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きなこ
2025-12-10 23:39:18
2379文字
Public
ワグボク
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責任を取りたいワグ様×にょたボクちゃん
ワグナス様に責任をとってほしいという想いだけで綴られた話。
中途半端なところで終わっています。続きを書くかどうかは未定。
注意事項
・ボクオーン女体化。先天性。だけど男として振る舞っている。
・流血シーンあり
洞窟に金属音と悲鳴がこだまする。
ワグナス達はタームの群れに囲まれ、奇襲を受けていた。
兵士たちを襲っていたタームを光の術法で消し去ったその瞬間、背後から乾いた羽音が聞こえた。咄嗟に振り向くと、数本の槍の穂先が視界いっぱいに広がる。間に合わないと悟るより早く、横から強い衝撃が肩をはじき飛ばした。
「ワグナス殿!」
ボクオーンだった。
彼は手にする棍棒でタームの穂先をそらし、返す一撃で脳天を砕く。しかし敵の数が多すぎた。ボクオーンの脇腹を槍が貫き、その勢いで薙ぎ払われた。小柄な体は軽々と吹き飛ばされ、洞窟の壁に叩きつけられる。
「ボクオーン!」
ワグナスの悲鳴が洞窟の壁に反響し、幾重にも重なって聞こえた。
彼が倒れる地面に広がる血は、瞬く間に土を赤黒く染めた。
手当をせねばと駆けつけようとするが、その行く手をタームが阻む。
「ワグナス! 早く、ボクオーンの元へっ」
ノエルの大剣がタームを真っ二つに切り裂き、道を作った。礼を告げて、ワグナスは駆けた。
ワグナスは血に塗れたボクオーンの体を抱き上げ、その場から離脱して物陰に隠れた。
鎖骨のあたりに鋭く尖った鉱石のようなものが刺さっていた。運悪く投げられた先にあったのだろう。心臓の位置は外れていることに安堵しながら抜こうとするが、その形は複雑に尖っており、無理に抜けば傷が深く広がりそうだし、体内にかけらが残ってしまうかもしれない。
上着をはだけさせて、胸元を開ける。
手元を魔法で照らすと、胸元から肩にかけて大きく抉れているのが見えた。その痛々しさに眉を寄せながら慎重に鉱石を抜いた。
術をかけると、黄金の光がボクオーンを包む。
癒しの術で傷を塞ぐことはできたが、抉れた皮膚の再生は叶わなかった。痛々しい皮膚の強張りに触れ、奥歯を噛み締める。
――
自分を庇ったばかりに。
だが今は反省をしている場合ではない。
体を汚す血を手拭で拭いながら、他の傷がないかを確認する。
ふと胸元に巻かれた包帯が目に入った。古傷だろうか。
包帯は真っ赤に染まり、さらに破けているため役割を果たせなくなっている。術のおかげで治癒されたと思うが、何にしても確認は必要だ。
包帯を剥ぎ取る最中、手に柔らかいものが触れた。
ぎくりと身が強張る。
この弾力はまさか
――
と、まじまじと胸元を観察すると、そこには控えめな二つの膨らみがあった。
息を呑む。
ワグナスが形のいいその乳房を見つめたまま硬直していると、ボクオーンが小さく呻き、目を開いた。
「
……
ワグナス殿? 傷の手当てをしていただけたのですか。ありがとうございます。一人で捌き切れると思ったのですが、逆にご迷惑をおかけしました」
「い、いや
……
君のおかげで助かったよ」
それなら良かったと、ボクオーンは柔らかく微笑む。
体を起こそうとするので手を貸してやる。その時、ボクオーンの視線が自らの胸元に移り、ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
慌てて白い腕で隠される胸元。
ワグナスは無実を証明するように、わざとらしく視線を逸らせた。
「その
……
君は女性だったのだな」
「はい。ですが、あなたはターム討伐に志願する人材を欲していた。そこに性別の縛りはありませんし、私の頭脳は役に立っているはずです」
「ああ。無論、頼りにしているよ」
ボクオーンは微かに安堵の色を含ませた息を吐いた。
「すまない。女性の肌に、こんなに深い傷を負わせてしまった」
ボクオーンは自らの体を見下ろし、「ああ」と平坦な声を出した。特に衝撃を受けた風でもなく、事実をそのまま受け止めている顔だ。
「戦いに身を投じた時から、傷がつくことくらい覚悟の上です。お気になさらず」
「しかし、そこは目立つ位置だ。女性として、ましてや貴族の令嬢としては
……
」
貴族だからだけではない。婚姻前の女性の、しかも命を助けてくれた恩人の肌に生涯残るであろう醜い傷を残してしまった事実が、ワグナスの胸を抉り罪悪感を募らせる。
「ご存知のように、男として振る舞っていますので、何の問題もありません」
「
……
責任を取らせてくれないか」
「は?」
咄嗟に出た言葉に、素っ頓狂なボクオーンの声が重なる。
二人は見つめあったまま固まった。
「君は命の恩人だし、残る傷を負わせてしまった。それに
……
その、不用意に君の素肌を晒し、見て、触れてしまった」
婚姻前の女性の素肌に触れてしまった以上、彼女の人生に責任を負うのは当然の責務である。ワグナスは懺悔をするように頭を下げた。
呆然としたように瞬きをしていたボクオーンは慌てて首を振る。
「本当に、この程度どうということはありません。そもそも、責任をとるとは具体的に何をするつもりなのでしょうか」
「結婚を前提としたお付き合いを
……
」
「何を馬鹿なことを!」
ボクオーンらしくなく、感情的に声を上げる。
「それでは、あなたを庇って傷物になりたがる娘が続出します」
だがワグナスの気持ちは揺らがなかった。男として、仲間として、そのくらいの責任はとってみせようという気概でボクオーンの手を握りしめる。
ボクオーンの腕がビクッと大きく揺れる。彼女の視線が動揺するように、右往左往した。
「おぉーい、ワグナスどこ行った? ボクオーンは無事かぁ」
戦闘は終了したようで、スービエの声が洞窟に木霊する。
ワグナスは返事をして立ち上がった。ボクオーンは青ざめた顔のまま、慌てて衣服に袖を通して身支度を整えている。
「この話はまた後ほど改めて」
真摯な瞳を向けてワグナスが告げると、ボクオーンははっきりと首を振った。
「これきり終わりにしていただきたいです」
どこか途方に暮れたような声が、洞窟の静寂へと落ちていった。
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