すだ
2025-08-22 22:18:26
4361文字
Public 婿スバカグ
 

呪符の練習には気をつけて

舞手カグヤと婿スバル。
絆レベル4くらい。
呪符の練習をしていたはずなのに、いつの間にか取っ組み合いになっていた
付き合ってない舞手カグヤと婿スバルの話。
イカルガとヒスイが出てきます。
#スバカグ

 夏の里に降り立つと、熱気と湿気がカグヤを襲った。息を吸い込むと熱と同時に感じる磯と深緑の香り。今日も空は雲ひとつ無いかんかん照り。やはりここは、寒いのが苦手な彼女の幼馴染にぴったりの場所だ。
 畑の様子を見たり里の人に困ったことはないか聞き回った後、クサツ旅館で温泉に浸かりたいと言うモコロンとは別れ、スバルに会えないかと『舶来雑貨 風切羽』に足を伸ばす。
 だが、そこに目当ての人はいなかった。
「おや、カグヤちゃん。こんにちは。今日も精が出るね」
 店の主であるツバメから声をかけられ、こんにちは、と挨拶を返す。
「あの、今日はスバルは?」
「ああ、今日はあっち」
 ツバメが指した方に目をやると、ヒスイとスバル、イカルガが集まっているのが見えた。
「興味があるなら行ってご覧」
 そう言われたので、ツバメに会釈をしてからカグヤはスバルたちの元へと向かった。


「なってないね。やっぱり改名した方がいいよ」
「いやぁ、改名は勘弁してください」
「呪符の制御が不安定なんだよ。これじゃあ標的を攻撃しても大した威力が出ない。イカルガ様、お手本をお願いできますか?」
「ヒスイの頼みであれば仕方ありませんね」
 そう言ってイカルガが軽く腕を振ると、炎の呪符により藁人形が激しく燃え上がった。「おおー!」とスバルが感嘆の声を上げる。火の手が強いことに焦ったカグヤは、とっさに傘の神器で消化した。
「おやカグヤ。来てたのかい」
 振り返る3人にカグヤはお辞儀した。
「こんにちは。すみません、お邪魔してしまって。何をしてるんです?」
「ああ、スバルに呪符の扱い方を教えてるんだよ。ひと通り武芸は仕込まれているものの、呪符はあまり上手く操れないと言うからさ」
 ヒスイに言われスバルが頭をかく。
「オレは狩人ですし……
「黙らっしゃい! 折角呪符の扱いを知っているんだ。物理攻撃が効きにくい相手には有利になるし、覚えておいて損はないよ」
「はい」
 ヒスイにぴしゃりと返されスバルは項垂れた。
「よし、じゃあさっきの復習からだよ。そう言えばカグヤ、アンタこれから予定は?」
「え? いえ、特にないですけど……
「なら、あんたも一緒に練習していきな」
「私もですか?」
「アンタもスバルほどじゃないけど酷いもんだよ。精進しな!」
「わ、わかりました」
 勢いに押し切られ頷いたカグヤを満足気に見遣った後、ヒスイはスバルに声をかけた。
「丁度いい、スバル。アンタがカグヤに呪符の扱いを教えてやりな」
「え? オレが?」
「そうさ。教えるのは勉強になるよ。自分が得た知識を確かなものにできる。さっきアタシが教えたことをこの子にも教えてあげな」
「はい、やってみます」
「ああ。アタシはしばらく店の様子を見てくるからね。サボるんじゃないよ!」
「はいっ!」
 釘を刺され、スバルの背中が伸びる。あれは多分、昔オババにしごかれたときのことを思い出しているな、とカグヤは苦笑いした。
「では私も席を外します。丁度昼どきですから何か腹に入れないと。二人は続けますか?」
「あ、はい。お付き合いありがとうございます、イカルガさん」
 スバルに礼を言われたイカルガは咳払いをした。
「別に。呪符の扱いは繊細さが求められます。何かあって他の者に危害を加えるようなことになれば、陰陽寮の名にも傷が付きますから」
 そして、そっけなく言い放つとクサツ旅館へ向かう。イカルガに聞こえないよう、スバルは声をひそめカグヤに話しかけた。
「イカルガさんって何だかんだ言って面倒見がいいよね。この間コタロウくんに頼まれて、困った顔をしながら式神相撲してた」
「式神相撲……。何だか楽しそうです」
「よし、じゃあオレたちは続けようか」
「はい」