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kibaco
2025-09-24 16:14:51
1541文字
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尊直
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せいせいスーサイド
尊直。両想い。gkrkの幼名をおかりしています。
pixivに置いたやつのプロトタイプのようなもの。
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せいせいした。
あの口煩い弟がいなくなった。
いつも我に付いてまわり、兄上兄上とまとわっていた弟がいなくなった。この世から。
高説ぶるくせに窮すれば我に頼るばかりの、面倒な弟だった。
あれはいつも我のせいにしたが、波風を立てるのはいつだってあれの方で我はそれを平らかにすることにつとめた。弟の周りはつねに騒がしく、弟はつねに我のそばにいたから、畢竟我の周りも騒がしかった。
やっと静かになった。
せいせいした。
あれは気がついたらすでに我の隣にいて、どこに行くにもくっついてきた。当然のようについてくるのでふしぎに思い、在る日何故我についてくるのかと訊けば弟は「兄上は次三がおきらいなのですか」と言う。考えたことがなかったので「いや、」と答えると「ならいいではありませんか」と言うので、弟は我が好きなのだなと知った。
我が気にかけてやる素振りを見せると、澄ました面で他人行儀に受けてみせるが、その目からその肌からはらりはらりと、うれしいうれしいと浮き立つ心がこぼれているのだ。たやすいことだ。
あれは戦に弱いから我は何度も何度も助けに行った。死に際の弟は我に会いたかろう、我を恋しがっているだろうと思うとみごろしにするにも偲びなく。我は何度となく弟の窮地を救った。その度ごとにあれは怒ったり呆れたり喜んだりしたが、結局我の顔を見ると女童のようにぽろぽろと泣くのだ。
戦塵にまみれ青褪め其処此処を赤黒い血に染めていようと、あれの煌めく眼から溢れる滴が白い頬を伝うさまは光るように美しく、そこだけ光を発しているように耀き、か黒い戦場でたいそう目立つのだ。
万を越す自軍の前にも関わらず臆面もなく泣くものだから、多くの者がそれを見る。日頃取り澄ました怜悧な男があまく柔らかいところを晒して兄に甘えるさまを、何万もの男に見せてしまう。雑兵から武将まで、その場にいた男たちは直義の清い涙にころりとやられて我の行いを礼讃し兄弟の絆を誉めそやす。人のこころは本当にたやすい。
兄上ぇ、と甘ったれて泣く弟を見るのは愉快だった。この世にこれほど愉快なことはない、と思った。何故弟はこれほどまでに美しいのか。こんなに血と脂で汚れているのにあまりに美しい。それが我に縋って泣くのは気分が良かった。気分が良くて、弟に齧り付きたくなる。食べてしまいたい。舐め回して肌を吸って歯を立てたい。唾が口内に溢れてくる。溢れる唾を飲み込みながら弟の肩を抱き頬を寄せると弟も私の背中に手を回しぴたりとくっつく。ひとつになってしまったようにぴったりと。離れがたい。こうして弟とひとつになるとたとえようもない幸福におそわれる。これをしたい時にするには多少の面倒は耐えねばなるまい。いつでも手が届くところに弟を置く必要があった。
我は政治も戦もやりたくなかった。面倒なのだ。何にも脅かされず平らかに生きたいだけだった。
そんな弟がいなくなった。きえた。きえてなくなった。
我の周りは静かになった。もう何も聴こえない。
うっとうしかった。うるさくて。面倒で。従順で。兄上兄上とまとわって。直義。
裏切り者。
我もいなくなりたい。
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