ぽふむん
2025-12-13 22:00:00
2088文字
Public ワンドロ
 

女隠の恩返し

#童しの版深夜の真剣物書き60分一本勝負

氷柱if
「伝言」

かつて#童しの記念日2023用に、鬼化ifで書いた作品のセルフリメイクです。

地獄に落ちろクソ野郎 | Privatter+ https://privatter.me/page/657d3b81dd64f

ああ、またやっていらっしゃる。
私は呆れつつも、そんなお可愛らしいお姿を微笑ましくも思いました。

好きな女性に構いたくて、そのくせとんちんかんな言動をして怒らせてしまう。
これは、ざらに見かける二十歳前後の青年の有様です。

何も珍しい姿ではありません。

でも、これをよりにも寄って“このお方”がしてしまうのだからお可愛らしいというかなんというか。

ええ、私 貴方をお慕いしておりましたのよ。

あの時、異形の鬼に家族共々襲われ、私も食われるところでした。

殺される

覚悟を決めました。
でも、その時でした。
あのお方は、私を庇うように覆いかぶさっていた兄と共にその命を助けてくださった。

氷の彫刻のような、それはそれは美しい男性でした。

何故氷や雪を象った神様、仏様はいらっしゃらないのでしょう?
まさに、氷の神様でした。
私にとっては神でした。

寒さは人の命を奪うかもしれません。
でも、私達兄妹を救い、その心まで救ってくださったのはこの氷の青年神なんです。
誰がなんと言おうと、それは紛れもない事実です。

私は信徒として、少しでもあのお方のお役に立ちたかった。

私に鬼が斬れる程の力などありません。
恨みもありません。

だって、私たち兄妹にとっての仇の鬼は、あのお方が斬って消滅してくださったのだから。
そんな執念はありません。

それでも、衆生を救うため。

日々苦難をも苦となさらず、邁進なさるあのお方を少しでもお助けしたかった。

だから私は、あのお方専属の隠となりました。

そうして、すぐに気づきました。
あのお方も普通の青年だということを。
あのお方には、憧れの君がいらっしゃいました。
最初は毒虫のような女だと思いました。

ですが、それはとんでもない誤解でした。
私ときたら、恐れ多くも嫉妬していたようです。

あのお方は春の女神様でした。
春の木漏れ日のようなお方でした。

氷の君は、春の木漏れ日に憧れておいでなのです。

その凍りついた笑顔は、春の木漏れ日の元溶けて、本当に暖かく笑われる。

私は素直にこの恋を応援したいと思いました。

でも、この氷の君は本当に不器用なんです。

私達衆生には、適切な言葉をかけられる癖に。

ああ、春の女神様はその小さな体を気にしていらっしゃるというのに揶揄うものだから。
案の定怒らせました。

そこがお可愛らしいと褒めていらっしゃるおつもりなんですよね。

でも、空回りです。

ただ

春の女神様?
貴女も、そのようなことはお気になさらずとも良いのです。

世間に出れば、貴女は普通の身長の女の子です。

ここの剣士達が、天を突くほどの大男と大女の集団に過ぎないのですから。

「ごめーん、しのぶちゃん。怒っちゃやだぁ。機嫌直してよぉ。えぇ〜ん、どうしたらいいのぉ?」

「知りません!どうせ私はちびのみそっかすです」

「そこまで言ってないよぉ。ちっちゃくて可愛い……

「ほら、またチビって言った」
「そういう意味じゃな……ごめんなちゃい……許してよぉ」

ああ、氷の君は困り果てて半泣きになっていらっしゃる。

どう助言したものですかね。


「万世さん……
「しのぶちゃん。ごめんなさい」
「なんですぐに謝るんですか。馬鹿者」

「ごめんなさ……え?」

今、この方々は階段を上っていらっしゃる。

寺社のような、一段が中途半端に広く低いものでは無い洋式の階段です。

春の女神様が先を行き、氷の君が後を追ってました。
突然春の女神様は振り返り、一段下に居た氷の君の肩にそっと手をかけました。
そして思いっきり背伸びをし、触れるだけの口付けをしました。

「知っていますか?階段は一段約十五センチ。思いっきり背伸びをしてプラス十五センチ」
固まっている氷の君の唇にまた口づけました。

「確かに私はチビですが……工夫して、貴方を出し抜くことだって可能です。だからいちいち謝るんじゃありません」
春の女神様は、そう言ってほくそ笑むと、向き直りずんずんと先を行かれた。
氷の君はその場にへなへなと崩れ落ちました。

顔は、火を噴きそうに真っ赤です。
氷の像が溶けました。

これは

どうやら、私に指令が降りたようです。

これは天啓です。

私は、数名の仕事仲間に今見たことを茶飲み話として打ち明けました。

あとは伝言ゲームです。

どんどん噂に尾ひれがついて。

───蟲柱様が、氷柱様に毒を盛った。その所為で痺れて動けないのをいいことに犯した。

───氷柱様ご懐妊

「えぇ〜、なんでこんな変な噂出ているのぉ。これは俺も知らないよ」

「私が……万世さんをレイプして孕ませたぁ?男の人が妊娠出来るわけないでしょう。誰ですか。こんなデマを流したのは」

あのお方達は困惑しきりなようですが、あながち嘘ではありません。
いいんではないでしょうか。

氷の君は、式神の氷の神子をお出しになられます。

子供が産めるようなものではありませんか。

任務完了です