Kaori
2025-07-06 09:05:00
1542文字
Public ウルトラマンアーク
 

願い事は秘密

ウルトラマンアーク放送開始1周年おめでとうございます! 記念SS おまけ。
SKIPのみんなが七夕に願う事は。


その日、SKIP星元市分所を訪れたシュウを出迎えたのは、色鮮やかな七夕飾りだった。

「お疲れ様です……これはいったい……?」
「シュウさん、お疲れ様です! きれいですよねー」
「近所の幼稚園の怪獣災害避難訓練を手伝いに行ったら、園長先生が余った笹を分けてくれたんだ」
「せっかくなので、分所でも飾ってみました」
「高いところはユピーにおまかせ!」

壁に立てかけられた笹は人の背丈ほどある。そこに紙製のカラフルな飾りがいくつも吊り提げられていて、分所内の雰囲気が賑やかになっていた。

「短冊もあるんですね」

飾りの中に交じる細長い紙を見つけて、シュウは手に取って眺める。
『怪獣災害が減りますように』『迅速な避難誘導!』『子供たちがSKIPに興味を持ってくれますように』……このあたりまではSKIPらしいな、と思っていたのだが。

『最新機材購入の稟議申請が通りますように!』
『宇宙科学局データベースへのアクセス権が拡大されますように!』
『お小遣いの使い方で怒られませんように』
『リンがお小遣い値上げしてくれますように』
『柴犬!』
『ツグミがいつまでも一緒に出かけてくれますように!』
『おばあちゃんにうまく説明できますように』
『トイレ以外の言い訳を思いつきますように』

……皆さん、相変わらずですね……

いや、ある意味これはこれでSKIPらしいのかもしれない。

「まだ短冊あるので、シュウさんも書きますか?」
「好きな色選べますよー」

ユウマとリンに促されて、勢いで赤い短冊とペンを受け取ってしまった。
だが、こういう行事に慣れていないこともあって、さらりと願い事が出てこない。
しばらく短冊を前に固まっていたシュウはどうにかペンを動かし始める。

『SKIPの皆さんと』――――――そこまで書いて、ふと手が止まる。

「えー、シュウはどんなこと書くんだろう!」
「こら、ユピー! 人が書いてるときに邪魔しない!」
「あ、ごめんなさいー!」
「いえ、大丈夫です」

すぐに続きを書き終わって、シュウは短冊を笹に提げた。

「『SKIPの皆さんとコーヒーを美味しく飲めますように』……シュウさんも相変わらずですね」

ユウマの声が心なしか呆れているようだが気にしない。

「私がいつも思っていることを書いただけです」
「シュウさん、最初にここに来た時からコーヒーって言ってたもんね」
「ああ! そういえば石堂さんが分所に来てからそろそろ一年か」
「もうそんなに経ちましたっけ!?」
「シャゴンがウーズに寄生された事件は、ちょうど一年前に発生してるよ!」
「あの時は僕、びっくりしました。宇宙科学局から派遣されてきた調査員の人が、コーヒーがないことであんなに取り乱すなんて思わなくて」
「私も、まさかインスタントコーヒーすらない職場があったなんて驚きでした」
「だからってあれは人が変わりすぎだったよね」
「そんなことありません」
「いや、リンさんの言うとおり、ありましたよ、シュウさん」
「ありません」
「ありましたって」

そんな会話をしているうちに皆の意識が短冊から逸れていったので、シュウが短冊を書きかけて躊躇ったのには誰も気付かないままだった。
シュウが書こうとしていた本当の願いは、彼の心の裡に静かに仕舞いこまれる。
けれどきっと、その秘められた願い事も七夕の星空は受け取ってくれるだろう。


――――――『SKIPの皆さんといつまでも楽しく過ごせますように』










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