おがら
2025-07-29 03:00:52
1235文字
Public バキサム
 

Sweet movie night!!

🦾🪽 全年齢
付き合ってない、バキ出てこない、サムの独白。
月いち36の日で公開

 
 不定期に訪れる今日のイベントを年甲斐もなく楽しみにしているというのは誰にも知られたくない俺の秘密だ。
 フラッグスマッシャーズの一件以来、バッキーとは任務を共にしたり、空いた時間に家や外でも飯食ったりとそれなりに友人のような位置に落ち着いている。
 その雑談の中で俺が映画の話をするといつも首を傾げたり、本は読んだことがある。としか言わないので今はサブスクでお手軽に観れるのだから観たらいいと言ってもやり方がわからん。と一蹴されてしまえば、この爺さんに教えるよりも一緒に観た方が早いと思ったのだ。
 そうして月に一度でもない、本当に時間が合った時にだけ男二人の映画観賞会が行われるようになったのだ。観る場所はもちろん俺の家。
 ブーンと機械音を低く鳴らしながら焼かれていくブラウニーはこのイベントの常連となったおやつだ。映画にはポップコーンが定番だが、どうにもあの超人には物足りないらしい。美味いには美味いが、小腹をほんの少し満たすくらいにしかならないのだとか。ポップコーン自体は気に入っているから用意するのをやめはしないが、見ている最中に腹の虫がなっては集中出来ないと思い次の回からこうしてブラウニーを用意することにした。
 自分で焼かなくてもいいじゃないか。とは俺自身が思っていることだ。これについては考えるのをやめた。わざわざ買いに行くのが面倒だとか、市販のは俺には少しカロリーが高いとか、ばあちゃんのレシピを元に自分で作った方が美味いだとか、そんなのが理由でいい。
 一度貰い物(信頼できる軍の人間からだ。)を出した時に俺が作ったのじゃないのか。と不貞腐れたような顔をしたバッキーを見たからだとか、そういうわけではない。決して。
 そもそも貴重な時間を割いてまで一緒に映画を見る理由なんて、ない。バッキーが現代のことに疎くともスマートフォンを使いこなせているし、少し教えれば自分でサブスクを使って映画を見るなんてこと出来るに決まっているのだ。聞いた話によるとマッチングアプリは使えているみたいだしな。
 だからこれは俺が映画に託けてバッキーと過ごしたいという気持ちの方が強い。数か月前とは違い、メールに返信もするようになったし電話だって出る。周りの人間ともそれなりにうまくやっていけているようだし、カウンセリングだって必要なくなった。
 バッキーにはもう手助けはいらないのだとわかっていても、バッキーのことを知りたいと思っている自分の気持ちに嘘はつけない。何に感動して、何に憤りを感じて、何を見てあの暗い日々を思い出して苦しむのか。全てを知りたいわけではないがその柔い部分に触れたいと、見たいと思ってしまっている。
 だからこうして甘い匂いを部屋中に漂わせて、こんな風になってるのは全部ブラウニーのせいにしてしまおうとするそんな悪あがきくらいは見逃してほしい。
 この気持ちが本当はどうなのかなんて、今はまだ知らなくてもいいだろう。なぁ、バッキー。