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メメント森井もりさわ
2024-07-17 01:39:33
8599文字
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ルビコニアン異常お料理対決!
たぶん√分岐前です。
ギャグをやってみたかったのですが、無理でした。トンチキな話です。
621とウォルター、エア、スネイル、カーラが出てきます。モブもちょっとだけ出ます。
頭の良い人はいません!許してください!許して
1
2
料理!
はるかな太古、火と道具を手にした人類は進化のステージを飛躍させた。より効率よく狩りをし、身体を守り、そしてなにより食物を加工する術
……
料理を学んだ。そう。この料理という行為が、人間を人間たらしめていると言っても過言では無い。
かつて地球には、ゲラダヒヒというサルの仲間がいた。このサルは1日を座って過ごす。何故か? それは、地面に生えた草花を食べ続ける必要があるからだ。食事の間は立ち上がること無く、尻を地面に擦りながら移動する。生存に必要なカロリーを摂取するため他の選択肢を捨てたのだ。
ゲラダヒヒだけでは無い。生き物の多くは食物を食べること、消化することに生涯の時間の大部分を割いている。しかし、人類はその例外と言って良いだろう。何故か。そう、料理をするからである。
料理!
それは食物を食べやすくする行為である。刻み、加熱し、柔らかく煮て、効率の良い消化へと導く。それまで生涯の多くの時間を掛けて行なっていた「ものを食べること」は、もはや片手間に行えるようになった。そして、人類は余った時間を他の選択肢に使えるようになったのである。
こうして人類は次々と道具を発明し、他者と話し合い、社会を形成・発展させてきた。
遂には、我々を縛り付けていた地球の時代は終わり、宇宙という海原を旅する時代が始まった。
これ全て、料理がもたらした可能性なのである。
料理!あぁ、料理!
何より、美味の追求を人類は止めること能わず。
それは、この辺境の惑星・ルビコンⅢにおいても同じこと。
ここに、新たな伝説が生まれようとしていた
…
!
ーーー
強化人間C4-621・識別名:レイヴンは、ハンドラー・ウォルター救出を決意した。
再教育センター。
それが、今、ウォルターが囚われている施設の名である。悪名高いアーキバスグループ所有の施設。そこに収監されれば最後、2度と日の目を見ることは無いと噂されていた。センター収容者は、尊厳を踏み躙られるような尋問を受けるとも、アーキバスの傀儡になるよう洗脳されるとも言われている。
621も1度は再教育センターに囚われた身である。自身のハンドラーと共に。しかし、ウォルターの導きで621だけがセンターから脱出することができ、今は協力者を名乗るカーラの元で身を潜めていた。
カーラ曰く、
「あんたは生き残った。ウォルターは賭けに勝ったってわけだ。
……
いいだろう。あんたには私らの使命を明かすことに、」
「待って、ほしい」
突然、621がカーラの話を遮った。
「俺のハンドラー、を助けに、戻りたい」
「何だって?」
当然カーラは反対した。そいつは笑えない、と。
センター脱出までウォルターや自分がどれだけの危険を犯したと思っているのか。事実ウォルターは再教育センターから出てくることができなかった。それを、戻るなどと。
しかし。
「俺、にはハンドラーが、必要だ。カーラ。俺はウォルター、救出を提言する」
621はそう言ったっきり、むっつりと黙り込んでしまった。梃子でも動かない感じだった。
カーラは頭を抱えた。ウォルター、あんたは猟犬を甘やかしすぎた。何が意思の芽生えだ、ふざけるな。頑固者に育っただけじゃないか。
そう。鋼鉄の意志をもつウォルターの元で、猟犬は飼い主そっくりに育った。折れず、曲がらず。一度こうと決めたら最後までやり通す心の強さと生真面目さは、頑固で意見を曲げない性格をも形成した。困ったことに。
説得には時間がかかる。酷だが、ウォルター死亡の証拠を見せれば流石に621も引き下がるだろう。
そう、判断したカーラはチャティに頼みセンターのサーバにアクセスさせた。させた所、なんとウォルターの生存が確認できてしまったのである。
こうなると話は変わってくる。カーラもウォルターを見殺しにするのは好まない。飼い犬に迷惑を掛けられた文句の1つも言ってやらねばならないし。
そして、621は再教育センターに舞い戻って来たのだった。
ーーー
で、呆気無く。
余りにも簡単に621は捕縛された。
もともと隠密系の任務の苦手な621は、カーラやチャティ、エアの助けがあったにも関わらず、潜んでいたダクトからポロリと落っこちて、しかもそこが敵陣のど真ん中だったために、あっという間にセンター職員に捕まってしまった。
ところが、職員は621を殺さなかった。コアから引き摺り出された621が連れてこられたのは、何と。再教育センター内部にある食堂だった。不審がる621の前に現れたのは、
「全く。そのまま穴の底で野垂れ死んでおけば良かったものを
……
」
そう。ヴェスパー部隊第2隊長・スネイルだった。その嫌味たらしい口調と漏れ出るダーク・オーラに、621はこいつが犯人だ!と直感し、飛び掛かろうとして、
「うぐっ!」
センター職員に上から押さえ込まれた。非力な621は膝をつくしか無い。それを見て気を良くしたのか、スネイルは口角を上げた。
「良い機会です。あなたの飼い主が今どうなっているか、見せて差し上げましょう」
スネイルがわざとらしく指を鳴らすと、ごごご、という音と共に彼の背後の壁が天井に収納され始めた。そして、スネイルの背後に、食堂の奥に、621の視線の先にいたのは
……
「ウォルター!」
そこには入院患者のような服を着せられたハンドラー・ウォルターがいた。ウォルターは何故かテーブルにつかされ、その卓上には絢爛豪華な料理が載っている。
食事時だったのだろうか?捕虜に与えるにしては豪華が過ぎる。そんな食卓であった。
今まさにステーキ肉を口に運ぼうとしていたウォルターは突然現れた621を見て戸惑った。そして、食事の手を止め、何か恥じらうように目を伏せた。
「ろ、621
……
」
「これは、いったい???」
流石の621も仰天した。ウォルター生存は喜ばしいことであるし、どうやら身体のどこも害されていないようだった。しかし、意味が分からない。確かに捕虜を手厚く扱うことは皆無では無いが、ここは悪名高い再教育センターであるし、何より自分が受けた仕打ちと余りにも異なる。
それに。
それにウォルターの様子がどこか変だった。最後に見た時より健康そうな、いや、寧ろふっくらしているような
……
「駄犬と言えども流石に気付いたようですね」
スネイルは不気味な笑みを浮かべたまま話す。
「あなたの飼い主には、私が直々に考案した特別なプログラムを施すことに決定したのです。心を陥落させるには、まず身体から。つまり、食事提供による制圧。食事提供による蹂躙!
「
……
分かりませんか?まぁ、そのお粗末な頭脳では理解が及ばないのも無理は無い」
やれやれ、といった風にため息をつくスネイルを前に、621の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされていた。混乱する621に、エアが語り掛ける。
『レイヴン、相手の言葉に惑わされないでください!いえ、私も何だか混乱してはいるのですが
……
どうやらアーキバスはあなたのハンドラーを陥れるために摂食行為を利用しているようです。おそらく、あなた達にとって好ましい、そう、“美味しい料理”で持て成して陥落させようとしているに違いありません!
『事実、ウォルターの身体質量は増加しているようです。悔しいですが、アーキバスの作戦には一定の効果がみられます』
621は愕然とした。
「そ、そんな。ウォルター
……
!」
「違う、これはっ、俺は
……
」
ウォルターは珍しく冷静さを失っているようだ。スネイルはそんなウォルターに近寄ると、
「今さら何を。抵抗は無駄だと言っている」
先程ウォルターが食べるのを止めた肉の一切れをフォークに突き刺し、ぐい、とウォルターの口に押し当てた。
「ゔっ」
乱暴に押し付けられた肉に、ウォルターは慌てて唇を引き結んだ。
だが。
ミディアムレアに焼かれた肉と赤ワインを使ったソースの香りが混ざり合い、ウォルターの鼻腔を襲った。どちらも一級品の、極上の薫風。そして、唇は敏感にステーキ肉の柔らかさ、脂の滑らかさを感じ取っている。
料理は味のみに在らず。香り、食感、温度などなど、様々な要素が合わさって楽しむものである。それ故に、ただ味覚を絶ったからといって、その極上のステーキ肉を拒むことはできないのだ。
「っ、
……
ぁ」
知れず、ウォルターの唇が綻ぶ。肉汁を、ソースを味わおうと、そろそろと舌が伸びる。
すかさずスネイルはウォルターの口内に肉を突き込んだ。途端、ウォルターの身体を多幸感が包み込む。美味しいのだ。肉が、ソースが、スパイスのひとつひとつが。味わうためにゆっくり咀嚼する。
「んぐ
……
ふ、ぅっ」
鼻腔へと抜ける香りに身体の緊張が緩む。その一瞬、ウォルターは自分が囚われの身になっていること、621のことを意識から飛ばしてしまう。
その様子をスネイルは満足そうに眺め、
「ふふふ、これで駄犬の飼い主はアーキバスの虜。
……
おや?駄犬の分際で、いつまでそこにいるつもりです。さっさと尻尾を巻いて帰りなさい」
621はウォルターの有り様を見せつけられて、くそーっ!と思った。心の底から悔しかった。惑星ルビコンⅢに来てからというもの、621は様々な刺激を受け、ゆっくりと意思のようなものを形成してきた。その意思が621に語り掛ける。スネイル、ムカつく!と。
その時だった。621の内耳に潜ませた通信機からカーラの声が届いた。
「さて、ビジター。なかなか笑える状況じゃないか。ここで私からアドバイスだ。ここで黙って引いちゃ男が廃るよ」
621も脳内デバイスを使って“ひそひそ話”を返した。
「む
……
俺は男、なのだったか?」
621の素朴な疑問をカーラはスルーして、
「良いかい。こうなったら意地でもウォルターを取り戻すんだ」
「だが、どうやって?」
「料理で奪われた心は、料理で取り戻すのさ!ビジター!」
「そ、そうか
……
!」
“ひそひそ話”を終えた621は、しかし、ある重要な事実に気が付いた。
「俺は、料理をした、ことが無い
……
」
せっかくカーラが妙案を教えてくれたにも関わらず、621にはそれを実行する術が無かった。呆然として動けない621に、肉を咀嚼し終えたウォルターが呼び掛ける。
「621、俺に構うなっ
……
ッ、くそっ」
黙れ、と言わんばかりにスネイルがウォルターの顎を掴む。スネイルは片手で器用にパンを千切ると、皿に残ったソースを拭った。
「やめろ、そんな。行儀の悪いっ
……
」
ウォルターは身を捩るが、強化人間たるスネイルの手にがっちりと保持されているため口を閉じることもできない。ろくに抵抗もできないまま、濃厚なソースが絡められたパンを口の奥に捩じ込まれてしまう。
「んむ゛、」
濃厚で香り高い。
ソースだけでこれ程の、美味。
ウォルターの意思に反して、舌が旨みに喜ぶ。身体が、屈服する。じゅわ
……
と唾液が滲んだ。心では抵抗感を示したソースを拭ったパンを、ウォルターの身体は受け入れてしまった。
それを621は信じられない思いで見ている。あのウォルターが、鋼鉄の男が。一切れのパン、ほんの一拭いのソースに抵抗できなくなっている。他人の指を舐らさせられている
……
!
驚きは、憤りへ。
「スネイル!俺とお料理対決を、しろ!」
さっきまでの意気消沈っぷりは何処へやら。自分に全く料理の経験が無いことも忘れて、621は叫んでいた。スネイルは鼻で笑うと、
「何故、そんなものを受けねばならない?お断りです」
と、一蹴しようとして、
ガリッ!
指をウォルターに噛まれた。スネイルは反射でウォルターを殴りつける。だが。
「俺はまだ、屈してはいない
……
!」
乱れた前髪の間から覗くウォルターの眼はスネイルを捉えていた。身体は美酒佳肴に屈しようとも、その鋼鉄の意思は崖っぷちで止まっているのだ。視線だけで掴み殺そうとするかのような圧力に、スネイルは一瞬息を飲んだ。
「
……
良いでしょう。飼い主が陥落する所を駄犬に見せつけるのもまた一興か」
スネイルは部下に621の拘束を解くように命じた。
「期限は1週間とします。
……
それまでに飼い主が堕ちていなければ良いですね」
ーーー
そこから621の修行の日々が始まった。
包丁の正しい持ち方。どの程度が中火なのか。野菜は洗剤で洗わない。鍋の振り方。味見の仕方。「中火で4分」は「中火で4分」という意味であること。決して「強火で2分」に置換できないこと。塩ひとつまみの量。はじめちょろちょろ中ぱっぱ。
RaDの拠点を借りた621は、料理のイロハ以前から学び始めた。スタートラインにすら立っていなかった621は、それでもめげずに頑張った。
それと同時に、621は食材を集めなければならなかった。兵站が豊かなアーキバスとは違って、単なるいち独立傭兵に過ぎない621は、料理までの準備をも全て自分で行う必要がある。
621は、ミールワームの肉を求めては地下へ潜り、ルビコニアンデスタマネギを求めては急峻な山岳地帯へ向かった。アーレア海で塩を採ろうとした際には巨大なサメに襲われたりもした。
621は、1週間という短い期間を精一杯使ってお料理修行と食材集めに勤しんだ。
ひとえにウォルター救出のためだった。自分のハンドラーのためだったら、どれだけでも頑張れる。
折れず、曲がらず。
この瞬間もウォルターは俺を信じて待っているのだ。挫けてなどいられなかった。
こうして、あっという間に1週間が過ぎた。
ーーー
決戦当日。
雌雄を決する地は、再教育センターに新たに設置されたフィールド。大広間には2据えの調理場が向かい合うように設置されていた。
片や、お料理完全初心者の621。
片や、スネイル選出のアーキバス5つ星シェフ軍団(スネイル自身はまだ到着していないようだ)。
2つの調理場の真ん中には、真っ白なクロスがひかれたテーブルが用意され、今回の決戦を審査するウォルターが座っていた。
『ウォルターは、また身体質量を増加させられたようです。既にアーキバスに懐柔されていないと良いのですが
……
』
不安そうなエアに621は首を横に振った。
「俺はウォルターを、信じて、いる。それに、エア。君と、君が見つけて、くれたレシピの、ことも」
『
……
そうですね。私もあなたを信じてみようと思います、レイヴン』
と、その時。やっとスネイルがお料理対決会場に現れた。当然、スネイルから謝罪は無く、それどころか621に嫌味を言ってくる。
「身の程知らずにも我々企業に挑もうとは
……
呆れて言葉も出ませんね。駄犬が駄犬なのは仕方ありませんが、その飼い主にも随分手を焼かされましたよ」
スネイルはチラリとウォルターに目をやった。ウォルターは、沈黙を保っている。
……
と言うか、寧ろ気まずそうにしているようにも見える。
「虜囚の身でありながら、やれ木星の98年物は酸味が強すぎるだの、ルビコニアンロブスターにはチーズを合わせろなどと
……
物分かりの悪い老人でした。
「だが、その礼を失した態度も今日で最後。この対決で完璧に堕としてみせましょう
……
!覚悟しなさい、駄犬!」
「あぁ、望む所、だ
……
!」
スネイルも621も気合い充分だった。もう何者にも、例え地獄の釜の蓋が開いたとしても、この対決は止められないだろう。
ウォルターの心を掴む料理を作るのは、果たして
……
⁉︎
ーーー
先にウォルターに料理を提供したのは、アーキバス陣営だった。
今回の決戦のために惑星内外からかき集めた珍味の数々がテーブルに並ぶ。それだけでは無い。料理を食す者の目も楽しませるため、食器、盛り付け、カッティング、その細部に至るまで手が込んでいる。正直、老人ひとりに食べさせるには多すぎる気もするが、ウォルターは1皿1皿、丁寧に味わっていった。舌鼓を打つ、すっかり蕩けた表情に、スネイルは勝ちを確信する。
「なるほど、悪くない」
ウォルターは口元を拭くと、「
……
の赤に合いそうだ」と小さく呟いた。そのメーカー名を聞いてシェフは青ざめる。
「か、閣下
……
!これ以上は予算が吹っ飛びます!」
「構いません、出しなさい。これは必要経費なのです」
「しかし
……
!」
アーキバス陣営が揉めに揉め、結局ウェイターがちょっと震えながらワインをグラスに注いだ、その時。621が声を上げた。
「こちらも完成、した。ウォルター、判定を、依頼します」
そうして、621がテーブルに載せたのは
……
「ハンバーグ、です」
ザ・手作り!といった風合いのハンバーグ。少し形が崩れ、ソースも付け合わせのニンジングラッセにまで掛かってしまっている。
それに、ウォルターはアーキバス陣営の料理の数々を食べたばかり。既に満腹である可能性もあった。
それでも。それでもウォルターは621への感嘆を込めて、
「いただこう」
と、ハンバーグをひと口食べ、
ナイフとフォークを置いた。
その音が、会場に響く。
それ以上食べ進めないウォルターを見て、スネイルは口角を上げた。やはり、駄犬如きが企業に適う訳が無いのだ。この1週間でウォルターの舌は肥えに肥え、ちょっとやそっとの美食では満足できない身体に仕立て上げられていた。付け焼き刃の手作りハンバーグなど、口に入れるのすら躊躇うのも無理は無い。最早、ハンドラー・ウォルターは、その心までもがアーキバスに屈服したのだ!
ウォルターは身を縮めている621に、静かに尋ねた。
「これは、ミールワームの肉で作ったのか」
「はい
……
」
それを聞き、スネイルは嘲笑った。
「はは、何かと思えばミールワームとは!貧乏傭兵には似合いの品だ!」
「うぅ
……
」
621は項垂れる。
が、しかし。
ウォルターは、こう告げる。
「この勝負、621の勝ちとさせてもらう」
「な、何ッ⁉︎」
陥落させたはずのウォルターの口から放たれた言葉に、スネイルは驚愕した。621は素直に喜んだ。
「ウォルター
……
!」
「621のハンバーグに比べたら、アーキバスが用意したどんな皿も滓同然だ」
ガーン!
スネイルの頭の中で音が響く。
何を見誤った⁉︎ 料理提供による再教育プログラムに不備は無かった。ウォルターの身体が、アーキバスが用意する食事を、自ら求めるように調教してきたのだ。今回の対決でも提供した料理は文句のつけようがない出来栄えで、不測の事態など起こりようが無かった。
では、どんな誤算が?
スネイルはハッとして、621作のハンバーグを見る。もしや、何か特別な材料が使われていたのか
……
⁉︎ マイナス点であるミールワームを打ち消すような、そんな特別な何かが。
だとすれば、確かめなければならない。
それで、スネイルはテーブルに駆け寄ると、621とウォルターを押し除け、
ハンバーグを、食べた。
「不味い!?!?!?」
そう。621の作ったハンバーグは、ビックリする程不味かった。その不味さがスネイルの拡張された感覚器官を駆け巡る。大悶絶。想像を絶する苦しみ。スネイルが身体強化を後悔したのは初めてのことだった。
「か、閣下!お気を確かに!」
床上で悶えるスネイルに部下が駆け寄る。場は騒然となった。だが、強化人間がゲキマズな物を食べてしまった時の対処法など誰が知っていようか。
水か?吐き出させるか?と、ワァワァやっているアーキバス達を横目に、621とウォルターはそ〜っと再教育センターを脱出したのであった。
ーーー
「
……
そうだな。これも昔話だ、621。
ある男がいた。
罪人の子どもをわざわざ引き取るような奇矯な男だ。
引き取られた子どもは、恩知らずにも塞ぎ込んでばかりいた。
「ある時、男は子どもを元気づけようと慣れない料理をした。
その時代、食料と言えばミールワームを用意できれば良い所で、男自身の腕前も充分とは言い難かった。
出来上がったハンバーグは、酷く不味かった。
「丁度、お前が作ってくれたハンバーグのように、な。
昔の話だ。もう思い出すことも無いと思っていたが
……
お前のお陰だな、621」
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