ろころころ
2025-09-29 19:22:25
3326文字
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アムシャフ小説詰め




1.

「貴方、シャフさんに変なことしてませんよね?」
「世の中の全てが自分の感覚に当てはまると思わない方が良い」
「誰が変態ですか。腕が吹き飛んでも気づいてない誰かさんの方が、余程気持ち悪いと思いますが」

不謹慎と言われるかもしれないが、アムリタにとって腕が吹き飛ぶのは日常であり、レオンにとって彼のそれを弄るのもまた日常だった。
アムリタは死なない。腕が飛ぼうとも気づけば再生が始まり、首が飛んでも棺桶から蘇る。不死身の呪いを受けた彼は"不死者"と呼ばれ、人でありながら生き物として最も持つべき『死』の概念を持たないそんな奇妙な存在。

それを気にしていないのか、はたまた慣れてしまったのか。受け入れて生きている訳でもないが、抗っている訳でもない。

彼のことを知れば、多くの人間は恐れる。
それであっても、"死なない"いうことは、生きとし生けるものが散る様を見届けねばならない。置いていかれるのは摂理で、見送るのは道理。"不死身"と力いうのは世界が平和になればなるほど価値が薄れるものでアムリタが、他の世界へ旅立とうとしているのは、きっとその事に気づいているからだろう。

彼の境遇は複雑だが、彼の内面は単純だ。
そのあべこべさが彼を"わかりにくい人間"として周囲の人間に評価付けさせているが、ただ彼は……不死者の力を使い、出来ること全てを成し遂げたい、そう思っているだけなのだと、長年の付き合いを持つレオンは薄々感づいていた。

だからこそ、彼にとって同じ目線で話せる相手が見つかったのは喜ばしいことだと思う。
彼と共に旅をする予定の青年、シャフは、彼と同じく不死身の肉体を持っている。なんなら、元々人間だった彼とは異なり、より強く神聖な力を持っている。"死なない"という理由だけで、同胞の中でも強き者として祀られてきた彼よりも根拠のある理由で強く、彼を守ることの出来る存在。それがシャフという青年だった。

さて、レオンが気にしているのはこの青年についてだ。レオンは別世界の商人と共に今後の人生を歩むことを最近決めたばかりなので、普段はどうでも良いと投げ捨てるようなこんなことにも気になったのかもしれない。
例の青年シャフは人ならざるものでありながら心優しく、平和主義な性格の持ち主だった。人間なのにド畜生で、すぐに手が出るタイプの誰かさんとは真逆な存在。

──────そんな彼とこの男が、共に同じ目的に向けた旅をするなんて、出来るのだろうか?

……なんて、私が気にすることでも無いでしょうが。私も余計なことにも気が回るようになりましたよ、本当に。何も考えていない誰かさんとは違いますね」
「お前の脳内の七割は異国の商人かマスカットの話だろう」
「やかましいんですよ」