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kibaco
2026-01-19 21:13:41
6272文字
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冬直
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エロコメ冬直3
なんとなく続いてしまったエロコメ冬直の3。紀伊討伐に行く頃の直冬。書き途中。
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2
なんか養父上にそっくりな人がいる。
直冬の反乱鎮圧軍は京からの人員と物資を迎え、荷下ろしに励んでいる。養父であり副将軍である直義の差配だった。
足軽の装備に笠を被って顔が見えにくいが、どうみても養父上な気がする。
直冬は一人の男に注目していた。笠から垣間見える顔が好きな顔すぎる。それに胴丸でわかりにくいがあの腰つき。どう見ても養父上な気がする。
しばらく観察してみると、その者が荷運びをしようとすると、近くに居る兵に取り上げられてしまい仕事をさせてもらえてない。しかし諦めず他の荷を手に取りよちよち運んでいると、今度は大柄な雑兵に荷ごと抱えられて運ばれていった。なんなのだ。あの者は。
直冬が荷車に近づくと、彼に気付いた兵たちは手を止め、頭を下げた。笠の足軽も頭を下げる。
「皆のもの、はるばるご苦労。みやこよりの増援、ありがたいことこの上ない。お力添えに感謝する!」
直冬は朗々と兵たちに礼を述べた。
「手を止めてすまない。さあ、さっさと済ませてしまおう」
総大将ながら直冬は自ら荷下ろしに加わり、雑兵たちと共に荷を担いだ。届いた物資と人で兵を再編成し、明日には残党狩りへ出る。戦闘も移動もなくて体力が余っていた。若く輝くような大将の明るさに、周囲の者たちも笑顔になる。しぜん作業場が賑やかに活気付いたものとなった。その賑いの輪にかまけて直冬は目的の男にさりげなく近づいた。
「そこのあなた」
直冬が声をかけると、笠の男は、はい。と動じずに返してきた。
う~ん、なんと落ち着いて涼やかな声だろう。どう考えても養父上の美声。
「名はなんというのですか」
直冬の唐突な問いに動じた様子もなく、荷を抱えてこちらに向き直る。矢の束を二つ、抱くようにして抱えていた。篭手に包まれた手は男の個性を隠している。他の兵は矢束を三つ四つと肩に抱えあげている。
「高国ともうします」
男はよどみなく名乗った。明朗だがしずかな、目立たぬよう印象付けぬよう抑えた調子が、かえって気を引く。
「高国殿」
直冬は己が口にする機会はないと思われた名で男に呼びかけた。なんとも言えない気恥ずかしさと興奮で、思わず舌がもたつく。
「笠を取ってお顔を見せてくれませんか」
「両の手がふさがっております。ご勘弁を」
さらりと躱してくる弁舌に、もはや確信しかなかったがあくまでしらばっくれるつもりらしい。一体何を考えているのだろう。この養父は。
直冬は素早く近付き、右の手で笠の男から矢束をうばい、左の手で笠をうばった。
直冬の唐突で機敏な動きについてゆけず、男はぽかんと直冬を見つめる。透き通るような碧がかった目。そのあどけないまでの表情に直冬は、この人は本当に養父直義様ではなく、おれがお会いしたことのない、高国殿なのかもしれないと妙な心地に襲われた。烏帽子も被らず、いつものきよい直垂も纏っていない身軽な足軽姿の直義は、知らない男のようだった。しかも身バレを防ぐためか、あの可愛らしいくちひげを剃ってしまっている。いやに若々しく見えた。直冬は思わずクスリと笑った。洒落た重能殿を真似た、あのささやかな口ひげをたくわえるのにあんなに四苦八苦していたのに、剃ってしまったのか。
「失礼。高国殿。お顔が見たくて乱暴をしてしまいました」
養父の可愛らしい無茶に、直冬は悪戯ごころが湧いて素知らぬ振りをしてそんなふうに言った。
「気が済みましたか」
直義は直冬がしらばっくれているのか本当に気が付いていないのか計りかねているらしく、ツンとそんな風に応えた。
可愛い。
直義にそんな風に接された事がない直冬はへんな興奮を得た。養父上と、親子ではない会話が出来る不思議な機会に、直冬も養父であり上司である直義には見せない己を晒けてしまった。
「まったく済みません。高国殿はなんと清らかなお顔をなさっているのでしょう。いくらでも見ていたい」
「実は先ほどからずっと見ておりました。背が高くお姿が大変うつくしかった」
「白い肌が日に焼けてしまいますね。しかしお顔が見えないのはつまらない。こまったなあ」
「高国殿も何か喋ってくださいませんか。おればかり話している。もっと貴方のお声を聞きたい」
「重い荷はおれが運びますから、貴方はこちらの軽いものを。あまりこのような作業をなさったことがないのでしょう?なのに懸命に荷下ろしに勤めておられて。へっぴり腰があまりに可愛くついお声をかけてしまいました」
「そういえば先ほど、大男に荷ごと運ばれておりましたね。あの、俺もアレやっていいですか」
「高国殿、高国殿。荷の整理が終わったら俺の部屋で休みませんか。貴方ともっと仲良くなりたいのです」
全力で口説きにいってしまった。下心も丸出しである。
その間に直義、いや高国が返したのは、
「笠をお返し下さい」
「からかっておいでか」
「
……
ッ、へっぴり腰でわるかったな」
である。直冬はもう、直義のつんつんした態度にめろめろだった。
「高国殿、高国殿〜。怒らないでください。からかってなどおりません!わかりませんか?おれは貴方に夢中なのです
…
」
この場では総大将である直冬がいっとう偉い。立場にかまけて直冬は直義の肩を抱いて引き寄せ、顔を寄せて熱く囁いた。遠征先のひと時の恋。相手が娘御であれば、若大将の艶事に周りの者も沸いただろう。だがその場の荷運びの者たちの間にあるのはある種の緊張感だった。知っているのだ。高国の正体を。そりゃあ緊張するだろう。直冬が熱烈に口説いているのは養父であり天下最愛の弟君、副将軍なのだから。それ以前に、年上の男にハアハアしている若大将に引いてもいる。それも自身の父君である男だ。ヤバいことこの上ない。普段は周囲の様子にさとい直冬も、この時ばかりは目の前の養父に目が眩み人目も憚らず露骨にフウフウしていた。直冬の側近らも、実父に似てつねにどこか泰然としている若大将が、どんなにモテてもサラリと躱している直冬が、このように目の色を変えてなりふり構わずグイグイ行くのを見るのは初めてで唖然とし、事の成り行きを見守った。
つんと顔を逸らしていた直義だが、直冬の熱烈な口説き文句にきょとんと目を丸くしてそちらを見た。顔を寄せていた直冬のくちびるが直義の頬に掠めてしまう。
「
…
兄上と言いようがそっくりだ」
ぱちぱちと目を瞬かせて直義が言う。甘ったるく繰り返し名を呼び、臆面もなく甘いことばを囁くのがそっくりだった。
実父に喩えられて、むっとした直冬はうっかり直義の頬に触れてしまった唇をさらに押し付け、ちゅっと吸った。ふだんであれば敬愛する養父にこんな無礼で大胆で不埒な事を出来るはずもなかったが、この何ともふしぎでときめく状況に浮かされ、つい我慢できずチャラい事をしてしまう。
「兄上みたいなことする
…
」
直義は動じることなくおとなしく口付けを受ける。こうしてくちびるで愛でられるのに慣れっこなのだ。
直冬は直義のそういう傲慢なまでにいとけないところに触れると身が震えるような興奮に駆られてしまう。
「高国殿の兄上君は、貴方にこんな軽薄なことをなさるのですか」
己も不埒軽薄きわまりない行いを棚に上げて、直冬はつい大人げなく責める口調で問うた。
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