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おがら
2025-09-04 01:20:47
2729文字
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TB*女子組から見るサム・ウィルソン
タスクマスター生存ルートでサム側についている独自設定。
サムは出てこないし全部妄想で捏造です。
月いち36の日で公開
NYでの事案以降活動するニューアベンジャーズとキャプテン・アメリカであるサム・ウィルソンが率いるアベンジャーズが対立しているという話は一時期より落ち着いてきているが未だ一部のメディアは写真やインタビューを悪意的に切り取って記事を作る。今日も両チームの数名が出動して共に仕事を片付けたというのに明日にはくだらない記事が作られていることだろう。エレーナは我らがニューアベンジャーズの一員であるバッキー・バーンズとキャプテン・アメリカが睨み合っているような写真と共にくだらない妄想記事が書かれた新聞を隣のテーブルに放ると運ばれてきた目の前のアップルパイに向き合う。隣のエイヴァは大きなパフェを先ほどから頬張っていて、至極幸せそうだ。そして、向かいのアントニアの前にはチーズケーキが置かれている。
エレーナ、エイヴァ、アントニアの三人は今日の仕事に駆り出された内の一部だった。他にはニューアベンジャーズからはバッキー、アベンジャーズからはサムとケイト・ビショップだった。バッキーとジョンは早々に帰ったし、サムもケイトと共に基地へ戻ったらしい。
今回任務があったのはあまり詳しくない土地ではあったものの、街中にはショップや飲食店があったためエレーナは任務終わりにエイヴァとアントニアを誘い、ひとけのなさそうなカフェでお茶をすることした。窓際奥のボックス席を選んで入店してから数十分は経っている。
エレーナはアップルパイを崩しながらちびちびとチーズケーキを口に運ぶアントニアをちらりと伺って口を開く。
「ねぇ、キャプテン・アメリカってどんな感じ?」
「ん、私も気になってた。厳しくされてたりしないの?」
口の端にクリームをつけたままのエイヴァも同意して長いスプーンを置くと紅茶を口にして少しだけ身を乗り出す。興味本位ではあるが、その眼には微かに気遣うような色を乗せている。三人は出会った瞬間から裏世界で暗躍してきた者同士として殺し合いをしておりアントニアに関しては二人と共に活動したこともチームだったこともない。だがエレーナはアントニアを唯一知っている人物であるし、エイヴァは自身の銃撃が原因でアントニアを殺害したと思っていた。だからこそ気になるのだ、タスクマスターがアベンジャーズにいるということが。
「
……
とくに。」
僅かな音も立てずフォークを置いたアントニアは平坦な音で返事をしてブラックコーヒーに口をつける。その姿に隣同士の二人は顔を見合わせてからスイーツを横にずらして今度こそテーブルに身を乗り出し距離を詰めてもアントニアは動じず、ただ二人の様子を両の目でしっかりと観察している。
「本当に?バッキーから聞くと結構頑固な感じだし、融通も効かないっぽいけど。」
ニューアベンジャーズが結成してから一年ほどはキャプテン・アメリカ側とそれはもう揉めに揉めたのだ。主な原因はヴァレンティーナと“アベンジャーズ”という名前のことで。バッキーとサムが話し合いを行い交渉やらをしていたが、バッキーはいつもサムに言い負かされてしょぼくれた犬のような顔でウォッチタワーに帰ってきては『だめだった』『サムは俺の話を聞いてくれない』とぼそりと呟いていた。それを聞いていたエレーナやエイヴァからはサム・ウィルソンは名前を譲ってくれず、活動を認めてくれない人物に思えていた。
「でもさ、実際会うと私たちにも普通に接してこない?」
エイヴァの言葉にエレーナは少し首を傾げながら言葉を返すと数回会ったことのあるキャプテン・アメリカの姿を思い出す。初めてニューアベンジャーズ全員でサムに会ったときはバッキーにはいささか冷たい態度だったが、他のメンバーには至って普通に挨拶をしていたし、数か月前の任務ではエレーナが敵に吹き飛ばされた方向にたまたまサムがいてその立派な盾で弾き返されることなく両手で受け止めてくれたし、敵を倒すためなら協力もしてくれた。
「
……
確かに。あ、私このあいだ身体の心配された。」
エイヴァも記憶を巡っていたのかハッとして発言するとカフェラテを含んでいたエレーナが咳き込む。
「ッちょ、なにそれ!?」
「やだ、変な意味じゃないわよ!ほら、すり抜けるからなんか、それで
……
痛みとか大丈夫なのかって。」
「
――
あの人、誰かが傷つくことがすごく嫌なんだと思う。」
「え?」
静かに聞いていたアントニアが発した言葉に二人は声を揃えて彼女を見る。任務中はつけている仮面も入店時から外されており左の額にあるエイヴァが残した銃創を指先で触れてからその手をぎゅ、と握りこむ。少し俯いていたアントニアは顔を上げると窓の外に視線をやり、澄んだ空を眺めながらゆっくりと口を開く。
「危ないことだけはするなって、言われる。わたしだけじゃない。他の人にも。」
タスクマスターという得体の知れない人物を警戒はしつつも迎え入れたサムは彼女を傷つけようとすることは一切しなかった。情報だけをアントニアから引き出し、どこかに放り出すこともしなかった。毎日少しずつ会話を試み、コミュニケーションを図り、共に食事をする。そんなサム・ウィルソンにアントニアは次第に心を開き、忌まわしい技術さえ役に立つならと訓練や任務に参加した。
「何それ父お、」
「ちょっと」
深い意味はなく発したエイヴァの言葉に眉をひそめたエレーナは声を小さくして咎めるとエイヴァは瞬時にその意味を理解して小さく謝罪の言葉を吐き出す。アントニアの生い立ちはエレーナから情報共有として最低限はメンバーに伝えているため彼女にとって『父親』というワードが良くないことは周知の事実だ。しかし二人の心配を他所にアントニアは空を見上げたまま微かに顔を綻ばせて口を開く。
「ルースが良く言ってる。父親みたいね。って。
……
あの人がそうなら、悪くない。」
「
……
そっか。」
アントニアの様子を見るにアベンジャーズとサム・ウィルソンに酷い事はされていないらしい。ほっと息を吐いて相槌を打ったエレーナは放置していたアップルパイにフォークを突き刺して口に運ぶ。“家族”は自分たちが心の底からずっと求めているものだ。エレーナたちも、恐らくアントニアも。彼女にとってその場所が出来たのならそれは喜ばしいことだと思う。
「そういえばあんたの装備だけどさ
――
」
気付けば大きなパフェを平らげたエイヴァが話題を持ち出し、昼過ぎのティータイムはまだ続きそうだと感じたエレーナは店員に三人分の飲み物のお代わりを頼みアントニアがチーズケーキを食べ終わるまでは何もかも忘れてこの時間を楽しむことにした。
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