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ふみかぜ@壁打ち
2025-10-02 22:47:49
5536文字
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【読切ドラロナ】より単純化された結果の告白
読切ドラロナ、pixiv投稿の再掲/建前とか考えずにもっと気楽に城に来て欲しい吸血鬼と、本音を建前で繕ってたのにうっかり口を滑らせた退治人の話/ゆるふわ両片想い。イメージとしてはよく死ぬのちょっと後ぐらいです/1ページ目はド視点、2ページ目にロ視点のオマケがあります。
1
2
ドラルク城へ気まぐれにやって来る人間を出迎え、料理で持て成したり一緒にゲームをしたりするのにも慣れた頃。
夜寝するアルマジロのジョンを彼専用ベッドに運んだ後、そういえばとドラルクは前から気になっていたことを口にした。
「ねぇロナルド君。ロナ戦なんだけどさ
……
私の描写、何か変じゃない?」
その言葉に、城の雰囲気にもすっかり慣れた様子でリビングのソファーに腰かけ雑誌を捲っていた客人
――
ロナルドが顔を上げる。自作にケチを付けられたからか、彼は機嫌を損ねたように銀の柳眉を逆立てていた。
「んだよ、テメェの雑魚っぷりをあれだけ脚色してやったってのにまだ足りねぇってか」
「いやそれは正直凄いと思った。だけどさぁ、私たちってコンビを組んだ訳だろう?」
「
……
そうだな」
「すなわち、君にとっての私は相棒であり、頼もしい味方ということになるね」
「後者については審議の余地がある。特に頼もしいの部分」
「事実を突きつけるな。
……
ともかく、私は君とは協力関係にある訳だ」
「まぁな」
何だかんだあって、ロナ戦は千体目の標的
――
ドラルクと利害の一致で手を組む形で落着し、今はコンビ編を展開し絶賛刊行中である。ロナルドの手腕によって、ドラルクも雑魚っぷりを明らかにしつつも妖しさとクールさを兼ね備えた魅力あるキャラクターとして描かれている。
……
それは、ドラルクにとっても悪くないのだが。
「ロナ戦での私って、妙に悪者オーラ出してない?」
「良いだろ別に。吸血鬼ってのは恐れられるのが好きなんだろうが」
「そうだけど、私が求める畏怖とは違うんだよねぇ
……
威厳と気品に満ちた感じじゃなくて、妙に胡散臭いって感じに描写されてるし」
例えば、牙を見せて不気味に笑う様子とか。妙に意味深な言い回しをするところとか。実際そういう風に振る舞うことはあるが、一つ一つの動作が妙に誇張されているような気がするのである。
「もしもロナ戦が完全なフィクションだったら、読者から絶対後で裏切るだろって思われそう」
「あー
……
」
ドラルクの所感を聞いたロナルドが、不自然に言葉を濁らせる。いかにも気まずげに視線を逸らした彼を見て、ドラルクはまさか、と口を引きつらせた。
「ロナルド君、もしかしてわざと
……
?」
「相棒としての絆が深まっていったと見せかけてからの裏切りってベタだがウケるよな」
「嘘でしょーーー?!」
余りのショックに死にかけるところだった。何に? ロナルドがこの関係がいずれ破綻すると確信していることに。最近はドラルクの手料理も完食するようになって、かなりこちらに気を許してくれるようになったと思っていただけに、その衝撃は大きい。
ドラルクが裏切ること前提でロナ戦を書いているらしいロナルドは、テーブルに置かれたクッキーを躊躇うことなく口に入れ、涼しい顔で紅茶を啜っている。こちらを警戒しているにしては、余りにも緩い態度ではないだろうか。
「いつでも使える話のストックがあると安心するんだよ。実際に書くかどうかは状況次第だが」
「ストックって何?! 言っとくけれど私、君を裏切るつもりなんてないからな」
「料理に血を入れたりしねぇの?」
「しないよ! 私の料理へのプライドを舐めるなよ人間」
「吸血鬼のプライドはどうした。俺がゲームに没頭してる時を狙って、背後から噛みついたりとか」
「銃殺待ったなしじゃないか」
「何だよ初対面の夜を思い出せよ、あの時のテメェは輝いていたぜ」
「あれは怒りに任せた無茶であってだね
……
いいかいロナルド君、よく聞いてくれ」
ロナルドの向かいのソファーに座り、ドラルクは真面目な顔を作って語りかける。
「私にとって君とのコンビ活動は楽しいし、ゲームを色々布教できること、料理を沢山作れることも嬉しく思っている。それに比べて、君を裏切って吸血を狙うのは手間の割に面白くない。つまり、私に君と敵対する動機は皆無なんだよ」
「一回ぐらいなら、魔が差したってことで和解編に繋げられるぞ」
「次の展望を考えるな! ああもう、どうしてそんなに私と戦いたがるんだ。どうせ勝負するなら対戦ゲームで遊んだ方が楽しいでしょ」
「
……
ロナ戦のネタ集め」
「だからって、どうして私と戦う方向に」
「取材ってことにしねぇと、理由にならねぇだろうが」
「え、理由?」
そっぽを向いたままロナルドが投げ遣りな態度で言った言葉に、当惑して思わず聞き返す。ドラルクが注意深く観察してみれば、その顔は何だか不貞腐れているように見えた。
「ロナ戦のネタにならないなら、仕事もねぇのに城に来る意味が何処にある。雑魚で大した脅威にもならねぇなら、わざわざロナルド様が監視する必要もない」
不機嫌そうに悪態を吐いたあと、目を伏せたロナルドは声のトーンを一層落として呟いた。
「だったら
……
次からは何のためにここに来れば良いんだよ」
――
苦い表情で自問する、生まれてほんの二十数年しか経っていない若者。その姿を見て、ドラルクはもしかしてと思い至る。
「ねぇ、ロナルド君」
ドラルクは立ち上がり、ロナルドが座るソファーへ改めて腰を下ろす。一人分の隙間を空けて隣にいる吸血鬼を退治人は一瞥するが、そこから距離を取ろうとはしなかった。
「あまり難しく考えることないんじゃない?」
「あ? どういう意味だよ」
「別にここに来る理由なんて、ゲームで遊びたいとか、美味しいシチューやパイが食べたいとか、ジョンを撫でたいとか、そういうので良いんだよ。いっそ何もなくても、何となく来たくなったから来た、それで十分じゃないかね」
「っ、それは」
腰を浮かしかけ、明らかな動揺を見せながらロナルドが呻く。
「それは
……
駄目だろ。俺は退治人だぞ、吸血鬼の城で意味もなく寛ぐなんて」
らしくないぐらい弱々しい声で呟く彼を見て、やっぱり、とドラルクは確信する。
きっとロナルドは、城でドラルクと一緒に過ごす時間を快く思っているのだ。ドラルクが彼の来訪を期待しながらゲームを選別し、城の中を磨き、料理のレシピを考えるように。ただ、ロナルドは退治人としての意地から、それを素直に認めることができずにいるらしい。
嬉しさから思わず声を上げて笑ってしまいそうなのを堪えながら、ドラルクは真摯な態度を意識して微笑んだ。嗚呼、何て面倒臭くて面白くて、可愛げのある人間なんだろう!
「私は逆にありだと思うよ。吸血鬼と退治人、敵対するはずだった二人が立場を越えて真の絆を深めるなんて、それこそ王道だけどウケるのでは?」
「
……
ロナ戦の作風に合うか、それ」
「合う合う、絶対マッチするとも」
ドラルクの言葉を受けて、ロナルドは睨むようにこちらを見ていたが、やがて脱力したように肩を落として溜め息を吐いた。
「お前の描写についての方向性、編集さんと相談してみる」
「よろしく頼むよ」
それから、冷めた紅茶を淹れ直して、ゲームでレア素材のドロップを狙ってマルチプレイをしたりして。気づけば夜明けまであと少しという時間となっていた。名残惜しいが、そろそろドラルクも眠る時間で、ロナルドも次の仕事に備えて帰らなければならない。
「それではロナルド君、気をつけて帰ってね」
「おう」
開いた玄関扉の向こう、外に立つロナルドを見送る。次に城へやって来るのが何時になるかは、彼の気分次第であることに変わりない。ただ、今夜のやり取りでロナルドの足が軽くなってくれればいいと思った。
「そうだ、今度はツチノコ君も連れておいでよ。ジョンが会いたがっているんだ」
「考えとく」
「ふふ、楽しみにしているよ。それじゃあ
――
」
「ドラルク」
またね、と言おうとしたドラルクを、ロナルドの声が遮る。昼の空を流し込んだような青い目が、吸血鬼を静かに見据えていた。半ば刺すような強烈な視線に、おっとまた何か彼の不興を買うようなことをしてしまったかと焦りと恐れが湧き上がり困惑する。
「俺がこの城に来る、お前に会いに来る理由」
「うん?」
「例えば、俺がお前を好きだから、とかでも良いのかよ」
「あ、うん、良いんじゃない?」
混乱の最中、反射的に返したドラルクを見て、ロナルドは表情を綻ばせて楽しげに笑った。
「じゃあ次からそうする。またな」
「またね
……
?」
呆然とするドラルクの目の前で扉が閉まる。ロナルドが立ち去ってから、今の会話をゆっくり反芻し。
「待って待って今のどういう意味?! ロナルドく、あああもう日が昇るじゃないか分かってて言い逃げしたな人間め
……
!」
扉を開き、空が白み始めたのを見て慌てて閉め、頭を抱えて行き場のない気持ちのままに叫んだ。
「え、これってそういうことで良いの
……
良いんだよね?」
ふらふらとリビングに戻り(途中で足をぶつけて一度死んだ)、主人の気配で半分起きたジョンを腕に抱いて棺桶へ向かう。ドラルクにとって最適な寝心地を提供してくれる棺桶に入っても、眠気は中々訪れてくれそうにない。
――
どうせなら「付き合ってくれ」まで言ってくれれば良かったのに。そうすれば、ドラルクは最初から決まっている言葉を返して、次の来訪をただただ楽しみに待っていることができただろう。
「覚えていろよ退治人
……
」
目を閉じれば浮かんでくる、傲慢不遜な退治人を思ってドラルクは呟く。次に来た時は彼の好物をこれでも用意し、残さず腹の中に収めさせることを企てながら。
――
帰り道、朝日を浴びながら呆然と突っ立ったロナルドが、顔を真っ赤にして「やっちまった
……
」と独り呟いていたことなど、知る由もない。
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