あいづき
2026-01-24 14:56:54
Public 創作
 

2026年 お年玉SS

冬の間はお年玉(多分)




岩戸が開く


 いつもの様に門を潜り、もう慣れてしまったNoah's arkの拠点へと辿り着く。最近のルーティンとして、夜勤前の休日をここで過ごして時間の調整をしている。勿論Noah's arkでの仕事も行いながら、だ。
 けれど少しだけ、今日は皆ゆっくり時間を過ごしている気がする。勝手な憶測かもしれないとすれ違った職員に話を聞いても、憶測に対する肯定の言葉が返ってくるから、何故だろうと思えば流石に新年を迎えた直後だかららしい。それもそうか、と、納得する。日本人にとって新年は大きな節目となる大切な日だが、世界基準でもそうなのかと。西洋はクリスマスが本番かと思っていたから、少しだけ認識を改めないといけないかもしれない。でも何処かで、新年を過ぎてもクリスマスツリーが飾ってある話を聞いた気がするけれど、定かではない。文化が異なれば基準も異なるのは、この組織に入り特に実感した部分でもあるから、一人静かに納得をするだけだ。時期的に、火夏くんは今頃旧正月である春節に向けて忙しいのかもしれない。
 その中で、今ソファに座って何かを飲んでいる人は、私を含む八人を集めたからこそ、特別で独特な雰囲気をこちら側に与えている気がする。気がするだけかもしれないけれど。
 少しだけ近付けば、こちらに気付いたのかふと目を細めて変わらぬ声で名を呼ぶ。
「やあ、弓芽くん」
「こんにちは、ディアさん。まだここにはクリスマスの名残があるんですね」
「ああ、日本人からしたらやはり珍しいのかな?」
「はい。百太郎くんや開くんは分かりませんが、私からしたらとても珍しいですね」
 そもそもクリスマスすらよく分かっていなかったのだから。それを十二月の頭にぽろりとフローレンスさんやイレールくんとしていた茶会の席で伝えたら話が伝播して、いつの間にか皆でパーティをする流れになったのがつい先日のこと。
「ところで……話は変わりますがまた睡眠を犠牲にしましたね?」
「うーん、バレちゃった」
 指を口元に当てて悪びれない笑顔でこちらを見る姿はどこか幼いといつも思うけれど、きっとその思考になるように誘導されてるとも思う。
「もう、笑顔で誤魔化さないでくださいな」
「誤魔化してはいないんだけどね」
 少しだけ僕に対する話し方がフローレンスくんに似てきたね? なんて重ねて言われてしまえば、そうかもしれないと納得してしまう。まあ、元々そこまであれやこれやと言うつもりは無いから話を横に置かれても構わないのだけれど。
「先日の報告ですけれど」
「ああ、どれかな? ミスタくんと巻き込まれたやつか、ザムザくんと経験をしたやつか」
……別の話です。もう一つ、私が一人で経験をしたお話」
 すっと、先ほどとは異なる瞳の細め方をして、座る位置を少しだけずらし、座る様に促す。それを受けて、失礼しますと言って隣に座れば、黙って続きを催促される。その視線を受けて、肩に居たころんちゃんが私の膝にくるから。ゆっくりとその身体を撫でて息を吐く。
「少しだけ、個人的なお話をさせてください」
 土岐家の事、これからの事。
 どこから話せばいいかと思えど、ゆっくりと口を開く。