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アスナショウコ
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【創作|馬子軸】アンシーリーコート
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χχχ-medµme 秘匿破りのルセット(舐めニキの長編|冒頭部)
もったいない精神で載せます。倒叙方式のミステリーが書きたくて、舐めニキに全てを託しました。
様子のおかしいショコラティエ、舐めニキことミカエル=クロー・マクシミリアンと、盲目の神秘秘匿執行官 チェチーリア・ストロンスカヤがバディとなり、奇奇怪怪な事件を解き明かします。
※以前カクヨムに載せてましたが、続きが思いつかなかったので下げました。一旦書けてる部分まで載せます。
1
2
Antipasti. 赤き薔薇の心臓
やった! ついに私、彼の心臓にたどり着いたわ!
女──ジェニファは内心で歓喜の声を上げる。はく、と唇は激しい鼓動で酸素を求め、声にならない嬌声を微かに漏らす。
彼をフィレンツェで見つけた時、運命だと直感でわかった。きっと彼は私を全霊で愛してくれる──彼は誰にでも優しくしていたけれど、いつかきっと私だけを見つめてくれる。
そんな甘い砂糖菓子にも似た夢想を、彼女は抱いていた。
しかしその砂糖菓子は、紛れもない現実に変わった。
ジェニファは昔からどこか夢みがちな女だったが、これだけは夢ではない、紛れもない現実だ、間違いないと言えるだろう。
彼女が跨っていたのは、動かぬ男の肢体だった。
胸はぱっくりと割れて、虚血状態に陥った色の無い心臓が覗いている。ジェニファはべっとりと血に濡れた両手で彼の心臓を掴み、上に引っ張り上げた。
男の血管が悲鳴をあげる。ぶち、ぶち、と悲惨な音を立てて組織が剥がされ、女はその心臓をぎゅうと己の胸に抱いた。
ジェニファはこの上ないほど幸せだった。絶頂に達しそうなほど上気した体は疼き、今にでも死体となった彼と一つになりたいと叫んでいる。
だが、彼女の体温で徐々に腐り始めた心臓は、服に言い逃れできない真っ赤な証拠を残していく。
「ああ、ジェニファ
……
」
ぴたりとジェニファは動きを止めた。恐る恐る──視線を声の方へ向ける。その甘美なテノールを聞く。
黄金比。
男の顔は、この世のものとは思えない──彫刻のような精緻さで完璧に整っていた。顔に一筋飛んだ赤い血でさえ、彼の薫香を引き立てているようにさえ思えた。
「え
……
あ、
……
ど、どう、して
……
?」
ジェニファは震える声で男に問いかけた。己から程遠い意識の最奥、深く深くしまい込んでいたはずの恐怖が発露する。
彼はすっと唇を引き、麗しくも甘い──完璧な微笑みを浮かべてみせた。
「完全に舐めていたよ」
その少しばかり歓喜に満ちた声に、ジェニファは思わず抱いていた心臓を落とした。
心臓が真っ赤な薔薇の花弁に変じて、床に舞い散る。
ひ、と声を漏らした彼女は、思わずよろけて彼の上から退いてしまった。
女の重みを無くして、彼は浮き上がるように──軽やかに立ち上がった。
伽藍の胸で黄金の蔦が伸び、可憐な花をつける。ぽ、ぽ、と蕾が膨らみ、蔦はお互いを抱きしめ合うように絡み合って、その胸の派手な花瓶を埋めた。
「君の愛は、甘く、鋭く、そしてとっても熱いものなんだね
……
」
「な、何なの。何、なの、何で? だってあなた、わ、私が」
「なんて甘美なんだろう? まるで君は、エスプレッソをワンショット加えた、キャラメルマキアート、さ
……
」
男は膝をついて、ジェニファの顎を軽く掬う。ラズベリー色の瞳が真っ直ぐに、恐慌に顔を歪めている女を捉えた。
体が震える。きっと私は殺される。だが美の化身のようなそれから、ちっとも目を離せない。
ジェニファは自分が悦んでいるのを理解する。男女の咬合のように、激しく体が彼を求めて感じている。
女は快楽に身を捩り、どこか苦し紛れに、
「み、ミカ。あ
……
あなた
……
一体
……
」
「ふふ。震える君も、とってもスウィートだ」
軽いリップ音が響く。頬に口付けられたと気づくのには随分時間がかかった。ジェニファは左手でゆっくり己の頬を触る。
「何で
……
? だって私
……
」
「ふふ、面白いことを聞くんだね。スウィートハート」
男──ミカエル=クロー・マクシミリアンは、指先から黄金の花を一つ出現させる。
そして、歌うような口ぶりで、こう言った。
「僕は
きみたち
人類
が大好きなんだ。彼らの紡ぐ物語を、余すことなく──」
──舐め尽くしたい、からね。
✤
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