ちよど
2025-07-22 15:57:26
2800文字
Public カルヨダ
 

カルナさんが親の愛情に気づく話

現パロカルヨダ。カルヨダが屋外ビュッフェでおしゃべりしたりする話
続き「カルナさんがパパにスカウトされる話」https://privatter.me/page/6882e5e7127ae

「なんでもいいから商品を持ってこい!!」
 突然駆け込んできたカウラヴァ御曹司の強盗のような叫びに宝石店のスタッフは飛び上がった。



 一時間前
 ドゥリーヨダナとカルナは屋外でのふたりきりのビュッフェを楽しんでいた。
 珍しく晴れた丘の上。ゆったりと並ぶ木々には小さな赤い果実がいくつも房のように実っている。その下に並べられたテーブルにはトマトが散りばめられたグリーンサラダ。ナスとアスパラのマリネ。パプリカなどが入ったラタトゥイユなど少し季節を先取りした夏野菜が並んでいる。もちろん、他にもグリルで焼かれた各種肉や魚。トウモロコシなどの天ぷらに焼きおにぎりや冷やしうどんなどもある。ケーキやタルト、かき氷やアイスクリームなどのデザートは冷蔵、冷凍のケースに入れられ、色とりどりのドリンクサーバーは飲みきれないほどに設置されていた。
「カルナ、好きなだけ食べていいぞ」
 少し離れたテーブルでどっかりと椅子に座っているドゥリーヨダナに陶器の皿を持ってうろうろしていたカルナは振り返った。
「無駄がすぎる」食べきれません
「気にするな。余ったらボディガード達の土産にする」
 遠くに離れているラフなシャツ姿の彼らにちらりと目線を送って、ドゥリーヨダナは軽く手を横に振る。
「おまえの二十歳の誕生日祝いだ。給仕もなにもかも下がらせた。好きに取っていいぞ」
 ドゥリーヨダナの言葉にカルナは目元を緩めた。カルナは貧しい家庭の出身だ。給仕もボディガードも縁が無く、大財閥の跡継ぎであるドゥリーヨダナと付き合うようになっても彼らに慣れることが出来ずにいた。ドゥリーヨダナはそれに気づいてこんなセッティングをしたのだろう。
「かーるな。ついでにその実をいくつか持ってきてくれ」
 指示されて視線をあげると料理の上に伸びた木にも小さな赤い果実がいくつか実っていた。手を伸ばしてもぎ取ればちくちくとした感触に驚く。果実は小さな毛で覆われていた。
「食べられるのか?」
 疑問にドゥリーヨダナが手招きする。カルナは手近にあったサンドイッチの皿にいくつかの果実を乗せてテーブルへと向かった。
 テーブルは縁に透かし模様の入った白いクロスが掛けられている。並べられている皿も薄い陶器だ。屋外で使う品ではないが、ドゥリーヨダナは構わずカルナの皿から赤い果実を摘み取った。びっしりと毛が生えた皮に爪を立てる。そのまま一周。ぺろりと皮が剥がれて白い果実が現れた。
 行儀悪くそのまま口に放り込んだドゥリーヨダナにカルナも真似をする。甘い酸味が口に広がった。
「どうだ? 日持ちせんので生はほぼ流通しておらんのだ」
「独特だな」美味しいです
 そう答えてカルナは柔らかい曲線を描く椅子に腰を降ろした。
 青い空を仰ぐ。
天気予報では雨だったが」
「スーリヤに依頼したからな」
 新しい果実を向きながら答えるドゥリーヨダナにカルナは目を瞬かせた。
「スーリヤ?」
「気象制御を生業とする多国籍企業だ。人工消雨を得意としておるな。──他にも人工降雨を得意とするインドラがある。そっちのCEOはアルジュナの父親だ」
「そうか」
 淡々としたカルナにドゥリーヨダナは唇を尖らせた。
「そこは『なんで叔父上がいるのに父親が違うんですかぁァ!?』って突っ込むところだろう!」
「そういうこともあるだろう」
 ドゥリーヨダナはため息をついた。
「まあ、いい。パーンダヴァの連中の人助け列伝など語りたくないしぃ」
 少し拗ねた様子のドゥリーヨダナを見てカルナは果実とサンドイッチが乗った皿を中央に置いた。先に選んでいたアップルジュースを手元に引き寄せる。濃厚な味にカルナが動きを止めている間にドゥリーヨダナが当然のようにサンドイッチをひとつ摘んだ。
 カルナの手が果実を摘む。
「どれほど持つ?」
「──ああ、2,3日といったところか。成人祝いをもらったのか?」
「ああ。母からこれを」
「みせてみろ」
 カルナが取り出した黒いカードを受け取ってドゥリーヨダナはじっくりと検分する。何も書かれていないただ真っ黒なそれは見覚えがあるものだったが、カルナにはそぐわないものだ。無言で促すとカルナは口を開いた。
「捨てられていたオレの産着に差し込まれていたものだそうだ」
「!!」
 椅子が柔らかな草の上に転がる。突然立ち上がったドゥリーヨダナはカルナの手を引っ掴んだ。
「行くぞ!!」



 現在
 街一番の宝石店に連れ込まれたカルナは途方にくれていた。
 血相を変えたドゥリーヨダナに丘の上から車に押し込まれ、ボディーガード達を置き去りにする勢いでここに連れてこられたがその理由が全く分からない。
「なんでもいいから商品を持ってこい!!」
 ドゥリーヨダナの剣幕に弾かれたようにスタッフが大ぶりのブローチを持ってくる。それを見もしないでドゥリーヨダナはカルナの黒いカードを掲げた。
「会計だ! あの端末を!」
 他のスタッフが慌てて長方形の機器を持ってくる。ドゥリーヨダナは慣れた様子でそれにカードを差し込むとカルナを引き寄せた。
「画面を見ろ!」
 小さなモニターにはカルナの顔が映っている。
 ピン!
 チェックマークが出てカルナは首を傾げた。その横でドゥリーヨダナが硬い声で問いかける。
通ったか?」
「あ、はい」
 スタッフの答えにドゥリーヨダナは息を吐いた。
「そうか。──カルナ。帰るぞ」
 腕を引かれたカルナはとりあえずドゥリーヨダナが放置したブローチを掴み、車の中に戻る。
 ラウンジのような後部座席にふたりで座ると、ドゥリーヨダナは運転席との間にシャッターを下ろした。黒いカードを閃かせる。
「カルナ。これは虹彩認証式のクレジットカードだ。つまりおまえしか使えず、わし様ですら一枚しか維持出来ないほどコストが高い」
………オレが拾われてから二十年だ」
 声を震わせるカルナにドゥリーヨダナはカードを渡す。黒い表面がカルナの顔を写した。
 カウラヴァ御曹司のドゥリーヨダナですら一枚しか持てないカード。一度も使われなかったそれを二十年維持し続けた誰かがいるのだ。
 カードを見つめたまま俯いているカルナの横でドゥリーヨダナは窓の外へ視線をやった。
「そいつはわし様クラスの金持ちだろう。だが、そんなカードを持たせるぐらいなら何故」



 現在
 小さく鳴った端末に彼は眉を上げた。
 正面のスクリーンで新方式の説明をしていた社員が体を強張らせる。
 こんな大事なプロジェクトの会議中に端末を鳴らすなど許されない。緊張感が走った人々に構わず彼は立ち上がる。
「意地汚い姿を見に行くとしよう」
「CEO!」
 呼び止める声を気にすることなく彼は会議室を後にし、端末の決済通知を確認する。
ブローチ?」


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