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燈 ともしび
2025-09-27 18:52:44
3572文字
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ぎゆさね【不意打ち】
キ学設定。1ページ目はさねさん視点。2ページ目はその後のお話。
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2
「不死川が好きだ」
逆光になっていたので、そのとき冨岡がどんな表情をしていたのかは知らない。でも普段から冗談を言うようなタイプの男ではないし、なによりその声が真っ直ぐに、そしてどこか憂いと悲しみを帯びたものだったからその言葉が本気だとすぐに分かった。
「あ
……
」
本気だと分かっても即答出来るような思考になっていなくて言葉が喉に詰まる。以前よりも嫌悪は感じなくなっていたけれど、冨岡と俺は友人と呼べるような関係でもない。あくまでも同僚のひとり。それだけだ。今だって仲良く談笑していたのではなく、行事の打ち合わせが終わって無言のまま並んで職員室へ戻ろうとしていただけで。
それならノーと答えれば良いのかもしれない。週明けから多少気まずい雰囲気になるだろうが、それだって時間が解決するはずだ。
でも、その時の俺は何故かノーと言っては駄目だと思った。だからこそ余計に言葉が詰まって出てこない。
どうしようか。
夏休み中な事もあり、普段は賑やかな生徒の声も聞こえない、耳の奥が痛くなるような静かな時間が過ぎる。
「困らせるつもりではなかった」
あまりにも俺が反応も言葉も返さないので冨岡が先に折れた。慌てて顔を上げれば、冨岡は普段と同じ、何を考えているのか分からない表情で立っている。
「ただ、俺が不死川の事が好きだと伝えたかっただけなんだ」
それにも言葉を返せずにいると冨岡は頭を下げて先へと歩いて行ってしまって、俺は追う事も出来ず、そのまましばらく立ち尽くしていることしか出来なかった。
少し経ってから職員室へ戻ると胡蝶から声がかけられる。冨岡は部室の点検をしに行くと出て行ったと。
今は夏休み中だし、今日は高温注意報が出ているから体育系の部活動は全て禁止されている。点検なんて必要ではないはず。
「不死川くん?」
黙ったままの俺を不審に思ったのか胡蝶が心配そうに言ってきたが、
「俺もちょいと用事済ませて帰るわァ」
とだけ告げて職員室を後にした。
部活棟に向かって歩いていると剣道道場のほうからヒュン、と風を切るような音が聞こえてくる。
今日は部活動禁止って言ったよなァ、オイ。目を三角に吊り上げながら近寄れば、そこに居たのはきちんと道着を着用して竹刀を振り下ろす男の姿。
校門で生徒指導にあたっている時も迫力はある。けれど、目の前にいる姿とは次元が違う。
静から動。そして凛。
俺の中で冨岡はてちてち歩き、人けのない階段でぶどうパンをもそもそ齧っている男だったはずだ。
それが今はどうだ。普段光がない瞳は青く鋭い光を放ち、見えない獲物を逃すまいと輝いている。
目が離せない。
それが今の俺の真実。
声を掛けられず、ただ立っていれば気配を感じたのか冨岡がこちらに視線を寄越してくる。
鋭い眼光が緩み、驚き。
そして柔らかく弧を描いて。
「不死川」
少し息を切らした声が俺を呼ぶが、俺はそれに答えられない。ひたすらに顔が熱くて、馬鹿みたいに黙ることしか出来なかった。
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