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kurotera
2025-10-07 19:29:11
2609文字
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10/19 全開ケイデンス39 鏑木×青八木小説 新刊サンプル
10/19 全開ケイデンス39 東7 L33bにてサークル参加します。
鏑木×青八木を久しぶりに出しますのでよろしくおねがいします。再録+書き下ろしです。
1
2
3
デイタイム・ゴースト
1
コントローラーを握りしめたまま、青八木一は鏑木一差を凝視した。
お世辞にも愛想がいいとは言いがたい目つきのまま、ほんの僅かな驚きを見せて。
――
いや、ほんの僅かで済むのだろうか。鏑木から見れば彼の反応は薄すぎたので、次になんと言えばいいのかと口をぱくぱくさせるしかない。
「今、なんて」
「こ、このレースに勝ったらキスしてくれ
……
さい!」
敬語の体裁を保とうとして失敗した鏑木の、真っ赤な顔が奇妙だった。どういった了見でそんな発言をしたのか理解に苦しむと軽く眉を寄せて視線をそらせば、その先のテレビ画面には回転するレーシングカーに乗った、赤い帽子のヒゲ男と、小さなキノコ人間が今や遅しとレースの開始を待っていた。
このレースに勝ったらキスをしてくれと、後輩はのたまう。
積み上がった疑問を消化出来ず、画面と向かい合いながらぼうっとしたままでいる先輩の様子を是と受け取ったのか、気が変わらないうちにと鏑木がボタンを押す。
「じゃあ始めますんで!」
「いや、待て」
「レースは待ってくれませんよ!」
スタートのボタンが押されて、画面が切り替わる。カウントダウンと共にエンジンをふかす音が大きくなるのに、青八木は観念して小さな息を吐いた。
――
発言の意図はともかくとして、つまり勝てばいい。
緑が点灯した瞬間、自分の操作するキノコ人間は軽やかにロケットスタートを決めた。鏑木が操作するヒゲ男は盛大に失敗したのか、出遅れている。あっという間に一位に躍り出た。
複雑なギミックのないコースだ。アイテムボックスを突き破り、アイテムが抽選される音を聞きながら青八木はコントローラーを操作する。頭の中では数分前のやり取りが、終わりの無いクリテウムがごとく、ぐるぐると廻っていた。
家に来て下さいよとせがむ鏑木に折れた青八木が、彼の家を訪れて早数時間。レースゲームをぶっ続けるのも少しばかり疲れてきていた。
青八木に一度も勝てない鏑木が、何度ももう一度とせがんでくるのだ。
一瞬、わざと負けてやろうかという考えも抱いたのだが、このプライドだけは馬鹿のように高い男にわざと負けてやったことを気取らせずにぎりぎりで負けるという、器用な芸当が出来るのかと言われると、あまり自信が無い。何より、腹が立つ。
負けてやったことに鏑木が気づかなかったとして、それを鬼の首をとったかのように騒ぐ姿を想像すれば、かなり癪に障った。勝つか、負けるか、そんな葛藤を繰り返しているうちにこれでおしまい、あともう一回だけを何度か繰り返してそれから、鏑木は情けない声をあげたのだった。
「あと一回! マジであと一回だけ!」
「本当に最後だぞ」
「最後! 一回だけ!」
やれやれとため息を吐く青八木が操作キャラを選び、決定ボタンを押す。しかし鏑木はキャラクターを選んだまま、ボタンを押さなかった。
最後の一回だから悩んでいるのだろうかと横目でちらりと見れば、鏑木はひどく真剣な顔をさせてその場に固まっていた。
どうした、と声をかける。
たかがゲームだぞと呆れながら鏑木を急かせば、青八木、と鏑木は声を震わせた。
「オレが勝ったらキスしてくれ」
「は?」
――
冒頭に至る。
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