おがら
2025-09-07 00:48:07
1644文字
Public バキサム
 

Give me back the blanket!

🦾🪽 全年齢
付き合ってるバキサムでサムとアルパインの話。
月いち36の日で公開

 
 軽いランチを終え、少し横になるとサムに告げたバッキーは一緒に来るか? とお気に入りの窓際で昼寝に勤しんでいた愛猫に声をかけるも伏せていた顔を一瞬上げてから同じ体勢に戻ったので、バッキーはパソコンを前に作業をするサムにお休み代わりに軽いキスをしてからソファに横になったのが数分前。徹夜が続いていたらしくバッキーはすぐに寝息を立て始め、サムもその様子を伺いながらいつもより優しくキーボードを叩く。たまたま自宅にいる時間が重なったがバッキーは数時間後にはまた仕事に戻ると言うしサムも報告書やら調べものやらが溜まっており悲しくも休日を犠牲にして仕事に取り掛かっていた。
 どれくらい経ったころか、作業に集中していたサムは足元に柔らかいものが触れる感覚に手を止めて下を見るといつの間にか移動してきたアルパインがすり、とサムの脹脛に頭を擦りつけてきた。身を屈めて背を撫でてやるとアルパインは小さくひと鳴きしてから軽い足取りで部屋の巡回を始める。
 数分後、一通りの巡回を終えたアルパインは再びリビングに戻ってきてバッキーの眠っているソファの前で座り込むとじぃと何かを見つめてからなァなァと声を上げる。先ほどのひと鳴きよりずいぶん大きなその声にサムは画面から目を離すと立ち上がってソファの下、アルパインの隣にしゃがみ込みその白い頭頂部を指先で撫でながら小さく声をかける。

「遊びたいのか? まだ寝かせてやってくれ。」

 サムの言動で一度鳴くのをやめたアルパインだが、ぐぐぐと右前脚を伸ばしてソファに何度かタッチしながら再び鳴き始めるその姿にサムは何か気に入らないことがあるのかと眠っているバッキーとソファ周辺に目を配る。そうして気付いたのはバッキーがブランケットをかけて眠っていることだった。それ自体は珍しいことでもないし、気温が少し下がってきたからソファの背もたれにはいつでも使えるように置いてあるもの。しかし今バッキーが使っているのは自分たち用のものではなくアルパインのお気に入りのブランケットで、それは昨日サムが洗濯をして取り込んだ時にアルパインの寝床ではなく一時的にソファの背に置いていたためバッキーもそれを使用したのだろう。そういえば昨日洗濯をする時も散々鳴かれて文句を言われたな。その割に洗濯した後は興味を無くしたように要求してこなかったくせに。アルパインが気まぐれなことは今に始まったことではないのだが。

「アル、いまはバックに貸してやってくれないか? ――ああ、俺が悪いのはわかってるよ。」

 機嫌を直してもらうためにラグに横になって低い体勢をとったサムは下からアルパインの前脚を受け止めてそのまま脇腹に両手を差し込むと仰向けに寝転んだ自分の胸の位置に暖かい重みを乗せる。アルパインはンなァと納得のいっていない声を出しながら長い尻尾をサムの腹部を打ち付ける。うるさい、とまではいかない鳴き声だがどうにもバッキーとの距離が近すぎる。折角眠っているのだ、せめて時間までは寝かせてやりたい。

「しずかに、な。」

 アルパインにしか聞こえないほど小さな声で頼み込みながら根気よく背中や顎下を撫でていると諦めてくれたのか小さな鼻息をひとつだけ溢して打ち付けていた尻尾を自分に巻き付けると、サムの胸の上で前脚に自分の顎を乗せて伏せる体勢になりそのまま瞳が閉じられる。こういう時は諦めてくれているはずだ。鳴き声も収まりホッとしていると昼下がりという時間と重みと暖かさのおかげか睡魔がゆっくりとサムの脳内を占めていく。
 目線を配って時計を確認するとバッキーが起きる予定の時間まであと一〇分はありそうだ。少しだけ。と潔く目を瞑ったサムは知らない。バッキーが少し前から起きていたことも、ふたりのやり取りに身悶えていたことも、わざわざソファから降りてサムの隣で眠り直したことも。先に目が覚めたサムが気付いたのはアルパインの小さなブランケットをみんなで分け合っていたことだった。