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roku
2026-01-16 15:49:58
1204文字
Public
松イチワンドロライ
第44回『喫茶店』
『カフェ』の続き
https://privatter.me/page/6969935d04d40
『してよ。勘違い』
あの日から一之倉と松本の関係は友人から恋人へと形を変えた。
一之倉が目覚めた時、すでに太陽は空高く昇っていた。休みの日に早起きしてモーニングを食べに外へ出ていた頃が懐かしい。隣ですやすやとまだ寝息を立てている造詣が深い恋人の顔を見ながらあることを思い出す。
『一之倉の行きつけのカフェに連れてってほしい』
松本が目を覚ましたらランチに誘おうと、散らばる服をかき集めた。
◇
「カフェじゃなくてごめんね」
「いや。雰囲気がすげぇ好きだ」
一之倉を真っ直ぐ捉え告げられた〝好きだ〟に思わずドキッとしてしまった。好きなのは目の前の喫茶店の話であるのに。
一之倉が松本を連れてきたのは昭和感漂うレトロで落ち着いた雰囲気の純喫茶。店の前にある少し色あせたメニューが何とも言えない味を出していた。
店に入れば「いらっしゃいませ」とこちらに顔を向けた白髪の店主が「あ、聡くん」と一之倉の名を呼びほほ笑んだ。
「こんにちは」
挨拶を交わす一之倉の後ろから松本も続いて挨拶する。普段はカウンターに座る一之倉だが今日は松本と一緒なので窓側のテーブル席を選んだ。
「
友達
・・
が一緒なのは珍しいね」と水を運んできた店主に緩む頬を引き締め「そうですね」と返せば心なしか松本の表情が硬くなった気がした。
「どうかした?」
「
……
なのか?」
「ん?」
「オレたちは、友達なのか?」
きゅっと結んだ唇を前に出し、ぶすくれている。
一之倉は丸くした目をぱちぱちさせた。
「あのさ、違うけど、わざわざ言うことじゃないでしょ」
松本は一之倉の答えを自分たちの関係が〝普通〟ではないからだと受け取りさらに眉間の皺を深くした。だけど一之倉は違った。そんなことを言わなくても店主は気づいているのだ。一之倉にとって松本がどれだけ特別なのかということに。
「とりあえず注文しよ。おすすめはナポリタンかオムライス。飲み物はもちろんコーヒーも美味しいけど食事するならメロンソーダ一択」
どうする?と軽く上目遣いで覗き込めば、険しい表情を浮かべてたまま「半分ずつにしねぇか?」と持ちかけてきたので思わず笑ってしまった。
「ふ、ふはっ!」
「な、なんだよ!?」
「いいよ。半分ずつにしよ。メロンソーダはひとりずつね」
「おう」
一之倉が勧めてくれた料理はどちらも昔ながらの懐かしい味がした。先ほどまで〝友達〟と言われて機嫌を損ねていたはずの松本に笑顔が戻った。
「ねぇ松本」
「あ?」
「この店ね、オレが大学生の頃から通ってるんだ。いつもひとりだったオレにマスターが、いい人いないのかって聞くからさ、
そういう人
・・・・・
ができたらちゃんと連れて来るって約束してたんだ」
「
……
えっ?」
「誰かを連れてきたのは松本が初めてだよ。わかった?」
もう一度覗き込むように見れば、口元を手で押さえた松本が耳まで真っ赤に染めていた。
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