皆瀬茶太(シキゴウ全)
2025-11-08 17:38:55
4747文字
Public 洋画
 

キートンバッツの主従アルブルSS2本

遅刻です!!!すみません。詫びに1本書いて2本にしました。
キートンバッツ物もイベントの度にSS増やしてます。
このままいけば小冊子できそう。ちゃんとキートンバットマンやブルースや執事になってると良いな。
ほぼ健全な主従ですが、書き手がカプ属性なのでカプです。アルブルです。

1:公式供給

 ゴッサムシティ。
 ウェイン家の寵児であり、街の象徴でもあるブルース・ウェインは、イベントシーズンになると見ない日は無いとされるほど見かける。
 式典で、テレビや新聞で、警察署のイベントで。そして、あちこちのパーティーで。

 クリスマス間近の、ある日の夕暮れ。
 ブルースは、リビングのソファで体を投げ出した。
 そのだらしない様も、普段であればアルフレッドは注意するが今回は見逃した。
 ここ最近のブルースは、ウェイン家の人間に恥じぬ行動だと内心で褒めた。
「お疲れ様です、ブルース様」
 アルフレッドは、マシュマロ入りのコーヒーを用意した。
 この後、会議が数本続く。
 主人が働けば働くだけ忙しい執事は、主がトレイからカップを受け取った後に気づいた。
「ありがとうアルフレッド。今日は夜も忙しそうだからカロリー取らないとな」 
 執事は忙殺のあまり忘れていた。
 年末に向けて犯罪率が上がるので、バットマンの出現も増えていると、ニュースになっていた事を。
「あーもう限界だー」
 子供のような口調でマシュマロ入りコーヒーを飲む主に、溜息をついた。
「半分は趣味でしょう」
 執事の毒舌も、慣れたブルースは眉根一つ動かない。
「そういうな。アルフレッドも今からする話を聞けばそんな嫌味も言ってられなくなるぞ」
 お互い知らない事の方が少ないので、だから、今からする相談をするならアルフレッドが適任なのだ。
「チャリティーイベントの子供たちからのリクエストだ。「バットマンとブルース・ウェインと並んで写真を撮りたい」」
 半分ほど飲んだカップ越しにブルースと目を合わせたアルフレッドは、端的に返した。
「どうされるおつもりで」
「どうも何も、コミックにはいるロビンが何で居ないんだって思ってる」
「メタですね」
 ブルースは両肩を上げて、おどけてみせる。
 冷める前にと飲み干し、カップを自分が座っているソファに置いた。
 つかさず執事が回収し、トレイに乗せた。
 ブルースは気にせず、ソファのクッションに挟んでいたコミックを取り出した。
 バットマングッズはゴッサムシティの名物として売り出され、クリスマス商戦にもしっかり加わっている。
 ブルースが持っている冊子は最新号で、捲った先には相棒として紹介されている少年がいた。
「全部無許可なのに、バットマンが本当にロビンを出したら、この場合は非公式ファンフィクは公式になるんだろうか」
「面白がらないでください」
「まあ待て。ロビンは少年だ、ブルースになれない」
「逆でしょう。あなたがバットマンをしてどうするのです。この時代には高性能マスクはまだ開発されていませんよ」
「お前の方がメタいぞ」
 ポンと、カップを置いたソファにコミックを投げる。執事は、一瞥をするに留まった。
「それで、ブルース様。何をしましょうか」
「バットマンは闇の象徴で、街の暗部だ。光のある場所には行けない。ブルース・ウェインで満足してもらうようにするさ」
 この主にしては珍しく、自虐的なセリフと表情だった。
 皮肉はパーティーで使い慣れているし、バットマンの時に吐き連ねている。
 だが、二人きりでのプライベートでは、彼はフラットだ。言葉遊び以上の意味を見せない。 
 彼が今も理不尽に蹲って傷ついている子供のような精神でいるのを受け入れている執事は、言葉の裏を読み解く事にした。
「ブルース様、つまり、写真以外なら出来ると」
「いや、写真も十分おかしい。サインてなんだ、サインするタイミング無いだろうバットマン。
 敵を確保する陽動以外、握手もしない。ポーズもしない。肩も抱かない。
 現場で相棒なにそれ羨ましい欲しい。
 相棒候補でゴードンはありだけど、同じ闇に居させるのはブルース的に解釈違い。
 そう、バットマンは闇の騎士なんだっ ダークナイト!」
 途中、ダークナイトというまたしてもメタい用語を聞いたが、執事はスルーした。
 というか、全てスルーした。
「俺が考えた最強の○○みたいな事を言わないでください。どっちが子供ですか」
 呆れたアルフレッドの脳内で、最近ショップで見かけた、バットマンとヴィランのトレーディングカードが思い出された。
 お互い、あらゆる方面で忙しいから疲れていると、執事は結論付けた。
「バットマンのイメージはあなた次第なのでとやかく言いませんが、子供たちにはあなただけが対応するのですね」
「無下にはねっ返さないのがブルース・ウェインだと知ってるだろう。連絡先は知らないんだと謝り、売っている非公式グッズを買っておいてくれ。全種類だ」
 なるほど、ついでに市場の把握をしたいらしい。
 とても忙しい時期に、やることが増えた。
 執事は、脳内やる事リストの項目を、無言で増やす。
「グッズにサインでも付けて、プレミアムにしますか」
「証明書がいるからしない。そんなの添えたら偽のサインが出回る。お前、分かってて言ってるだろう」
「ええ、勿論。あなたがこうして愚痴ってる時間の間に、何枚のサインが出来たのかと、ウェイン財団の社員に同情しているだけです」
「お前との会話は、ストレス解消になるんだ。コミックにも財団の広報にもバレずに済んでいるから、リークするなよ」
 能率の為に、従業員は許してくれるさ。
 あれだけだらしなく座っていたブルースは、スイッチをパチパチと切り替える早さで表情を引き締めた。
 立ち上がった時には既にブルース・ウェインだったので、アルフレッドは感嘆を隠して頷くしかない。
「私にブルース・ウェイン様カロリーは十分です。今年ぐらいは良きパートナーとなるような方をお探しください。その方に、存分とあなた様の糖分を与えてくださいませ」
 女性どころか落ちない人間は居ないのではないかと思わせるので、つい早口で逃げた。
 アルフレッドが持っているトレイには、先までブルースが飲んでいたカップがある。
 そのカップの底には、冷えて残ってしまったコーヒー混じりのマシュマロがあった。
 今度はもう少し溶かしてからにしよう。
 アルフレッドは、脳内買い物チェックリストにマシュマロとそれに合うコーヒー豆を付け足した。
「俺カロリーってなんだ、アルフレッドは面白いなっ 今度使わせてもらおう」
 拾って欲しいところは、そこではないです、我がマスター。