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おがら
2025-09-06 23:59:43
2420文字
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忘れない。
カーリ生存if サムとバッキーがいますがほとんど誰も喋りません。
サムをカーリにとっての救世主のように書いているので苦手な方はご注意ください。
見えるところでの批判はご遠慮ください。創作です。
月いち36の日で公開
あの日新たなキャプテン・アメリカの腕の中で空から連れてこられたカーリ・モーゲンソウは瀕死の重体だった。すぐに救急隊に引き渡された彼女は病院に搬送されてから手術を終えると何日も眠っており、その間サム・ウィルソンは面会に行くことも出来ず正式に盾を継いだことで各方面での対応に追われていた。
カーリが目覚めたのは事態から3日後のことで、サムが彼女に面会出来たのはそれから2日後のことだった。最初はサムとの面会を拒否していたカーリだったが周りの誰もが信用できない、今すぐにでも殺されてしまう、否、殺してくれと医師に話したと聞きサムはほとんど強引に厳重に監視をつけられた病室へ押し入った。ちなみに周りからは接触を禁じられていたし、フラッグスマッシャーズの一件以降“相棒”のような関係になったバッキー・バーンズにも深入りするなと告げられてはいたのだ。そんなことを聞くサムではなかったのだが。
サムと直面したカーリはあんたが処刑人?とひどく澱んだ瞳でそのブラウンの瞳を見つめていた。
「殺さないし、死なせない。君は君のしたことをこれから償って生きていくしかない。死は償いじゃない。」
一度で説得されるほどカーリは簡単な人間ではなかったし説得自体は二度目だった。それからサムは幾度も病室へ足を運び、退院すると監視付きの部屋ではあったがそこにも足を運んだ。そうして数か月するとカーリは一時的に自由の身となり身柄はサム預かりとなった。正直に言ってカーリの影響力を考えるとほとんど誰も信用は出来ないからだ。フラッグスマッシャーズを支持する人間やカーリになり替わろうとする人間がどこに潜んでいて何を企んでいるかわからず、カーリも同じことを起こさないとは限らないからとの結論からだった。
それからカーリはサムの任務について行くことが増えた。とは言っても人助けやら警察や消防が入れない災害の現場やら、打ってしまった超人の力を安全に使える場所のみだ。そして今日もサムと珍しくバッキーと共に任務に就いたカーリは帰りの車に乗り込み景色を眺めながら数分すると瞼を閉じていた。ここの所カーリは夢見が悪かった。死んだ仲間のこと、殺してしまった人のこと、亡くした人のこと。全てがない交ぜになって夢の中のカーリを責め立て、追い立て、こちら側へ来いと何度も、何度も言葉を投げつけられ続けた。そうして目覚めたときは全身にびっしりと汗をかき、夢の内容が反芻して枕やクッションを何重にもして顔を埋めるとひとしきり叫んだ。
どうして生きているの。ころして、くるしい、らくになりたい。死ぬべきだった。
けれども死ぬことは許されない。助かった命は捨てることを許されない。暴走も、反逆も、あの翼と盾を傷つけることも、許されない。
――
できない。
サム・ウィルソンを裏切るという選択肢は既にカーリの中には存在していなかった。自分を生かした彼へ憤りをぶつけることはあってもこれ以上失望させることは出来なかった。そう思えたのもサムが心からカーリに向き合い、周りを説得し、彼女が制限付きではあるが自由のまま生きていられるのも全てサムのおかげだからだ。なにより、あの時サムへ告げた謝罪を台無しにしたくなかった。
だからカーリはサムが運転する車で眠ることが出来る。肩を叩かれればすぐに目が覚めるような浅い睡眠だが眠れないよりずっと良かった。今日は助手席に座ったバッキーとぽつりぽつりと会話しているらしく全ての内容はわからなかったが、サムがバッキーを信頼してることも、バッキーがサムを信頼していることもよくわかった。相変わらずバッキーがカーリを見つめる目は厳しいけれど。
微睡む意識の中、車が基地に付いたのを感じたカーリは目を覚まそうとするもどうにも身体が動かないことに気付く。起きろと言われたら起きるはずなのに、自分から身体を動かすことが出来なかった。それは数か月前、腹を撃たれて死の縁を彷徨った時のようだった。意識はあるのにママドンニャの遺品を握った手を指先一本動かすことが出来なかった時のように。けれど次の瞬間には一時の浮遊感と、それから力強く温かいサムの腕がカーリの身体を抱えていることに気付いた。その温度と、何にも揺るがない強さと彼の翼が起こす風が身体に当たる感覚を覚えている。
「
――
起こすか?」
「いいさ。ドアを開けてくれ。」
微かにバッキーとサムの声が聞こえ、カーリはそのまま置いて行かれるのだろうと瞬時に思った。任務帰りだろうと寝こけていたのだ、叩き起こすことはせずに放置されるのだろう。二人が乗っていた両サイドのドアが閉まり、車が微かに揺れると砂利を踏む音が聞こえ、声が遠くなる。待って。と喉から声を出したいのに声帯が押さえつけられたかのように震わすことが出来ない。もしかするとここは基地ではなく遠いどこかなのかもしれない。サムとバッキーは別の手段で帰るのか。私を、置いて。当然だ。今まで生きてこられたことが奇跡のような
――
瞬間、カーリの身体が浮き温かく力強い何かにしっかりと抱き上げられていた。何かなんて考えることもない。知っている温度だった。
サムは後部座席からカーリの身体を抱き上げるとバッキーが開けた基地のドアをくぐり、自分たちのオフィスへと連れていく。そのままソファに寝かせるとトレスに持ってこさせた毛布をかけてやり、三人は何やら話しながら退出していく。そこでようやくカーリは瞼を開き、無意識に握りしめていた手を解くことが出来た。見慣れた基地の風景にほっと息を吐き出し、そして少しでもサムを疑った自分を恥じた。暫く毛布を頭から被り、罪悪感に苛まれていたが三人の声が遠くから聞こえた時にはもうカーリは平常心を取り戻し、毛布を綺麗に畳むと目元を拭ってしっかりと両足で床に降り立つ。
サムの温度を、力強さを忘れずに生きていこうと心に決めて。
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