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冬灯夜
2025-12-29 22:49:46
2067文字
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その他
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距離の近い原田さん
FGO 原+ぐだ♀短文
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原田さんは距離が近い。
ような気がする。
たとえば今、隣を歩いていて時折、肩や腕が触れそうになったり。
「あ、そこ危ないっすよ」
「おっと」
補修中の通路の足元に注意を促しながら、自然と背に手を回して誘導してくれたり。
決して不自然ではないというか、むしろ自然体でやってるようなので、こちらもそのまま受け止めているのだけど。うん、やっぱり近い気はするな。
「マスター!」
なんてことを考えてたせいか、わざわざ注意してくれたにも関わらず足元が疎かになり
――
気付いた時には原田さんの腕の中だった。
「えっ」
腕の中である。目の前にはがっしりとした胸板。
「えっ?」
「大丈夫っすか? お怪我は?」
「ないです
……
」
そりゃあよかった、と笑って腕を緩める原田さんに、一瞬止まっていた思考が戻ってきた。
「近いです!!」
「え?」
一歩引いて(決して飛び退ってはいない)叫ぶと、原田さんは首を傾げた。
「いえあの、支えてくれてありがとうございます。でもちょっと
……
近いかなって
……
」
原田さんはじっとこちらを見つめている。気を悪くさせてしまっただろうか、助けてもらったというのに。
確かに「着地任せた!」とか緊急時の抱きかかえダッシュとかは普通にしてるし照れもないんだけど、ほら、正面からのこういうのや手を繋いだりはちょっと話が違くて!
色々と麻痺しそうな日々ではある。けど、こういう普通の感覚を忘れずにいたいと密かに思っていたりする。それは私が戻りたい日常を大事にすることに繋がっている気がするから。
まあ自室に入り込むサーヴァント達もいるけど、それはいつかの日常にはない出来事だから
――
いや大分麻痺してるな。してるね。うん。
と、そんな思考を走らせてる間、原田さんはじっとこちらを見つめていて。
う。申し訳ない。
「
……
大将の時代って、これが普通じゃないんすか?」
と、至極真面目な顔で言った。
思わずズッコケそうになったが本末転倒もいい所なので耐える。
「普通
……
ではない、かな
……
? 少なくとも日本では
……
」
「なるほど
……
現界した時に知識は与えられてたんですが、ちょっとズレてたみたいっすね。すんません」
「ああいえ。こちらこそ助けてくれてありがとうございます」
頭を下げる原田さんにこちらも改めて謝意を伝えた。気を悪くしたようではないのでほっとする。
サーヴァントは召喚された時にマスターの時代の知識を一通り得るらしい。けど、実際の感覚と合っているか、上手く扱えるかはまた別の話だ。たとえば私が「スプーンを三つ使う文化がある」という知識だけ得たとして、それが特定の地域なのか、日常的に使うものなのか、特別な料理に使うものなのか、等をきちんと判断出来るかは別、というような。なのでサーヴァントの皆の少し違う解釈を訂正するのはよくあることだ。
「まあでも、出来るだけお傍に置いといてくださいよ」
ほっと息を吐いたところで、原田さんはいつも通りの落ち着いた声で告げる。
「あんたを死なせない為には、俺の槍が届く場所にいてもらうのが一番すから」
……
簡単には死なせない、と頼もしいんだか物騒なんだか分からない言葉を貰ったのは記憶に新しい。ただまあ、笑いながらも真摯な言葉であるのは十分に伝わっている。だから私は苦笑するに留めた。きっと彼は、最後の最期まで私を死に損なわせてくれるだろう。
「
……
あ、そうだ。さっきまでのが普通のじゃないってんなら」
ひょい、と原田さんが私の手を取る。
「こういう、誓い? 忠誠? みたいなのもですか?」
そして
――
手の甲に一瞬、濡れた触感が。
「
…………
それもっと西の方の人達の! 私達は極東の人達!!」
え、何か柔らかかったな? こんなガッチガチに鍛えるてる人でも柔らかいものなんだ? そりゃそうでしょうよ唇をどう筋肉塗れにするというのか!
落ち着こう、ちょっと思考が混乱してる、柔らかさについて考えてどうするの私。どうもしないよ!
「ていうか多分、西の方の人達でも普通にはやらないと思いますよ!」
「そっすか。やっぱ色んな時代の色んな奴らがいると分かんなくなりますね」
それはそう。本当そう。神様王族英雄一般人、よりどりみどり、わあ凄い。
一度大きく跳ね上がった心臓を宥めていると、そんじゃまあ、と原田さんは笑った。私の手を取ったまま。いつもより少しだけ深く。
「いつか、西の方に行きましょうかね。そしたら今のも少しばかりは普通になりますよ」
そんなことを言いながら、原田さんはあっさりと手を離すのだから、こちとらなんて顔をすればいいのやら。
「
……
ヨーロッパ旅行したいなあ。召喚に応じてくれた皆の足跡、辿りたいですし」
「東西南北、世界中飛び回ることになりそうすね」
「うん、本当に」
結局何食わぬ顔で、何でもない会話をしながら食堂までの通路を再び歩き出す。さっきと変わらぬ、距離のままで。
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