おがら
2025-07-06 15:25:31
3635文字
Public ホアサム
 

続きはあっちの家で。

付き合ってる🪶🪽 全年齢
🪶の家に行ったら🪽グッズに溢れていた話。
誤字脱字は気が向いたら直します。

「ここが俺の家!どーぞ!」

 じゃーん! と効果音が付きそうな勢いで広げた手を玄関ドアに向けたホアキンはその手の中に両翼のキーホルダーを輝かせている。それはまだサム・ウィルソンがファルコンとして活躍していた時にアベンジャーズのグッズとしてどこかから出されたものだ。世界でもそれを持っているものはそう多くはない。何せそもそもの在庫数が少なく出回ったのはごく僅か。ホアキンはそれをきちんと定価で購入していた。
 家に入ると出迎えるのはキャプテン・アメリカの盾を模したウェルカムマットとサムのスーツの色をしたサンダルだ。ホアキンの家は土足厳禁。理由はもちろん、サムのグッズが汚れるから。

「悪いけど靴脱いでね。このサンダル履いて!あ、新品だし、サムのサイズに合ってると思うから。」

 さっさと室内に入っていったホアキンは片付けたかなあ~と大きな独り言を言いながらぱたぱたと走り回っている。空でも陸でもせわしないなとサムは心の中で呟きすっぽりとハマったサンダルに些か居心地の悪さを覚える。ピッタリ過ぎるだろ。
 廊下を進むと壁には誰がいつ撮ったのかわからない、ファルコン時代の写真や、キャプテン・アメリカとして公的に撮った写真が額縁に入って飾られている。左右でどちらかの時代に分けられているのはホアキンの几帳面さだろうか。
 突き当りを曲がった部屋に入るとリビングだったようで奥のキッチンだろう場所から座っててー!と大きな声が聞こえたためサムは言われた通り二人掛けほどのコンパクトなソファに腰かける。

「はぁ……。」

 溜息を零したサムの隣にはこれまた盾を模したクッションと、テーブルにはデジタルの置時計。これもキャプテン・アメリカの柄だ。ふと首を回すと少し高い位置の棚には大小様々な写真が。サムとホアキンの写真はサムのオフィスに飾ってあるのと同じものもあるし、お互いスーツ姿で撮ったものもある。そこまではわかる。だがなぜサムが一人で撮られた写真が一番大きく高い場所に飾られているのか。しかもそれは公的な写真ではなく、ホアキンが様々な場面で自身のスマートフォンで撮ったいわばサムのプライベートな写真だ。もちろん目線は全てカメラを向いているから隠し撮りではないし、サムのいつ撮ったものか何となく覚えてはいるが。
 ――付き合っているなら、ツーショットを一番いいところに飾れよ。
 サムは思わずそう思ったが口に出すのは止めた。これではホアキンを喜ばすだけだとわかっているから。

「お待たせ。ちょっと酸味の強いコーヒーだよ。カフェインレスだから今飲んでも大丈夫!」
「あぁ、ありが……
「サム?」

 ホアキンが手渡してきたのはやはり盾柄のマグカップだ。真っ白なマグカップに盾が表裏のデザインでプリントされている。表はまだしも裏側はあまり公にしていないというのに、腕をはめるバンドさえ忠実に表現されているのは一体どうしてなのだろうか。とサムは頭を抱えたくなる。いや、歴史のある立派な盾なのだからどこかしらに資料があってもおかしくはないのだが……
 マグカップを受け取らないサムにホアキンは首を傾げているのはサムは改めてお礼を言って受け取る。コーヒーを一口飲むと確かに少し酸味の効いた味だ。悪くない。ホアキンを伺うと彼のマグカップはファルコン時代の翼、しかも最初期の一機しか残っていなかったそれされ激動の戦闘の中で壊されてしまった翼のデザインだ。武骨で、色も特に入っていないそれ。
 そもそも機密資料であったそのデザインがなぜマグカップに印刷されているのか?ホアキンに聞けば長い長い話になりそうだとサムは今日何度目かの溜息を口の中で漏らした。

「ね、さむ。」

 手の中からマグカップを抜き取られ、テーブルに小さな音を立てて置かれたそれを気にする間もなくホアキンが距離を詰めてくる。そもそもコンパクトなソファに男二人が座れば必然的に膝が触れている距離だったのだが、ホアキンは身体の左側をピッタリと触れさせ、サムの空いた右手をきゅっと握ってくる。
 まるでティーンのような触れ方をしてくるホアキンを素直にかわいいと思いながら手を握り返してやるとワォ、と新鮮に驚いてくるのは何故なのか。もうすでに色々と済ませているのに?

「サム……。」

 顔を上に向けたホアキンはじぃっとサムの瞳を見つめる。深いブラウンの瞳の中にはホアキンだけが映っていてそれを認識するとまるで天にも昇るような気持ちだ。ホアキンの家で、ホアキンだけのパーソナルなスペースにサム・ウィルソンがいて彼が自分を見つめ返してくれている。改めて認識するとホアキンはほとんど無意識に唇を重ねていた。
 ホアキンが押して押しまくって開始した交際だったが、サムからの愛を感じてないなんて言ったら確実に引っぱたかれるだろう。そんなこと思ってもないが、それくらいサムはホアキンをきちんと愛してくれている。憧れと恋と愛をない交ぜにした感情をぶつけまくったのにサムはそれぞれにきちんと向き合ってくれたし、付き合って、夜の営みでもサムを受け入れる側ではなく肉体全てを愛したいという要望も受け入れてくれた。
 これにはホアキンもかなり勇気が必要だったし、サムになら全て身を預けてもいいとも思ったが妄想でも本人を前にしてもやはりサムをベッドに縫い付けてその豊満な身体に馬鹿みたいに腰を突き上げる想像しか出来なかったのだ。だがそれを独りよがりにせず、きちんと事前に相談出来たのはいいことだとサムは褒めてくれた。
 そうして何度か身体を繋ぎ合わせていて、今日もそういう日だ。お互いそう思って家に招き、招かれているのだからこうしてキスをするのも不思議なことではない。角度を深くしようとホアキンがサムの頬に触れたところでスッとサムの顔が離れていく。

「サム……?」

 何か気に障ることをしてしまっただろうか。途端に不安な顔を浮かべるホアキンにサムは少々心が痛むがふぅとひとつ息を吐いてから真剣な声色を作る。

「ホアキン、今日はもう寝るだけにしよう。」
「え、ぇ? ええぇぇぇ――!?なんで!?」

 こんなにいい雰囲気だったのに!?ホアキンは続けて叫ぶと繋いだままの手をぶんぶんと上下に振る。傍から見るとまるで駄々をこねる子どもだ。――ほぼ変わらないが。

「あのな……。ここはお前の家だから色々グッズを集めるのはお前の自由だ。それを止めろとは言わないが俺には居心地が悪いんだ。」

 四方八方、ファルコンまたはキャプテン・アメリカのサム・ウィルソンまみれだ。ホアキンが好いてくれているのは素直に嬉しいが、写真やグッズとはいえキスの最中も自分に見られていると思うと興奮するものも興奮しない。サムは自身を誇りに思っているが自分に見つめられて興奮するほどナルシストではない。

「ある程度覚悟はしてたがここまでとは思わなかった。これだけあるとここにはもう来れないから今度からうちに来い。それでいいか?」

 ホアキンは眉を下げてまるで叱られているような表情でサムの顔を見ては視線落とし、きゅっと唇を結んでいる。いつもはきゃんきゃんと噛みついてくるくせにこんな時ばかりは大人しい。サムの言葉を聞き漏らさないように、かつしっかりと理解しようとしている。
 恋人の家に来ないというのは中々の宣言だというのはサムも理解している。言葉をかみ砕くとホアキンの家で触れ合いなりセックスはしないという意味であるが。

……わかった。じゃあ一緒には寝てくれる?」
「あぁ、もちろん。」
「良かったぁ。それもダメって言われたら俺本当に泣いちゃうよ。」

 へらりと笑ったホアキンに謝罪の意味を込めて頬にキスを落とし、頭をぽんぽんと撫でると繋いでいた手は放してぎゅうと抱き着いてくるのでサムは当たり前にそれを受け止め、背中もぽんぽんと叩いてやると首元に顔を埋めたホアキンはううぅ~!と唸っている。
 お互いそういう気でいたのだ、ホアキンがいま必死に納得して高ぶりかけた気持ちを落ち着かせようとしているのはサムにも痛いほど理解できる。その証拠に腰は引っ付けてこないのが何ともいじらしい。

「ベッド行くか?」
「ねぇ!今そういうこと言わないでよ!!」
「わるいわるい。」

 がばりと顔を上げたホアキンはほんの少し顔を赤くして抗議してくるので両手を上げて他意はないことを示す。折角がまんしてるのに。とぶつくさ呟くホアキンは一度深く息を吐き出すとソファから立ち上がってコーヒーカップを片付けるとサムに呼びかける。

「サム、歯磨いて寝よ。新品の歯ブラシあるからさ。」
「お。悪いな。」

 ホアキンに導かれてバスルームに行くとそこにも所狭しとファルコンとキャプテン・アメリカグッズがあり、やはりおっぱじめなくて正解だったなと改めて思うサムなのだった。