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山本
2025-08-29 21:59:31
6954文字
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神よりもなお
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神よりもなお
ファンタジー設定🐯🕒。
神父のフリをした悪魔🐯×デザイナーズベビーでカントボーイ🕒のパロ。
気まぐれ連載。
1
2
【1】
「で、悪魔とやらは地下にいるのか?」
王都の教会の審問官として派遣された神父のトラファルガー・ローは教会へ案内した町の役人の男に問うた。
男は見たところ五十前後の歳の頃で、でっぷりとついた腹の肉がベルトに乗っかった背の低い小男だ。
「はい!神父様どうかあの悪魔に神の裁きを!!」
「神の裁きは神が下される。おれは神の代行者ではない、神の教えを伝える神父だ」
役人の男の悲痛な訴えに情の欠片も感じさせない声で告げたローが足を踏み出し胸に下げられた銀の十字架がチャリと揺れる。カツカツと歩くその足音はまっすぐ迷いなく進み、男はハッとしたように慌ててローを牢屋のある地下へ案内した。
ランプがつけられていなければ暗くて前の見えない階段を下りて着いた地下。ジメジメと湿気が酷く、僅かばかりのランプの明かりの先にこの町の神父がいた。
そのすぐ先、鉄格子の牢屋の中に壁に繋がれた手枷と首輪に繋がれて足には足枷がつけられた白い肌に金の髪の人物がぐったりと俯いている。
その素肌は汚れたボロきれがかかっている程度でほとんど裸を隠せてもいない。
「王都の教会本部から派遣されてきた審問官のトラファルガー・ローだ。悪魔というのは?」
「おお!お待ちしておりました。こいつが悪魔です。見てください、この者は人の姿を真似た悪魔なのです!!証拠に変身は不完全。男の姿を真似ながら男として不完全。歪に女の姿も成している!!」
町の神父が大仰に言ってローに駆け寄る。ローはそれを躱して片手で払い除け鉄格子の目の前に立った。
のそりと鎖に繋がれたサンジが顔を上げる。青い瞳と目が合ってローは目を見張った。
「お前、造られたのか!」
サンジが驚く番だった。
「わかる、のか
……
?」
「まァな。面白い、入るぞ」
唇で弧を描き、実に愉しそうに鍵のかかった鉄格子の扉を易々と開け中に入るロー。役人と神父は驚いたようにも慌てたようにも感じられる声で何かを騒いでいたが、ローはちっとも気にしなかった。
「ふむ
……
遺伝子から弄ってるな。ここまで綺麗に完成させるとは。誰がやった?人間がやったにしちゃあ完成度がすごい」
「あんた
……
何者だ?何でわかる?」
「神父様!!お気を付けください!そいつは悪魔の力を使います!どんなに尋問しても拷問にかけても次の日には治ってる!悪魔だ!!悪魔の力だ!!」
ローとサンジの会話を制止するように役人の男が牢の外から大声を張り上げてきた。それにローの表情が鋭さを帯びて役人の男を振り向く。
呆然とサンジが見つめる先でローは立ち上がると、左手に持っていた聖書をバサッと落として手袋をした手を下に向けかざした。すると左手の手のひらに青白い球状の何かが現れぐわっと拡大する。
地下牢をその青白い何かが覆い尽くすと、ローは右手を動かす。途端、生きたままバラバラにされる町の神父と役人の男。細切れのような状態にされても悲鳴を上げている神父と役人をひと塊の肉塊にすると、ローがサンジを振り向き笑みを浮かべ見下ろす。
「どうする?おれと来るなら助けてやってもいい。ああ、名乗り忘れてたな。おれは王都で神父をしてる悪魔でトラファルガー・ローだ。悪魔呼ばわりで殺されかけて悪魔につくってのは良い気分はしねェだろうが選べ。このままここに残るのと、おれと来ておれの眷属として本当に悪魔になるのと、どちらがいい?」
悪魔と名乗り、確かにそうでなければ有り得ないことを見せられたサンジは怒りも嫌悪も何もなく、ただひとつのことを頭に浮かべた。
悪魔ってこんな格好良い顔をしてるんだな。
どこか他人事のように考え、生きられるなら良いかと頷く。
「ああ、行くよ。お前と行く」
「いい返事だ。気を楽にしていろ、今解放してやる」
サンジの返事にニヤリと笑みを深くしたローは右手をヒラヒラと動かしてサンジを生きたままバラバラにして首輪や枷から解放すると、バラバラになったサンジの体を組み立てボロきれを剥ぎ取った。そして自身のローブを脱ぎサンジへと羽織らせる。
「服は適当に調達しよう。先に町の人間を片付けるぞ」
「え?」
「町の人間はお前の存在を知り過ぎてる。だから片付けておく必要がある」
必要最低限だけ告げ地下から上がっていったローを追い、サンジが裸足で駆けていくとそこは地獄だった。
ローが歩きながら右手を動かし、片っ端からひと塊の生きた肉塊に変えていく。逃げる者も攻撃してくる者も、片っ端から残らずだ。
町の人間を残らずひと塊の生きた肉塊へと変えたところでローが一軒の洋品店へと入りサンジへ服を見繕っていく。服を見繕ったら次は靴といった具合で着替えまで調達すると、青白い何かを消してサンジからローブを回収して着直した。
「さて、行くぞ
……
っと、その前にメシか。腹は減ってるか?」
「あー、まァ減っちゃいるが正直それどころじゃねェっつうか」
「何故だ?アレか?気にするな、どうせすぐ気にならなくなる。酒場でいいか?何か食材くらいあるだろう」
食欲だ空腹だを問われたところで恐れ戦き吐いていないのが不思議なくらいのものが見えているというのに、ローは平然と酒場へと入っていく。サンジも仕方なく後を追うと、ローは我が物顔で棚の酒瓶を物色しているところだった。
「厨房に何か食えるものはあるか見てきてくれ。おれは料理は苦手でな」
「じゃあ適当に見繕って何か作ってくるけどよ。嫌いなモンはあるか?」
「パンと梅干し。それ以外なら食える。おにぎりと焼き魚なら最高だな」
「
……
偏食の悪魔かよ」
好き嫌いを平然と言うローにぼやくように零して厨房へ。そこにはまだ新鮮な川の魚と肉、野菜があったので調理して持っていく。竈の火が消えていなかったのは幸いかもしれない。
ガランした酒場のテーブルで椅子に座って酒と食事を堪能する。ローは塩焼きにした魚を頬袋を作って味わっていて子供のような食べっぷりだ。
「で、悪魔って実在すんのか」
「疑う余地はねェだろう。神には会ったことはねェが、悪魔に関しちゃおれが存在することの証明だ」
「随分理路整然とした悪魔だな」
「
……
人間みてェに感情的に物を言って何かが変わるのか?」
余りに世間が言う悪魔の素振りとイメージが違い過ぎて零せば怪訝そうに返される言葉。それに呆気にとられ目を丸くしていると、ローは大きな口で鶏肉に齧り付きもぐもぐと咀嚼した。
「悪魔って人間と同じモン食えるんだな」
「普通に人間の食い物も食うし感情や生命も食う。おれは味に拘るんで生命には興味はねェが性欲を食事にしてる奴らもいる。そもそもが人間や犬猫みてェにこうした肉体に頼らなくてもいいからな。人間の食い物をメインにしてる方が少ねェ」
「そうなのか?」
「ああ、元々が肉体を持った生命体とは違うからな。この辺の理屈は概念で捉えた方が理解しやすいだろうから説明は省くが、決まった姿形なんてモンはねェ」
「そうなのか。なら、何でローは神父なんて?」
素朴な疑問として問うたサンジにローは食事の手を一瞬止め、サンジを見た。グレーの瞳が少々変わって見えるが、極普通の人間のようだ。人を肉塊に変えたりサンジが造られたというのをひと目で見破った諸々がなければ悪魔だと信じられなかったろう。
「この世界で最も楽に生きられる階級は何だと思う?」
「王サマとか?」
「違う。中枢の宗教家だ。もっと言えば国王も逆らえねェ中枢の神父や法王連中だ。おれはバカみてェに目立つことは勘弁だからな。法王だの上の役職より審問官くらいの役職として人間の中で暮らす方がおれが欲しいものを楽に手にするには便利だと判断した。それだけだ」
これまた理論的に返されてサンジが面食らう。そんなにこだわってまで人間社会に入り込んで何が欲しいのか。サンジには想像もできなくてちょっと気になった。
「なァ、そんなにしてまで何が欲しいわけ?強くなりてェとか?それともやっぱ美女?」
「
……
てめェはバカか?」
「何だと!?」
「おれたち悪魔は死って概念とは無縁の存在だ。敢えて死を表現するなら消えることだろう。それだって人間の感知できねェ場所に人間には見えねェ形になっちまえば消えることなく力の回復を待って動くことは可能だ。言い換えるなら魂のみの存在だと思え。お前たち人間は死後に神のもとへ向かい神の審判を受けるとか言ってるな?」
「あー。教会でな?」
「肉体がなくなろうと魂は消えない。そういった感覚だ。おれたち悪魔は魂のような見えない、人間には感知できない形で存在してる。だから増えるだの血族だのといった形式を重視しない。気に入った奴がいりゃ眷属にでもして一族を増やしもするが
……
人間のような動物や植物が子孫を残すのは何故だ?」
「
……
あー、そういうことか。死ぬから子孫を残さなきゃ種が絶える。だから人間は家族を作るけど悪魔には死の概念がないから積極的に子供を作ることに意味を感じねェのか」
「そういうことだ。話が早くて助かる」
思い至ったサンジの言葉にローが食事を再開して蒸留酒をガブ飲みする。勝手に飲み食いしておいて安物だなとか呟くので店主からすれば冗談じゃないだろう。だが、その店主も今や肉塊の一部だ。ずっと呪詛のような呻き声が肉塊の方向から微かに聞こえているが、その声のひとつがここの店主のものかもしれない。
「で、てめェは何故そんな体をしている?見事な形だ。綺麗だと言っていい」
「綺麗?これが?こんなチグハグな体のどこが綺麗だって?」
「人間にはわからねェ価値観だろうが、完璧な女神像そのままの女が目の前に現れたのを見つけたくらいの感覚だと思え」
サラッとサンジの姿が綺麗だと言われ、悪魔との決定的な感覚の違いを覚えるが溜息とともに話す。
「おれの父親は隣国の国王サマって奴でね。奴は自分の子供にどの国と戦っても負けない強さを求めた。それでてめェの子供を遺伝子操作して妻に産ませたが、一人だけ不完全な子供がいた。それがおれだ。回復力もある、怪我をしても治りは早い。だが、生まれついての強さに欠け情を持ち愛情を持ってた。その上繁殖能力に欠けた男でありながら女としての性器を持つ息子。で、ポイってわけだ。わかったか?」
「なるほど、生物学としての科学者ってところか。てめェの親には興味はねェが、そいつもバカだな。これだけの美しさを簡単に捨てるなんざ考えられねェ」
「てめェ嫌味か?」
思い出したくもない生まれを語ったところでマジマジと見つめて褒められ眉間に皺が寄る。が、ローは至って真面目らしくサンジの顎を掴み顔を角度を変えさせ肩やら腕やら胸板やらを無遠慮に触った。
「オイ!!」
「うるせェ、もう少し見せろ。それにしてもここまで見事に作れる人間がいるとはな
……
そいつは本当に人間か?悪魔だと言われた方が納得する美しさだ。つくづく捨てるなんて惜しい」
「てめェこのクソ野郎」
「
……
怒ってるのか?何故だ。こんなに綺麗だって褒めてんだろうが」
額に血管を浮かせ今にもキレそうに睨むサンジを心底意味がわからないという様子で見るロー。なるほど、確かに人間じゃない感覚だと納得して肩を落とすサンジ。ローにはカントボーイという肉体のサンジは完璧な美しさらしい。
「てめェまさかそれで口説いてるとか言わねェだろうな」
「口説く?何故だ。何故眷属になると同意した奴を改めて口説く必要がある」
「だから!!
……
あー、もういいや。すっげー疲れる。キレるだけ無駄な感じだ」
「よくわからねェが忙しい奴だな。人間てのは何でそうも感情で話すんだ。理屈立てて話せ」
「おれにはてめェの方が言ってることがわからねェよ」
肩を落とし脱力しきって言い返すサンジに蒸留酒をラッパ飲みをして飲み干したローが瓶を置く。食事もあっという間に空になっていて溜息をつきグラスに注いだワインを飲み干す。
「お前が何に納得できねェのかは知らねェが、おれはお前が気に入った。サンジ、来い。この町を出る前にてめェをおれの眷属にする」
立ち上がって宣言したローがどこへ行くでもなく指で招くので立ち上がって近付けば左胸に当てられる手のひら。何をするのかとローを見ると、まっすぐ見つめて、一言。
「少々刺激が強いだろうが気を楽にしていろ。すぐ済む。お前は何があっても黙ってされるままになっときゃいい」
何をする気なんだと、首を傾げたところでトンと押される左胸。ポンとそこから心臓が零れ落ちて左胸に穴が空く。
目を見開き言葉にできない驚きに狼狽える。が、意識はあるし体の感覚もそのまま。手は動くし足の指すら動かせる。
何が起こっているのかと狼狽えていると、ローが大きな口でサンジの心臓を一飲みした。
食った。コイツおれの心臓を食いやがったと思っていると、サンジの肩を掴み口付けて舌を絡めてくる悪魔。コイツは何をしてやがると怒りさえ覚えていると、長々と交わした口付けを終えローが離れた。
自由になって驚き慌てて心臓が抜かれた位置に触れるが穴など空いていない。服を捲り上げ見てみると、穴が空いていた場所はきちんと埋まっていた。
「お前の心臓をおれが受け取って代わりにおれの唾液をお前に飲ませて契約は完了した。もうお前自身には心臓はねェが心配はいらねェ。おれが存在ごと消えでもしなきゃお前は死なねェ。つまり、てめェはもうおれの眷属として人間じゃない、不死の存在になった。これでお前は悪魔の眷属だ」
「は?」
「お前の心臓は眷属としての契約の代償にもらった。だからてめェは今この瞬間から人間じゃねェし、死なねェ」
「えっ!?ってことは、つまりこの左胸は
……
」
「ああ、お前に飲み込ませたおれの唾液から形成してる。そのうち馴染むはずだ。生殖能力はここを出て次の町に着いたら整えてやる。行くぞ、王都に戻って教会に悪魔の報告をする」
「待て待て待て!!聞いてねェぞテメー!!」
「
……
言ってわかるのか?説明してさっきまで人間だったてめェに理解できる仕組みだとでも?」
「ぐぁあああああ!!腹立つ!その通りだがすっげームカつく!!だぁあああ!?おれが爆発した!?」
「おい、少し落ち着け。まだおれの唾液が定着してねェ。てめェに発生した能力が安定するまで下手なことをするな」
「うるせェよ!おれにも何がどうなってんのかわからねーんだよ!!」
突然説明もなくされたことの怒りから怒鳴り地団駄を踏んでいると爆発するわ燃えるわでサンジ自身驚く自身の変化。呆れたように溜息をついたローに肩に担がれると、サンジは混乱が治まらないうちに王都へ戻る旅路へと強制的に連れていかれるのだった。
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