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保科
2026-01-16 20:02:22
3357文字
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その他
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こんにちは、ひさしぶり
ぐだ♀マシュ アフタータイム軸 『ファーストサーヴァントは譲れない』を出版してくれ〜〜〜〜〜〜〜〜
1/17 追記 ちょっとだけ所長
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2
それから、とタブレットを操作して状況を確認していたマシュが不意に顔を上げ、私を見る。
「先輩?どうかされましたか」
「あ、
……
あー
……
、いや」
しまった、向かいに腰掛ける彼女のことを、不審がられる程度には眺め過ぎていた。気まずさに目を逸らす私に、マシュは瞬きの後タブレットを机に置くと、先輩、と再度呼びかける。
「何か疑問点などありましたら、どうぞご確認下さい。いえ、勿論現在の状況が不可解極まりないことは承知ですが、わたしに答えられる範囲でしたら何なりと」
「いや、たいしたことじゃないんだけど
……
」
「いえ!どうぞ遠慮せず、なんなりと!」
胸元に手を当てる鼻を鳴らすマシュの意気込みに、気まずくて口を濁すものの、その真摯な眼差しに早々にギブアップした。もとより、マシュの前でだんまりを貫くような口の持ち合わせは今も昔もない。
「その。だからー
……
マシュも今は、私と同じで、大学生だった
……
んだよね」
「え?
――
は、はい。先に述べました通り、ロンドンの大学に、研究生として在学していました。魔術要素を多分に含みますので、一般の学校、というものとは仔細が異なるとは思いますが」
「学校、楽しい?」
もっと、現状
――
このカルデアや、今起きてるとんでもない出来事についての質問をすると思ったのだろう。どこか困惑しつつも、そうですね、と、マシュの眼差しがカルデアではない、彼女の記憶の内の日常に潜る。その所作が、酷く新鮮に感じた。
「それは勿論。今、カルデアで暮らしていたわたしとしての記憶があるからこそ、比較できますが。
非常に充実している、と断言できます」
「そっか。友達も、できたりしたの」
「はい。その、広い交友関係を持たれている先輩と比べれば、あまり多くはないかもしれませんが
……
パブリックスクールからの友人と、同じ学部の友人が。休日はよく、一緒に出かけたりなどもしています」
そっかあ。しみじみと相槌を繰り返す。決別の後に手に入れた世界で、マシュは私がかねてより願っていた日常を謳歌していて、本当に喜ばしい。なのに。
「
……
先輩?あの、何か懸念など?」
「え?」
「その、わたしが話す度、表情が暗くなるので
……
」
戸惑った様子のマシュが、私の顔を不安げに覗き込む。そのまっすぐな眼差しは、ひどく居心地が悪い。
「何でも
――
」
「なくはない、ですよね。
あまり、わたしの先輩に対する観察眼を侮らないでくれますか」
「
…………
」
随分グイグイくるね、とは、先に踏み込んだ質問をした身の上としては茶化せなかった。
いや、だから、ね。はい。別に気にしなくても。いいえ、些細な変化であろうと気にかけさせていただきます。もにょもにょ口ごもる私に、マシュは根気よく向き合い続ける。
「先輩」
彼女の眼鏡に映り込む自分の顔の、何と情けないことか。何度目かも分からない呼びかけに、ため息を一つ。ええいままよ、と口を開く。
「
……
マシュが。
普通の学生生活送ってて、すっごい、嬉しいんだけど。それは、本当に本当なんだけど、さ」
「
……
?はい」
多分、目を逸らして口を尖らせる私は
――
不貞腐れたように見えるだろう。今度こそ、もう二度と会えないかもしれないという覚悟の中の寂寥が、思いがけない再会のなかで入り混じって、随分、歪んでしまっているような気もした。確かめようもないけれど。
「
……
あなたの言う友人の輪のなかにも、昨日までのあなたの学生としての暮らしのなかにも、べつに、私は、居ないんだなぁ〜って、思って
……
。
……
ちょっと、嫉妬した。ちょっとだけ」
「
…………
」
しょうもない、どうにもならないないものねだりを自覚して、情けなさに思わず顔が熱くなる。もしかしたら、かつて私生活の話している私に、同じ事を思っていたのかも
――
なんて考えながら。黙り込んだマシュが、どんな顔をしているのかも確かめられず頬杖をついていれば。
「
――
せ、先輩」
テーブルに乗せていた手のひらを、不意に両手で取られた。つられるように視線を戻せば、身を乗り出したマシュが、赤らんだ顔の口元を震わせながら、口を開く。
「わたし
――
わたしは!先輩が一番ですので」
「
……
うん、知ってる
……
」
真っ直ぐな宣告に頬がますます熱くなる。こうなったら自棄だ。普段なら謙遜で済ます所を思い上がった相槌に、はい!とマシュの強い肯定が重なる。
「忘れていた分際で何を、と思われるかもしれませんが!これは本当です、本当に!」
「うん、私も忘れてたから気にしないで
……
」
「あ
……
ええと、その、先輩のお側にいるためには、籍!籍を日本に移せば、この問題は解決しますか!?」
「え?留学とかじゃなくて?」
「そ、そうですね。こういった場合は留学、まず手続きは
……
えっと、そうではなく。マスター、マスターリツカ、あの、わたしはどうすれば、あなたの心にもっと寄り添えるでしょう。
そう言っていただけるのが、本当に嬉しくて、あの」
照れまくる私の手を握ったまま、わたわたと早口にまくし立てたマシュは、そのまま私の手に額を押しつけるようにして、小さく呻く。
「
……
驚くほど、ドキドキが止まりません。どうしよう
……
」
「
………
!」
そんな、彼女らしくもない、びっくりするくらい浮かれた声は、流石に驚く。捨鉢の態度を整えて、改めて向き直る。
「
……
会いたかった、マシュ、ずっと。知らないあなたと、もっと早く出会いたかったのに」
「わたしもです、先輩。
わたしも、貴女と一緒に過ごしたかった。貴女と会いたかった
――
だから。これまできっと、貴女の影を探していたような日々だったから。それが今、報われたと、そう思うのです」
上げられた顔の、眩しいくらいの華やかな笑顔に、ああ、と染み入るように思う。彼女はもう、出会った頃と違う、
――
いろんな経験を経て、ずっとずっと、美しい女性に成長していること。
羨望と、憧憬と、誇らしさと。私も、応えるようにはにかんだ。これが夢なら夢でいい。これが幻ならそうだっていい。奇想天外なトラブルのなかで、また、君と手をつなぐことができるならば。
「うん。
……
ねえ、マシュ。
私の、たったひとりのファーストサーヴァント。
短い間かもだけど、また、カルデアの
――
私の特別になってくれる?
特別に、してくれる?」
「はい、マスター。
……
勿論、喜んで!」
そんな貴女に会えて嬉しいと、握り返すように彼女の手を取って、私達は笑い合う。
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