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roku
2026-01-16 22:41:25
1590文字
Public
SD夢💤
松本夢
・Webオンリーイベント青春ダブルクラッチのネップリ企画にnana名義で出した作品
・テーマ春夏→後半加筆しました
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🎆 *2025年4月 テーマ 春夏* 🎆
「花火大会に行かないか?」
それは初めてできた彼氏からのお誘いだった。だから、花火は好きじゃないと言えなかった。
人混み、火薬のにおい、大きな音、一瞬にして消えゆく儚さ。そのすべてが苦手だった。
なのに『楽しみにしてるね』なんて、嫌われたくなくてついた嘘。
はぐれないようにと繋いだ手は、ほんの少し汗ばんでいて、稔の緊張が伝わってきた。右斜め上に視線を向ければ私を見下げた稔と目が合う。稔は軽く口もとを押さえて申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。
「実はオレ、花火に興味ねぇんだ」と。
私は合わせた視線をそのままに、瞬きを数回繰り返して『私もなの』と告げる。お互いの本音に顔を見合わせ笑いがこぼれた。
そして私たちは踵を返してもと来た道を戻る。
行き先はもちろん
―――
。
◇
「なぁ」
『ん?』
「何で言ってくれなかったんだ?」
何のことかなんて聞かなくてもわかる。私はこれから花火があがる方向を見つめ『
……
嫌われたくなかったから』と小さく漏らす。
繋がれた手にぎゅっと力が込められる。視線を稔へと移せば「そんなことで嫌いにならねぇよ」と寂しそうに眉を下げた。
『稔だって言ってくれなかったじゃん』
「それはっ
…
!」
オレだって嫌われたくなかったし、女子は花火が好きだって聞いたから
…
と理由を述べ、さらに何か言いかけた口元は言葉を紡がぬままキュッと結ばれた。
『どうしたの?』
「
……
いや、」
『全部言ってほしい』
「
…
その、だな
…
もしかすると
…
浴衣姿が見れるかもしれないと思って
…
」
『えっ?』
「それなら花火も悪くねぇかもって
……
」
『そう、だったんだ
…
』
稔は額に手をあて「下心ありすぎて最低だな」と大きく息を吐いた。解けそうになる稔の手を今度は私がぎゅっと握る。
私は花火が苦手すぎてそんなところにまで気が回らなかった。
『ごめんね。そこまで気が回らなかった』
素直に伝えれば悪いのはオレだからと焦る稔。
『そしたらさ、来年は
…
』
そこまで言って慌てて口を噤んだ。だって来年も一緒にいられるとは限らない。私の心が変わらなくても稔はカッコいいし優しいくてとてもモテるから。だからそんな未来のことを軽く口にして彼を縛りつけるのは違う。
「ん?」
『
……
なんでもない』
「来年は浴衣姿見せてくれるのか?」
私が口にできなかった言葉を当たり前のように言ってのけた稔。人混みが苦手な私に、「なら人の少ない花火スポット探さねぇとな」なんて笑うから、心がふわっと温かくなる。
『ありがと。稔のためにとびっきり綺麗に着飾るね』
「
………
おう
…
でもそれだとオレが色々もたねぇかも
…
」
下心を隠さない稔を愛おしく感じるのは、私も同じことを考えからかもしれない。
『ならその時は今日みたいに途中で帰っちゃおうよ』
「そうだな。だが帰せなくなるけどいいのか?」
それは今日か、はたまた来年のことか。どちらにしてもそれでいい。『いいよ』と頷けば、心なしかアパートへ向かう足取りが速くなった。
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