John
2023-08-22 00:59:45
3154文字
Public 武新
 

海ピクとは?

武新。ワンドロに投稿したものです。
現パロ。
武市と新兵衛が社会人です。

田中 たなか くん、海ピクとは何だ?」
武市 たけち主任 しゅにん、私もそれは存じ上げませんが……一体何がどうなってその単語が出てきたのですか」
「その、社員の鈴鹿 すずか くん清原 きよはら諾子 なぎこ くんがこの前二人で行ってきたと言っていてな」
「はあ、清原さんの娘さん、諾子さんのほうですか。あの女性二人で」

ここは電子機器の部品製造工場の一角、大手メーカ、カルデア製作所に務める武市瑞山は三十五歳で主任の地位にいた。
そろそろ管理職に昇進しないかと声が掛かりそうな、そんな働きぶりの男だ。
対して田中君と言われた大柄で筋骨隆々の男は田中新兵衛、年齢は二十八歳、他社から出向 しゅっこうしてきた社員なのだが。

この二人、実は恋人同士である。

新兵衛は工場内のせまい事務所の壁になっている制御盤 せいぎょばんが、大きなロッカーに似た灰色の塗装を無機質に さらしている様子を にらみながら。
思い当たる事を記憶から探し出し、 くちびるを再び開く。
二人きりなので、武市が剣道の有段者であることからあだ名のようになっている『先生』という呼びかけを使って。

「聞いた事があるのは、もう高校を卒業して■年経っているが、架空の高校のセーラ服を来て原宿を二人でふらふらするのが趣味だ。とかでしょうか」
「え」
……すみません先生、今のは聞かなかった事に。調べてみます、お待ちを」

新兵衛は自分がバラすべきではない事を話題にしてしまったと気づいて即座に口止めする。
海というからセーラー服が関係あるかと思ったのだ。

作業服のポケットからスマートフォンを取り出し、新兵衛は検索欄に『海ピク』と入力する。
新兵衛の様子を見ながら、武市は言いにくそうに述べた。

「その、イ◯スタグラムに写真を上げたと言っていて。恥ずかしい事に、良くわからないのに、私は適当に分かるふりをして相槌 あいづちを打ってしまい。今度やってみると答えてしまってな」

武市は腕を組んで、オフィスチェアの背もたれを きしませ、天井を仰ぐ。

「あ、判りました、先生。海でピクニックですね」
「海で、ピクニック」
「では……行ってみますか。丁度平日に二人休みが被ったものの、予定をどうするか決めあぐねていた休暇がありますよね。夏真っ盛り、海へ行きましょう」

新兵衛は、海でピクニックという単語に無表情で目を丸くするという器用な顔面を構築した武市に。
白い歯をみせて闊達 かったつ……それこそ海がよく似合いそうな笑顔を浮かべた。