sousakuyamamusume
2025-11-06 19:57:42
480文字
Public 赤徳
 

赤徳 声の話

 正気を失っていた頃の記憶は正直定かではない。
 その頃に校舎につけた傷を見ても何もひっかかるものがないぐらいには、まるで他人事だ。
 ただ、最近は少しだけ喉の痛みが薄れている気がしている。……多分正気じゃなかった頃に叫んだりしてたのだろう。
「ねぇ。」
「なんでしょう。」
「なんか声綺麗になったね。」
 満開の笑顔で、彼女が言った。
……そうですか?」
 ああ、仮面があって良かった。
 ……これがなければ、照れて真っ赤になった自分の顔を晒す羽目になるところだった。