かった……って、あれ? シュウさん、どうしたんですか?」

ユウマが分所に入ると、先に戻っていたシュウが真剣な表情で座り込んでいる。
その手元には、リンが使っている小さめのスタンドミラーが置かれていた。

「お疲れ様でした、ユウマくん……その、実は、ギルアークが先ほどからずっと背中を向けていまして」
「え?」

ユウマがシュウの背後に回って鏡を覗き込むと、確かに鏡の中では黒銀の背中がこちらを向いていた。

「ギルアーク、何かあったのですか? 話してくれなくてはわかりません」

何度も声を掛けているのだろう。困惑したシュウの声音にユウマは首を傾げる。
そしてそっと自分の背後に視線を向けた。

「アーク」

それだけで察してくれたのか、鏡の中に赤銀の姿が映り、しばらくしてアークの気配はユウマの背後に戻ってきた。

「どうだった?」
『それが……シュウ。ギルアークは自分がシュウの役に立っていないことを気に掛けているようだ』

アークの言葉に、シュウは眼鏡の奥の瞳を大きく見開いた。

「役に立っていないなんて、そんな……! なぜそんなことを思ったのですか?」
「えー、シュウさん、黒いアークに何言ったんですか?」

ユウマに問われて、シュウは一人で行動していたときのことを説明する。
聞きながらユウマは腕を組んで眉をしかめた。

「シュウさん、それ、僕らのときと同じですよ。シュウさんが黒いアークを大切に想う気持ちはわかりますけど」

そう言われてシュウははっと顔を上げる。

…………

鏡に向かって言葉を紡ごうとして、けれどすぐには声が出てこない。
何度か開きかけた唇を固く結んで、シュウは立ち上がった。
無言でコーヒーメーカーに向かう。いつものビンに入っている豆ではなく、引き出しの奥から取り出した豆を使ってコーヒーを淹れる。
香り立つカップを持って戻ってきたシュウは、そのカップをそっと鏡の前に置いた。

「言葉が足りなくてすみません。先ほどの言葉は、けっして君の力が必要ないという意味ではありませんでした。君の力が強力だからこそ、それに頼り切ってはいけないと私自身を律するつもりの言葉だったんです」

鏡の奥、黒銀の背中に向かってシュウは真っ直ぐに告げる。

「私は君をとても頼りにしています」

僅かに黒い背中が揺れたように見えたが、それ以上の動きはない。
シュウは眉を下げたまま静かに微笑んだ。

「コーヒー、冷めないうちにどうぞ」

それだけ伝えて、くるりと向きを変える。そのまま歩き去ろうとしたとき。

……っ!」

鏡からするりと抜け出た黒い影が、背後からシュウを抱き締めてその場に留めた。
シュウの前に回された黒い腕は縋るように微かに震えている。

…………俺は、シュウを守りたい……シュウと共に、皆も守りたい……

消えそうに掠れた小さな声だったが、シュウの耳にはしっかり届いた。
シュウの目が柔らかく細まる。黒い腕に優しく手を掛けて、安心させるように力を込める。

「ええ。君は私と共にある存在です。これからも一緒に、立ち向かっていきましょう」

穏やかなその声に、シュウを抱き締める腕の力がより強くなった。




それからしばらくの間、シュウの背後には黒銀の姿がぴったりと張り付いて腕を回し続けていたし、それをにこやかに見守るユウマの背後にも、感化された赤銀の姿が寄り添っていたのだった。









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ユウマがちらりと口にした「僕らのとき」というのは、以前に書いたユウマとシュウさんの喧嘩話です。
『あなたのためにしたいこと』 https://privatter.me/page/68ce9ce983550


この話の元にしたイラストはこちら。