【可惜夜廻*爾】其の壱

『「すみません、よくわかりません。」』
現行未通過×
※夜廻パロ




 目を覚ました。木製の天井を眺めながら、片手を首に当てる。擦り、撫で、軽く締め、呼吸が正常に行われていることを知る。少し遅れて、手が動いた事に違和感を抱く。瞬きをして周囲へ気を配れば、鈴虫の音が耳に届く。

 カンジはそれらが、間違いなく異常であることを理解していた。何故なら自分はあの時、確実に首を吊って死んだはずなのだから。


……カンジ?」


 名前を呼ばれ、顔をそちらに向けた。驚愕と歓喜を綯い交ぜにした表情で、愛しいソウゲツが立っている。彼は視線が絡んだ瞬間、片腕でカンジを抱き締めた。強く、強く、決して離さないと誓うように。


「よかった、目が覚めたんだな。本当によかった」


 何度も言葉を溢しながら、ソウゲツは肩を震わせる。彼の温度が、少し熱い体温が伝わってくる。彼は生きていて、どういうわけか自分も生きている。恐怖、動揺、今すぐまた永い眠りを求めたくなる衝動。けれど愛しい人の、自分のために片腕を失った人の前でそう告げられる程、カンジは狂気に満ちていなかった。

開いた襖の向こう、外に繋がる窓の中。

雲に隠され朧気な月が、夜がまだ始まったばかりであることを語っていた。