皆瀬茶太(シキゴウ全)
2025-07-27 22:17:54
4352文字
Public 海外ドラマ
 

【サンドマンS2バレ有ホブモル】愛の伝道師

ホブモルは純粋な友であり、王にとっての最初で最後で最高の友になったのでもう友愛であり、あの王の軽さならいつしか性愛になってもおかしくないし、幾星霜の先なら家族であり家族より近い存在になっていた唯一無二ルート確約な男を、ファーストインプレッションで掴んだのですよ。最高ですよねホブモル!!!!!!!もっといちゃつけ本編!!!!!友人だ~友人だー!と言うホブが最高なのですよ!!噛みしめろドリームの関係者ども~っ

というのを言いたかった小説です。



 「これは夢かモルフェウス」
「そうだ。ホブ・ガドリング」
 ここは俺の、夢の中らしい。
 モルフェウスが認めた途端、今の状況の違和感に気づく。
 以前もあったな、エリザベス一世とコンピューターは同じ世界に存在しない。
 今回は宇宙服無しで月面に立っている。さすがに人類も、そこまで進んでいない。
 なら、話は早い。
 しかも、まだ次の再会まで50年経っていない。
「丁度良い。お前、ちょっとそこに座れ」
 俺が指さした場所に、ポンと椅子が二客。間には小さな丸テーブル。このデザインは、サーの称号を持ったアーサー・チャールズ・クラークかな? 2001年宇宙の旅も、今やレトロ・フューチャー風になるのか。
「お前…………
 思いっきり眉根を潜めるので、俺は肩をいさめた。友人の間には不要な立場でも、そこまで肩の力を抜けられないようだ。
 600年かけて友人になったので構わない。
「『お前』が嫌なら、わが友よ、ちょっと話があるから付き合ってくれ」
…………あまり時間は無いが」
「要件は長くないが、せっかくだから何か酒はないのか?」
「そちらの招きの席なら、君が用意してみろ。出来るだろう」
「ふむ」
 一理ある。俺はレトロ・フューチャーな雰囲気に合わせた、ビール瓶を二本、下のクーラーボックスから取り出した。
 夢は便利で助かる。
「最近販売された復刻版てやつでな、俺は結構好きなんだ」
「そうか」
 俺がグラスも出さずに瓶ごしで飲むのを見てから、モルフェウスも真似をして瓶を傾ける。
 俺より上品なのは慣れてないのと、立場ってやつかね。品はあるもんな。あと、それに付随する色気。
「なんだ」
 俺の情報で作られているとはいえ、目の前の壮大な地球を見ずに、互いに視線を合わせる。
 横並びより向かい合う方が良いなと、俺は椅子を相手に向き直す。
 お前の顔を見るのが好きだなとは言わず、忙しそうな男為に、本題に入る。
「最近、やたらお前の知り合いとしか思えない奴らから声をかけられる。それは構わない。むしろ俺はお前の話がしたい。ただ、常に訳知り顔なのが気に入らない。そっちでどうにかならないか」
 モルフェウスは、先よりも深く深く、をっとそこまでいくと海溝になるぞという深さで、眉間にしわを寄せた。
…………誰で、どの程度だ」
「思い当たる奴が複数いて助かるなあ。
 やたら勇ましい両性愛者と言った女と、
 時代とそぐわない奇抜なファッションをしてテンションの高い少女のような女性。
 あとは、文面の合間にやおら人間の不幸を添える、つまりひと言多い体格の良い女性。
 あと、女性のようないで立ちと口調だけど性自認は不明な、見た目ゴージャスな男性。
 あとは……
「まだいるのか」
「黒髪ソバージュの女性。お前の姉さんと名乗った。今回の件に除外だが、言っておこうかと」
「そうか…………
 瓶をテーブルに置いて、モルフェウスは真っすぐに地球を眺めている。既に眉間は平らになっているが、心なしか肩を落としている。
 まだ居るんだと言うのは酷だろうか。
…………まだ居るんだろう」
「バレてたか。ええと、喋るカラスだな」
 モルフェウスは溜息と同時に
「マシューもか…………
 と言った後、こちらを伺った。
 他にもいるのかと言いたいんだろうが、安心してくれ。
「以上だ」
「ほかには?」
「ん?」
「他にはいないのか」
 首を横に振った事に嘘はないのを悟るや、モルフェウスはまた目を伏せた。
「そうか…………
「会いたい人はいなかったか?」
 モルフェウスは顔を上げ、俺の目を探る様に覗き込んだ。
 全く、こいつはまだまだ、人との距離感が下手だなあ。
 思わず苦笑すると、奴は首を傾げた。
「お前は言葉選びがへたくそで相手に対して不遜な分、嘘やごまかしが下手だからな。分かるんだよ、それに俺はお前の友人だしなっ」
 友人、をことさら強調してやった。
 そう。今回、忙しそうな男を呼び止めたのも、この俺がこいつの友人である事が理由なのだ。
 途中だったビールで喉を潤す。思いのままの世界では、ビールの温度も一定だ。
 つられるように、モルフェウスも呑んだ。飲食は不要らしいが、俺だけなのはつまらないと言えばつきあってくれる。
 こんな面白い奴と出会って、再会の約束が100年に一度だなんて勿体ないよなあ。一度はこいつの遅刻だし。
「そっちの会いたかった人は来てないが、次また誰か来たら言うよ。それが言いたかったんだし」
「来た奴らが何かしてきたか?」
 今更ながら、俺を頭の先から足のつま先までを観察する。
 ちゃんと心配してくれたらしい。友人として合格な態度だ。花丸をやろう。
「カラスからはお礼を言われたよ。
『主と友人になってくださいましてありがとうございます。わたくし、カラスとして感無量のあまり涙で文字通り烏の濡れ羽色となっております』
とかなんとか」
 腕を組んで目を閉じ、覚えている限りの事をつらつら言っった。目を開けたら、モルフェウスはまたしても、ため息交じりに呟いた。
「マシュー…………
 なあカラス。お前、もしかして、いつも主にこんな面白い顔させているのか?
 こいつはまだまだ、人間?関係の構築が天元を突き抜けるほど下手だ。
 だが、それだけの奴になったんだなあ。
 うん、今日のこいつとの会合も酒が美味い。
 モルフェウスは俺が一人で二本目のビールに手を付けているのを眺めてから、ゆっくりと口を開いた。
「他の奴らは何を?」
 俺は視線をそらせ、一寸考える。最初から言うことは決めていた。
「内緒」
…………ホブ・ガトリンズ」
「まあ待て。じゃあなんで時間を取らせたって言いたいんだろうが、続きは次の、俺の夢の中でだ」
「それは…………
 こいつは開いた口を閉じて、あからさまに躊躇いを見せた。
 しばらく俯き、やがて椅子に深く座っても、何も発しなかった。
 次の待ち合わせには行けないかもしれないと、遅刻の詫びを込めて来た時と同じ。
 ワインを共に飲んだ時と、同じ。
 もう会えないかもしれないと、650年の付き合いになる俺に告げたのを、また言うのを躊躇っている。
 俺が、こうして短い再会の度にすがるからだ。
 そうだよ、今回もお前にすがっている。
 100年に一度だったのに、遅刻をしたあの時から俺とお前は変わった。
 俺の最初の600年は、我がままに生きてきた。
 俺を友人だと認めてくれてからは、俺は我がままから、お前に臆病になった。
 これも伝わると良いな。
「モルフェウス。お前にとっちゃ瞬きだろう? もしくは二歩目か」
「ホブ・ガドリング、私は約束はもうできない」
 分かってるよ、でもまだ我がままな俺でいさせてくれよ。
「しなくて良いさ。だが、他の奴らが俺に会った時に何を言って何をしたか知りたきゃ、次の俺の夢で会う時だ」
 モルフェウスは、何度も何かを言いかけては止めた。
 何一つ事情を俺に言ってくれなくても、突き放しはしない。
 俺はお前のその顔で、優越感に浸るような男だ。
 お前が悠久の友として選んだ男なんだよ。
「じゃあ、またな」
 宇宙服のいらない、音も匂いもない宇宙で、ビールの味とお互いの存在だけ明瞭だった。

 それからモルフェウスは、数度だけ俺の夢に訪れた。
 というより、無理やり寝させてないか?という頻度で来た。
 それってズルじゃないか?
「それってズルじゃないか?」
 そりゃ夢の中で訴えもする。こいつなんて言ったと思う?
「一日一度とは言っていない。私には時間がないし移動も制限されるだろう。二歩目に来たなら三歩目も同じだ」
「へっりくつだ~」
 夢の中の俺は、実に正直者だ。
 仕方がないので、焦燥さを隠さないこいつに、来るたびに教えてやった。

 俺は、モルフェウスの肩を叩いて労ってやった。
 俺は、モルフェウスの頭を撫でてやった。
 俺は、モルフェウスを物語にすると言った。
 俺は、モルフェウスの額にキスをしてやった。

 そしてモルフェウスは、俺の元へ二度と会いに来ない奴になった。
 一人、言えずじまいだった。
 
葬儀の後、橋でデスと話をした。
 俺の不死は継続だと伝えた。
 賭けは、モルフェウスの負けのままでないとな。
 彼女とはモルフェウスの話をした。そうした別れ際に俺が言ったのだ。
「あんたが俺のところに来た時に何をしたか、モルフェウスに伝えそびれた」
 俺の友人の姉は、俺を抱きしめたのだ。抱きしめて、愛しているわと言った。
 弟の友人を、弟のように。

「面白い事をしていたのね。あの弟と」
 デスはもう、いつもと変わらない笑顔になっている。
「そうさ。あいつは結構、俺の前だと面白い奴だからな」
 俺はしばらく、喪失の寂寞と二人三脚で生きていくよ。
 あの新しい王は俺の新しい友人であって、お前じゃないモルフェウス。
 だから、俺はこれからもお前の世界を見ていく。
「まだまだ俺は生きるんだ。また俺の知らない奴が来た時が楽しみだよ」
「そうね。その時は私にも教えて」
「ああ。俺が生きている間にしてくれ」
「ふふ、それは」
 その時がくれば分かるわと、彼女はモルフェウスの面影を乗せて美しく笑った。
 愛を知る者は、人間であれ無かれ、美しい。
 そのことを当の本人がどこまで気づいていたのか知れなくなったのが、とても寂しくて仕方がない。
「その時は、ずっと愛していると俺がモルフェウスに言う時でもあるな」
 だから、悠久を賭けて教えてやろう。
                  完