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yn
2025-09-01 11:37:51
3158文字
Public
諸々(CP混在)
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モブと兄さんの話×2
以前ツイッターで垂れ流して再録本に入れていたやつ。
再録本完売後1年経過し、かつお気に入りなのでこっちにもおきます。
モブ視点だ~~いすき(二度目)あと気づくとケンの話ばっかり書いていて、どうにもなりません。
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タクシー運転手さんの場合
大学卒業後すぐこの会社に就職し、ハンドルを握って二十年になる。何の偉業も成し遂げていないし、最近は妻も子供も冷たいけれど、二十年無事故のゴールド免許だけが私の自慢だ。
この秋の異動で、担当地区が変わることになった。移動先は新横浜だ。
私に異動を告げた年下の上司は「本当にすみません」と頭を下げ、その様子を新横浜経験者である同僚に話したところ何故か両手を合わせて拝まれた。
「あそこは魔境だ、頑張れよ」
との事。魔境とは何ぞや。そう考えながら、駅前ロータリーで初仕事を待った。
二十年も運転手をしていればお客とのトラブルもあるし、不思議なお客や変なお客を乗せたこともある。強盗にあった事も一度。肝だけは強くなった。だからだろうか、吸血鬼のメッカと言われる新横浜への異動もすんなり受け入れられた。
不意にコンコン、と音がした。助手席の窓がノックされている。
後部座席のドアを開けると、どーも、と一言断って大柄な男が乗り込んできた。ガサガサと大きく膨らんだビニール袋を四つも下げて、買い物帰りらしい。こんにちは、と振り返り、一瞬固まった。
ピンク色にグーチョキパーの柄の着物。頭に手拭い、口元も布で隠れている。
唯一伺える目つきもこれまたお世辞にも善人には見えない鋭さである。しかしあくまでお客様。顔に出すわけにもいかず、得意のにっこり笑顔を作った。
「どちらまで?」
「ビキニ御殿行ってもらえる?」
「
………………
はい?」
何かの聞き間違いだろうか。
恐れ入りますもう一度お願いできますか、と眉を下げると男はビニール袋を探りながら「ビキニ御殿」とハッキリ言った。
ビキニ御殿、ビキニ御殿? ビキニ御殿って何だ。御殿はまだわかるが、ビキニとは。私の知るビキニとはあの、水着のアレだが。アレか?
「
……
もしかしてこの辺知らん人?」
「あ、すみません、今日が新横浜初めてでして
……
」
察しの良い客だ。それとも相当困惑した顔をしていたのか。男はそりゃ悪いと頭を掻いて、軽く身を乗り出してきた。
「案内するよ。走ってくれるか」
「助かります」
「いいよ、多分俺以外にも言ってくるやついるから覚えとくといいぜ」
いるんだ。
そうとは言えず、ピンクのジャンケン柄男に言われるがままにハンドルを切った。
男の案内でたどり着いた家は、確かに御殿と言われるにふさわしい屋敷だった。そして、何故か門扉の横にビキニの男が立っている。何で?
「あんがとさん」
「え、あ! お釣り
……
」
「いらんいらん、これからここで仕事すんだろ? 激励と思って受けとんな。乗り心地はよかったぜ」
「はあ」
「じゃーな、また頼む」
男は気持ちよく笑うと、ビニール袋を両手に下げて降りていった。
少し気になって見ていると、ジャンケン男はビキニ男に声をかけ、一つジャンケンをしてから颯爽と中へ消えていった。ビキニ男はビキニを脱いだ。通報しようか迷ったが、脱いだ本人が一番困惑しているようだったので、気の毒になってやめた。
あの後乗せた客に突飛な者はおらず、私は何となくふわふわした心地で二日目のロータリーにいた。
アレは何かの夢だったのではないだろうか。そう考えながら手持ちの地図に貼られた付箋に書いてある『ビキニ御殿』の文字を見つめる。
「すみません! 乗れますか!?」
突如声をかけられて、反射的にドアを開ける。転がるように乗り込んできたのは真っ赤な衣装に銀髪の、輝くような美青年だった。まぶしい。後光が差している。しぱしぱする目を擦っていると、汗だくの美青年は帽子を脱ぎながらフロントガラスを指差し叫んだ。
「前の全裸を追ってください!!」
「なんて?」
「早く!」
前を見ると本当に全裸の男がバイクに跨り奇声を上げながら疾走している。慌ててハンドブレーキを下げてアクセルを踏み込んだ。
「あそこは魔境だ、頑張れよ」
そう私を拝んだ同僚の言葉を思い出す。そういえばあいつ半笑いだったなと、笑いの意味を思い知った。
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