七海ななみ
2025-12-12 21:39:59
2305文字
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蒼炎はあなたと共にある③

ルカキリ。シリーズものです。今回で最終回。テーマは激重感情を抱くファルカ。男を魅せてくれた。
一作目 蒼炎はあなたと共にある | Privatter+ https://privatter.me/page/69374ed551c74
二作目 蒼炎はあなたと共にある② | Privatter+ https://privatter.me/page/693a8e252b912





目を開ける。
夢から覚めてしまった。
夢の中で、キリルと繋がった。

『魂まで一緒になったのに、まだ足りないんですか?』

足りない。全然足りない。
キリルが死んだと思った時から、胸に穴が空いた。
少しずつ穴は広がり、内側から破壊していった。
辛うじて、表面だけは残っていたが。
バルバトスのお陰で、キリルが共にいるとわかった。
穴は少しずつ埋まっていったが、完全には埋まっていない。
穴は貪欲に、キリルを求め続けている。
魂まで繋がっているのに、俺は何を求めているのだろうか。


⎯⎯⎯⎯⎯⎯



「おはようファルカ!いい夢みれたか?」
「栄誉騎士にパイモン、おはよう。お陰で最高の夢をみれたよ」
「よかった、フリンズと逢えたんだね」

部屋を出たら栄誉騎士とパイモンが俺を待っていた。
栄誉騎士には感謝してもしきれない。
栄誉騎士に状況を説明し、魂に詳しい者について尋ねたところ、ナタにいる黒曜石の老婆を紹介してくれた。
儀式を施してもらい、キリルと夢で逢うことができた。

「そういえばシトラリから話したいことがあるって言ってたぞ!オイラ達は他の部族に挨拶してくるから、一人で行けるか?」
「そうか、わかった。本当にありがとうな」

心からの感謝を告げる。
栄誉騎士とパイモンに別れを告げ、謎煙の主に向かった。


⎯⎯⎯⎯⎯⎯


「来てくれたのね。うん、経過良好ね」

来て早々、魂の状態を確認される。
良好よかった。安堵の息を吐き、礼を告げる。

「お陰で最高の夢をみられた。本当に感謝している」
「ならよかったわ。本題だけど、魂の分離について話しておこうと思って」

シトラリの言葉に息が止まる。
シトラリは俺の様子に気付くことなく言葉を続けた。

「時間はかかるけど、やろうと思えばできるわ。このままだと人から離れた存在になってしまうから、魂の修繕が終わり次第取りかかったほうがいいの」

魂の分離⎯⎯⎯つまり、キリルと離れる?
わかっているのだ。
俺は今、キリルのライトキーパーとしての生を奪っている。
ニキータとイルーガの顔が浮かぶ。
二人とも、行方不明のキリルを心配していた。
でも、それでも俺は⎯⎯⎯

「いや、それは結構だ」
「え?融合したままでいいってこと?」
「ああ」
「このままだと人間から離れた存在になるのよ」
「わかっている」

「それでも俺は、離れたくないんだ」

心臓に手を当てる。
ライトキーパーとしての生を奪っても、ニキータとイルーガから奪う事になったとしても。
それでも、離れたくない。
薄暗い感情が渦巻く。
貪欲な穴が喜んでいる。

本当にいいのね?」
「ああ」
………わかったわ」

俺の意思の強さが伝わったようだ。
引いてくれて助かった。

「まあ、融合している妖精も分離を望んでいないみたいだし、同意の元ならいいわ」
キリルも望んでいるのか?」
「ええ。あなたの魂に絡み付いている。離したくないと強い意思を感じるの」

キリルも望んでいるのか。
その言葉を聞いて、穴が少しだけ塞がった気がした。


⎯⎯⎯⎯⎯


シトラリと別れ、歩く。

『貴方も僕と離れたくない、そう思ってくださったんですね』

突然、頭の中に声が響く。
キリルの声だ。

『彼女のお陰でだいぶ負担が減りました。これからはお話することもできますよ』
さっきの会話、聞いていたのか?』
『ええ』
お前からライトキーパーとしての生を奪った俺を、軽蔑しないのか』

『何を言いますか。僕はとても嬉しかったんです』

キリルの言葉に、貪欲な穴が喜ぶ。

『ライトキーパーの事なら大丈夫ですよ。ワイルドハントも殲滅できましたし、イルーガもいます。僕が居なくても大丈夫です』
………
『僕も不安でした。貴方が人間から離れた存在になることを受け入れてくれるのか、怖かった』
………
『でも、受け入れてくれた。離れたくないと思ってくれた。
嬉しいです。このまま、ずっと一緒ですからね』

ずっと、一緒。
望んでいる言葉を貰ったのに貪欲の穴が蠢く。
足りない、そう叫んでいる。
魂まで融合して、キリルも受け入れてくれる。
なのに、貪欲の穴は未だ塞がらない。何故だ?
俺は、何を求めているのか。

『足りない』
まだ足りないのですか』

あぁ、そうか、俺は⎯⎯⎯

『ああ。だってキリルが隣にいない』

『風花祭も案内できていないし、蒲公英酒も飲ませてあげられない。モンドの街も紹介したい。
魂が融合しても、夢の中だけじゃ足りない。今ここで抱き締めたりキスもできない。一緒に、生きたいんだ』

『実体化する方法を一緒に探そう。
実体化できたら⎯⎯⎯俺と結婚してくれ』

隣に、キリルがいてほしかったんだ。

………………貴方は、僕よりも強欲だったんですね』
『そうだったみたいだな。返事を聞かせてくれないか?』
『貴方って人は、本当に、僕の予想を超えてくるなんて』

『お受けします。僕も貴方と一緒に生きたい』

受け入れてくれた。
喜びが全身を覆う。貪欲な穴が、塞がる。
笑顔が溢れる。

『キリル、愛している』
『僕も愛しています、ファルカ』



⎯⎯⎯⎯⎯


モンドには騎士と妖精の愛の詩がある。
騎士が死の縁にたたされた際、愛する蒼炎の妖精は身を呈して生命を救った。
騎士は愛する妖精を蘇らせ、騎士は蒼炎のランプを掲げる。
風神と月神に祝福されし二人は、永遠の愛を誓った。

素敵な愛の詩として、語り継がれていった。