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傘道
2025-08-16 13:12:10
2265文字
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CPなし
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幸せを求めて
夢と痛みの狭間 (
https://privatter.me/page/687ae5cb8b485
)の続きです。
救われない暗い話です。
夢から醒める。
みんなでパンケーキをたべた。
夢から醒める。
痛めつけられて、お薬を飲んだ。
夢から醒める。
みんなに出会えた。
夢から醒める。
おれはしあわせです。
ライトは目を覚ました。
身体が動かない。
目の前に仲間が居る。
手を伸ばそうとした。
しかしベッドに拘束された身体ではそれはできない。
仲間が居るのに手を伸ばせない。
仲間がどんどん遠ざかる。
ライトは静かに涙を溢した。
そして獣のように咆哮をあげて、泣き叫んだ。
ビリーは意味もなくノックをした。
返事はない。
当然の結果にため息を吐くこともなく、鍵を開けて拠点に入る。
不気味なほど静かな空間。
持ってきた食材をリビングに置いて、寝室の扉を開ける。
ライトがベッドの上で虚な目をして横になっていた。
拘束しているベルトを解こうと抵抗したのであろう。
手首には赤い跡ができていた。
ぶつぶつと何か呟き続ける光景はもう見慣れたものだ。
みんなに会いたい。
お薬が欲しい。
痛めつけて。
もう聴き慣れた言葉が壊れたラジオのようにライトの口から漏れ出ていた。
ライトが誘拐されて解脳水を飲まされ監禁された事件。
救出後に儀玄により解脳水に含まれていたミアズマの浄化が行われ、エーテリアスになることは防げた。
しかし心の傷は治らない。
ライトも最初は何かに耐え続けるような素振りを見せながらもなんとかチャンピオンとしての責務を全うしていた。
だけど限界が来たのであろう。
もうチャンピオンどころかカリュドーンの子の雑用すらできなくなってきた。
ずっとうわ言を呟き続け、自傷行為を続けるライトを見てビッグ・ダディがビリーに相談した。
次のチャンピオンが決まるまでチャンピオンとして戻ってきてくれないかと。
ビリーは郊外に戻り、チャンピオンとしての責務を果たしつつライトの面倒を見ることにした。
ライトの面倒はビリー自ら引き受けた。
それはビリーの贖罪だった。
助けに行くのが遅れた自分への罰だと。
ライトの面倒を見るのは大変だった。
ベッドに縛りつけないと壁に頭を叩き続けるなど自傷行為をする。
食事は摂らない。
ずっと喚き続けて薬を求める。
眠りも浅く、少しの物音で起きて泣いてしまう。
それでもビリーはライトの面倒を見ることをやめなかった。
「ライト。」
伸びてぐしゃぐしゃになった深緑色の髪を撫でた。
ライトはこちらを見ない。
眠れていないのか隈が酷い。
「今からパンケーキ作ってやるから待ってろ。」
ライトは食事を摂らない。
しかしパンケーキだけは別だった。
たまたま買ってきたパンケーキにライトが反応して試しに与えたところ、素直に食べたのだ。
何も食べないよりはいい。
味見できないビリーはどんな味かわからないけれど、蜂蜜とバターを乗せたパンケーキをライトは口にするのだ。
もう何度も作ったパンケーキ。
粉を振るい、卵と牛乳を入れてダマができないようかき混ぜる。
そして十分熱したフライパンにバターを入れて、生地を注いだ。
狐色になったパンケーキをお皿に移して、蜂蜜とバターをかける。
程よく冷めたのを確認してから寝室に持っていく。
拘束を外して、パンケーキを目の前に持っていくと手づかみでライトは食べた。
「ラティーナ、美味しい。」
パンケーキを作ったのはビリーなのに、ライトの中では仲間が作ったと思い込んでるようだ。
それでもよかった。
食べてくれるなら。
お風呂に入れてライトの身体を洗った後、ベッドを整える。
整え終わった後、リビングに向かうと椅子に拘束されたライトが居た。
これから寝かせないといけない。
ライトを夢の世界へ連れていかないといけない。
だから痛めつけないといけない。
そうしないとライトは眠れなくなってしまった。
ビリーはライトの首を絞めた。
ライトの脚がバタついてもがいている。
酸欠直前で首から手を離した。
息を整える隙も与えずに腹を1発殴る。
今日はどのくらいで寝てくれるだろう。
虚しい気持ちでビリーはライトを殴り続けた。
そんなライトにとってもビリーにとっても苦痛な日々は終わりだ。
カリュドーンの子の次のチャンピオンが決まった。
ビリーは自分とライトの私物を売り、ライトの拠点に遺書を残した。
そのまま誰にも告げずにライトを背負ったまま、ラマニアンホロウに入る。
ミアズマが活性している場所にライトを下ろしてミアズマを吸わせる。
ライトの目に薄暗い光が灯る。
「ライト、我慢させてごめんな。幸せになれるお薬だぞ。」
ビリーは優しくライトの頭を撫でながらミアズマを吸わせた。
「デイン、ニック、ラティーナ
…
」
ようやく会えた仲間たち。
喜んでいるライトを見た後、ビリーは離れた。
そして銃を構える。
ミアズマを大量に吸い込んだライトに異変が起きた。
咆哮をあげて結晶が身体中に現れる。
エーテリアスになる直前にライトはビリーを見た。
「パイセン
…
」
ようやく自分を見てくれた。
それだけでビリーは救われた気分になった。
完全にエーテリアスになった後輩がビリーに襲いかかる。
ビリーの右腕をもぎとった。
機械人は抵抗せず、エーテリアスに抱きしめられコアを撃ち抜く。
「仲間のところ行くのに、ひとりぼっちはさみしいだろ?俺が一緒に行ってやるから。」
結晶として消えていくライトの目の前で、ビリーは銃で自分の論理コアを破壊した。
ラマニアンホロウで転がる機械人の残骸。
彼らは幸せを求めて旅立った。
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