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傘道
2025-07-19 09:24:43
1914文字
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夢と痛みの狭間
znzrの解脳水を飲まされた🔦さんの話。
解脳水の話なのでver2.0のストーリーをやってから読むことをオススメします。
夢から醒める。
ふわふわとした気分と血の匂いで眩暈がする。
身体が重く感じて動かない。
幸せになれる薬。
そう言った男は恍惚の笑みを浮かべて、青年の顎を持ち上げ試験管の中身を飲ませた。
虚な翡翠色の瞳から涙が溢れる。
そして薬を嚥下した後、強烈な眠気に襲われ夢の世界へ旅立った。
夢から醒める。
「団長、そろそろ起きる時間だぞ!」
快活な声がアラームの役割を果たして、意識が覚醒する。
ふわふわとした毛布の感触が名残惜しいが、ライトは起きた。
「ラティーナがパンケーキを作ってくれたから、みんなで食べよう。」
着替えていると穏やかな声が扉の向こうから聞こえてきた。
甘くて香ばしい匂いの正体はパンケーキだったのかと納得しながらシャツのボタンを留める。
「ラティーナだけじゃなくて、俺の妹も頑張って作ったんだぜ。」
そうか、デインの妹も作ったのか。
扉の向こうでみんなが待っている。
パンケーキにはバターと蜂蜜をたっぷりのせて。
砂糖2個とミルクを入れたコーヒーと一緒にいただこう。
甘くてふわふわした気分になったライトは笑顔で扉を開けた。
夢から醒める。
痛みで目が覚めた。
全身に感じた痛みで呻き声をあげると、男がこちらを向いた。
幸福が足りていない。
そう言って液体が入った試験管を持ってきて、飲ませた。
拒絶しようにも椅子に縛られていて振り払うことができない。
鼻も摘まれ、呼吸ができず苦しくて幸せになれる薬を飲み込んでしまった。
再び、夢の世界へ飛び立った。
夢から醒める。
クレヨンの匂い。
「ライトさん、どうしたの?」
お絵描きしていたデインの妹が首を傾げる。
ぼうっとしていたと素直に伝えるとデインの妹へ頬を膨らませた。
お喋りしながらお絵描きしていたのに、話を聞いていなかったと知って拗ねてしまったのだろう。
悪かったと謝りながら、キャンディを渡すとぱあっと明るい笑顔を見せた。
ストロベリー味のキャンディを口に入れる姿は愛らしい。
「絵完成したんだよ!お兄ちゃんと
…
ラティーナお姉ちゃんと
…
ニックおじちゃん!あ、ちゃんとライトさんも居るよ!」
キャンディを食べた後、満面の笑みで絵を見せる少女。
クレヨンで塗られた絵は確かにみんなの特徴をとらえている。
これは将来すごい画家になるかもしれない。
すごいなぁと言いながら頭を撫でると、少女はさらに笑顔を深めた。
みんなも喜ぶだろうなぁと扉の向こうを見つめる。
早く帰ってこないかとどこかふわふわした気持ちで帰りを待った。
夢から醒める。
殴られ、薬を飲まされる。
夢から醒める。
デインとエールを呑みながらたわいのない話をした。
夢から醒める。
脇腹にナイフを刺され、薬を飲まされる。
夢から醒める。
煙草を吸おうとしたところをニックに見つかって、呆れた表情でキャンディを渡された。
夢から醒める。
首を絞められて、薬を飲まされる。
夢から醒める。
ラティーナと一緒に買い出しに行った。
夢から醒める。
顔に水をかけられて、薬を飲まされる。
夢から醒める。
デインの妹と一緒に犬の散歩に行った。
夢から醒める。
幸せになれるお薬を飲んだ。
夢から醒める。
みんなでパンケーキを食べた。
夢から醒める。
幸せになりたい。
夢から醒める。
おくすりください。
夢から醒める。
おれはしあわせです。
夢から醒める。
夢から醒める。
夢から醒める。
夢から醒める。
夢から
…
「ライト!!しっかりしろ!」
ビリーは廃墟の奥で椅子に縛られたライトを揺さぶった。
ジャケットとマフラー、サングラスは別の場所に置かれており、今のライトはインナーとズボンというラフな服装だ。
だからこそこびついた血やあざが痛々しく目についた。
監禁されて拷問でも受けていたのだろう。
椅子の周りには空になった試験管が無数に転がっていた。
ライトを拉致した不届者を始末したビリーはライトの拘束を解いた。
虚な翡翠色の瞳が開く。
「いたい
…
なんで?おれはしあわせなのに
…
」
「ライト?」
歪な笑みを浮かべてライトは痛みに震える。
「おくすりください、しあわせなんです
…
もっとしあわせになりたい
…
」
幸せになれるお薬を求めるライト。
何かの中毒症状になっていると判断したビリーは、ライトが言っている幸せになれるお薬を探した。
飲ませるためではない。
治療をする時に、どの薬を飲まされたか知っておいた方いいと判断したからだ。
薬を見つけて、ライトを抱き抱える。
うわ言を呟き続ける青年を抱えながらビリーは幸せなんて存在しない廃墟を去った。
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