志良(シイラ)
2025-11-29 21:30:22
2345文字
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【学園ルートプロット】生きるために温もりを

「生きるために温もりを」の続きのプロット。
先に学園が見つけた場合。



天鬼はふとした既視感で、かつての記憶がよみがえる。
見た覚えのある者たちが屋敷をうろついている。
自分と同じ育ち方をしている、きり丸と過ごした記憶を。
きり丸が感じただろう絶望を想い、眠るきり丸の頭を撫でた。
どうやってきり丸を学園に戻したものかと思い悩む。
学園の者が来ているが密かに接触を持つのも難しい。
酷い自己嫌悪で胃を痛めて、起き上がると外に誰かいる気配がする。
『きこえているか』
その矢羽音は山田家のものだった。
『きこえていますよ、山田先生』
土井先生は山田先生にそう返した。
『半助、記憶が戻ったか』
『ご迷惑をおかけしました。私のことを迎えに来たと思いますが、私はこのままでは帰れません』
『どういうことだ? まさかお前さんが稚児を囲ってるという噂は本当だったのか?』
『違います、保護です、保護。見ればわかると思いますが……ちょっと今は』
きり丸の不安定な様子から、少しでも離れることができない。
土井先生は寝床を離れて、廊下へ出る。とにかく今は離れてもらうしかないのだ。
『とにかく、今は無事なので今はお戻りください。だいたい、また女中で潜入ですか、伝子さん』
『ちゃんと無事のようね、半助』
『おかげさまで。ってそうじゃなくて。早く戻ってください。じゃないと起きてきちゃいます』
『起きてくるって護衛ならみんな眠らせて来たわよ』
『外の護衛じゃなくてですね』
会話を続けているときり丸が天鬼の元に来る。
「天鬼さま……
天鬼に抱きつく小さな手と幼い声に、山田先生はやはり血迷ったかと内心苦い顔をする。
……いいから、寝ていなさい」
天鬼の後ろからひょいっと覗いた表情の抜け落ちたきり丸の姿に不意を突かれる山田先生。
きり丸はふるふると首を振り、天鬼から離れない。
『今見てもらった通り、きり丸です。保護した折、私もまだ記憶が戻ってなかったので……対応を誤ってこの通りです。私がいないと眠りもしません』
……それなら噂をそのままにしておいた方がつごうがよいな。他に問題は』
「伝子さん……おやかたさまを、連れて行くんですか?」
矢羽音で会話をしていた二人に、きり丸が口を出す。
掠れた、カラカラの声。こんな心細いきり丸の声を聞いたことはなかった。
「いいえ、貴方にも世話役がいた方がいいでしょうと天鬼様とお話していたのよ」
……俺は、天鬼さまだけでいい。天鬼さまが、いないと」
あのきり丸がまるで幼子のように首を振る。
再び何かを失うことにまだ十の子どもには耐えきれない。
……そう、じゃあ年の近いお友達にしておくわね」
『しんべヱを行儀見習いとして上がらせる。福富屋の名を全面的に出すなら通るだろう。それと、乱太郎も』
『ご面倒をおかけします』
こっそり交わされる会話をきり丸はじっと見る。
山田先生が行ってしまった後、土井先生はきり丸の頭を撫でて囁く。
「ごめんな、お前をとても傷つけた」
きり丸の顔は無。感情を動かすと決壊してしまう、その心の動きが土井先生にはわかる。
……早く寝ましょう」
先生としての名前も軍師の名も呼ばない。
そう言うことで心を騙している。
いつ失ってもいいように、と。
「そうだな、お前の身体が冷えないうちに戻ろう」
土井先生は何も言えない。今は何も。
軍師天鬼として、土井先生はけじめをつけるまではこのままでいようと決める。
そのうち、しんべヱや乱太郎が行儀見習いとして上がってくる。
風鬼は全て見ないふり。と言うか途中で伝子さんに捕まって事の顛末を吐かされた。
きり丸の心の状態が当初想定より悪かったということも知る。
どうにかして二人同時に脱出しないと、きり丸が死んでしまうだろう。
乱太郎としんべヱと過ごすことで、きり丸は普通の量のご飯が食べれるようになる。
だが夜は天鬼の寝所じゃないと眠れない。
置いて行かれる夢を見るのだ。追いかけて、拒絶される悪夢を。
それを忘れられるのは天鬼の温もりだけ。目を覚ました時にすぐに安心できるから。


タソガレドキはこの領地を奪還しようと忍者を放ってる。
軍師天鬼と小姓の噂は入ってる。
天鬼が土井先生というのは薄々悟っているが、確証が掴めないので何人か斥候を放っている。
屋敷に潜入すると忍術学園の者が何人かおり、組頭に報告する。
変装で潜入するように組頭は指示し、自分は曲者として侵入する。
すると伝子さんが接触してくる。
組頭は土井先生=天鬼であり記憶が戻っていることを知る。
そして天鬼の小姓がきり丸であることも知る。
二人を脱出させる方策と、しばらくタソガレドキ領に隠すことで合意。
実行日、屋敷は炎上し天鬼と小姓は火の中で生死不明になる。
タソガレドキが領地を取り返しに来たのだろう、とドクタケは応戦するが軍師不在では分が悪く、手に入れた領地は取られてしまう。
風鬼は天鬼諸々の記憶がごっそり抜けた八宝斎に、天鬼の表向きの顛末を報告するが八宝斎には意味不明であった。
きり丸はタソガレドキ領で土井先生と療養し、ようやく緊張から解き放たれる。
「土井先生、もう置いて行かないでくださいね」