もご
2025-07-28 21:37:41
1810文字
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【my lord】(鉄追)

※鉄追。いろいろ都合のいい設定なので雰囲気で読んでください。


「我が王」

真黒の瞳の男が、誰かに向けてそう囁く。
……いや、違う。男の瞳は黒くはない。どころか、練り上げて刷ったばかりのインクのように、鮮やかな青色だ。
天高く広がる青空、潮風を運ぶ海、煌めく青の宝石。そのどれとも違う。
何度も何度も塗り重ね、周囲からひどく浮いてしまったような、そんな、濃く、重たく、だからこそ鮮やかな青の瞳。
だというのに、自分はその男の瞳を「黒い」と思った。
なぜだろうか。

「我が王よ、」

とりとめもないことを考えていると、男はもう一度、同じ言葉を囁いた。
しかし今度は、その言葉の後にもう少し何かを続くものがあった気がする。
誰に向かって話しているのだろう。不思議に思っていると、ふわりと自分の左手が持ち上げられた。
それは目の前の男が自分の手を恭しくとったのだと理解したし、その時になって初めて自分が砂漠の上に横たわっているのだと思い出した。男は自分の手に、まるで忠誠の口付けをするかのように唇を寄せた。
……彼は誰なのだろう。
まるで数百年、いや数千年の歳月、自分に付き従っているかとすら思わせるほどの言葉。その響き。
そんな想いを向けてくるほどの相手が、果たして自分にいただろうか?

「さあ、これを」

しばらくの間、男は自分の左手に口を寄せていたが、やがて自分の左手に何かを乗せた。
…………
「それ」が何か理解し、微睡んでいた自分の瞼が開いたのがわかった。
この、重みを自分は知っている。滲みぼやけた記憶の奥底で、確かに覚えている。
儚く小さな銀色の雫。触れれば破けてしまいそうで、けれど確かなぬくもりを宿した柔らかな「それ」は。
力の入らない体をなんとか動かし、男の顔を見つめる。
すると男は、ただそれだけが何にも勝る至福とばかりに、すうっと瞳を細め笑った。

「安心しろ、誰にもお前の旅路を邪魔させはしない。どんな夜渡りにも、どんな夜の王にも。そして、お前自身にさえも」

銀色の雫を持った自分の手に、男が優しく自らの手を添える。
そうしてゆっくりと、雫をこぼさぬように、自分の胸の上まで左手を導く。
男が囁く。柔らかく低い彼の声は、優しさに満ちている。

「お前はこれから先、何度でも王になるだろう。何度でも戦い、何度でも救うだろう。誰が見届けなくとも進み、誰に厭われようと決断する。その背を追う者がいなくとも、ただ独りで夜空へ旅立つだろう。……だが」

銀の雫が、男によって胸に押しつけられる。
知っている。自分はこの光景を覚えている。
この為に「彼」に依頼したことも。もしも夜の王を倒し自分が力尽きた時、雫を取り込む力さえ残っていなかった時は。

その時はーーーーー


ーーーけれど、では、何故だ?

何故、もう依頼を果たし、元の世界へ戻ったはずの「彼」が、また自分に雫を捧げようとしている?
「彼」を見た。すると、彼の黒い瞳がいっそう細くしなった。
ーーああ、微笑んでいる。そう感じた。
まるで愛しい何かをみるような瞳で。

「だが、安心しろ。お前が王になるその時を、俺は何度でも見届けよう」

……ああ、そうか)
ようやく気づいた。男の瞳を「黒い」と思った理由を。
男の瞳は、やはり青色ではなかったのだ。
あらゆる色が混ざり合い、あらゆる色で塗り潰し、ぐるぐる、ぐるぐると、何度も何度も瞳の奥で全ての色が渦巻いて、どす黒く見えていたのだ。
自分は、知っている。そうだ、そうだったじゃないか。

その混ざり合った黒い瞳の向こうに、男が金色の刃を隠し持っていたことを。
その刃を奪い取ろうとして、自分は、自分は、自分はーーーーーー。

最後の力を振り絞り、男に手を伸ばす。だがあっけなく手は絡めとられ、男は愛おしげにもう一度口付けた。


「ああ、我が王、尊き王。我が唯一の、導きの王よ」


最期の囁きは、どんな祝福よりも純粋な呪いの言葉だった。



「夜の王におなりください」



end


脳内妄想
追跡者くん、ナメを倒した後に自分が力尽きてたら銀の雫を自分の体に取り込ませてほしいと鉄に依頼する

鉄了承。報酬は通貨数枚。追跡者はこれでいいのかと言ったが、鉄は構わないと請け負った

ナメ倒して鉄が追跡者を夜の王にする

鉄、夜を終わらせずに円卓へ帰還

最初に戻る

※細かいとこどうなってんの?はご都合主義でお願いします。