ながひさありか
2025-07-08 09:07:55
2763文字
Public STR-Phaidei
 

レイト・ハネムーン2-1

いちゃいちゃ旅行編

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 部屋に差し込む強い日差しと潮の匂いに髪を撫でられ、ファイノンはぼんやり目を覚ました。カーテンを引き忘れただろうか、と寝ぼけたまま考えて、隣に手を伸ばす。もう起きて仕事に出てしまっているような気がしたが、既に冷えたシーツに触れることなく、その手は愛おしい体温へと辿り着いた。
 そうだ、自宅じゃないんだった。時差ボケのせいか、はたまた幸福すぎてぼんやりしているのか、どうやら夢見心地だったらしい。ファイノンはベッドに腰掛けて何やら端末をいじっているモーディスの腰に腕を回して、ベッドの上に横になったまま移動する。
「おはよう」
 いつもと同じ調子の低い声、と言うには随分と穏やかで、幸福が滲んでいた。それに自分も嬉しくなりながら、「おはよう」と答えた声は寝起きで少し掠れて、ふにゃふにゃのあくび混じりだった。
「時差ボケか? もう少し寝ていればいい」
 そう言って髪を優しく撫でてくるモーディスの言葉に甘えて、心配されていようかな、とファイノンは一瞬思ったが、「いや大丈夫」と答えて、スウェットとTシャツの隙間の素肌に口付けた。
 くすぐったそうに笑ったモーディスが「おい」と髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜてくるのに笑いながら、「君は朝食は済ませちゃった?」とようやくベッドから起き上がる。
「まさか」
 喉の乾燥を覚え、ファイノンが喉に触れるのと、モーディスが冷えた水を差し出してくるのは殆ど同時だった。起きてくる時間を予測していたのか、随分と用意がいい。
 君って本当に僕のことなんでもわかってるんだな。今日に限らず、モーディスはいつだってそういう男なのだと知っている。
「ありがとう」
 普段の生活圏とは違うからりと乾燥した空気と潮のにおい、海風が髪を撫でてくる感触、眩しい陽光がベッドの下半身に当たる半分を斜めに照らしている。窓から見える外の景色は白い建物と青い海ばかりで、波の音と海鳥の鳴き声が小さく聞こえていた。天国ってこう言うところを言うのかもしれない。
 微かに柑橘類の香りのする冷たい水が体に染み渡る感覚に、ほっと息をついた。ベッドサイドの白く小さな円形のテーブルにグラスを置き、スマートフォンで何やら現地のグルメ情報を(来る前にも散々調べたけれど)眺めているらしいモーディスの頬にキスをする。
………………
 モーディスはファイノンへ数秒視線を送り、無言でベッドに端末を置いた。画面には滞在中のどこかでランチに行こうと話した海辺のレストランが表示されている。
 無言で唇にキスを返してくるモーディスの片手がファイノンの肩に置かれ、すぐに唇だけが離れて行く。
 しばらく無言で見つめ合ってから、ファイノンは期待するように僅かに細められた金色の瞳の目尻に口付け、そのまま耳の方へと唇を滑らせて行く。耳の付け根から輪郭を唇でたどり、顎先から再び唇に戻る。
「朝食はいいのか?」
 既に熱の混ざったモーディスの声に、「先に食事にしようかな」と言うはずもなかった。ぞくりとファイノンの背を熱が駆けて行き、体の内側に火がつく感触がする。
「君が今すぐそうしたいのでなければ」
 キスを繰り返しながら、モーディスの腰を抱き寄せる。ベッドから降りていたモーディスの足も持ち上げてベッドに乗せると、服の裾から手を差し入れて、鍛え上げられて筋肉のへこみを手のひらで撫でた。
 口付けを繰り返すたびに体重が寄りかかってくるのを感じながら、触れるたびにあえかな息が溢れるのに耳をそばだてた。
 ファイノン。熱っぽい声で名前を呼ばれ、鼓膜から心臓を撫でられたような気がした。ファイノンはモーディスの長い髪を耳にかけて、背中の方へと流してやる。うなじを指先で撫でながら舌を絡ませていると、気持ちよさそうに鼻から息が漏れて、っん、とモーディスの体が跳ねる。
 そう言う声が好きだ。腰が疼いて、途端にずくりと重くなってくる感触にハ、とファイノンの口から呼気が漏れた。
 愛してる。キスの合間に囁くように零しながら、じわりと熱を帯びて来た体をベッドに押し倒す。布地を押し上げるほどに鍛えられた厚い胸を手のひらで揉みしだきながらキスを続きていると、モーディスの手もファイノンの体に触れる。布越しにすりすりと腹から胸を撫でられたかと思えば、膝頭が不躾に押し当てられて、思わず「う」とファイノンは声をあげてしまう。
 しばらく触れられもしない期間が長かったからか、長期出張から帰還して以降ずっと、モーディスに触れられるといつも以上に興奮してしまう。それは多分彼も同じだろう。そうだといいな、とファイノンは唇の端を持ち上げて笑っている男を見下ろす。
「もうちょっと我慢できないのか?」
 こら、とファイノンはモーディスのわるい膝に触れ、両膝を立たせて間に体を納める。
「する必要があるか? ……っ!」
 スウェットを押し上げるそこに手の甲で触れてやると、モーディスが顔をシーツに押し当てるように横に向けながら、小さく声を漏らす。やわやわと手のひらで形を確かめるように優しく揉みながら、首筋に顔を埋めて、音を立てながらキスをする。痕をつけないように優しく、慎重に。
 肩から二の腕を撫でてくるモーディスの声が、どんどん濡れて行くのに興奮していた。
 ファイノン。愛おしさが音の端々から滲むような、低くて熱っぽい声だった。それがファイノンの肌の上を走り、体の中に染み込んでくる。
「愛してるって言ってよ」
 いいだろそれくらい。モーディスの服を胸までたくし上げて、胸に唇を落とす。別に言ってもらえないわけではないけれど、ファイノンに比べればモーディスは口数の少ない男だった。態度や表情から伝わって来る愛情を疑ったこともない。よくわかっている。それでもやっぱり、言葉にして欲しい時だってある。
 ファイノンが既に服の上から擦られてピンと硬くなったそこを指先でさすると、モーディスの腰が跳ねて、ぎゅう、と膝が閉じられる。感じてくれている。痙攣する体に胸が熱く満たされて行くのを感じながら、膝を掴んで足を広げさせた。
……愛してる」
 恥ずかしそうに、目許をやや染めて呟かれた言葉に思わず笑みが溢れた。金色の瞳が光を取り込んで、陽光よりも眩しくちかりと光る。欲情したモーディスの目はとろりと濡れていて、普段よりいっそう美しい。
 この眩しい男に愛され、慈しみを向けられている。そう感じるたびに、選ばれた、選んでくれたのだと征服欲に似た何かが首をもたげて、ぞくりと背骨を走って行く。誰にも渡さない。離したりしない。
 僕が君のものであるように、君も僕だけのものだ。


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