ユウマとシュウが外に出ると、さきほどまで降っていた雨はすっかり上がっていた。
「調査に出る前に止んでくれて助かりました」
「ですね
……あ、シュウさん! 見てください、あれ!」
先に気付いたユウマが、空を指さす。
「美しい虹ですね」
二人の視線の先には、大きな虹が弧を描いていた。
薄灰の雨雲と夏の青が混じる空に、光のスペクトルが帯になって広がっている。
「そういえば一年前もこうやって一緒に虹を見上げていました」
「ああ、シュウさんが初めてSKIPに来た日!」
出会ったばかりのユウマを庇ってくれたシュウが意識を失って、彼を守るためにユウマは変身した。怪獣を倒して元の姿に戻ったユウマがシュウの元に駆け寄ったとき、まだアークの軌跡が空に残っていた。
そのとき交わした会話は、今もユウマの中で鮮やかに思い起こすことができる。
「あのときシュウさんが “アーク” という名前を付けてくれたんでした」
初めて耳にしたのにとてもしっくりと感じた、 “ウルトラマンアーク” という響き。
「そうでしたね
……しかし改めて考えてみると、知らなかったとはいえ本人を目の前にして、勝手に名前を決めてしまって良かったのでしょうか」
「
……え!? 今さらじゃないですか!?」
「それはそうなのですが。ユウマくんに教えてもらったとおり、彼には元々は別の名前もあったそうですし」
「うーん
……本人からこの名前について不満を聞いたことはないですけど」
ユウマは胸に手を当てて自分の内側に意識を向ける。今でも特に反発するような気配はない。
それに。
「あのとき “アーク” と名付けてもらえて、僕はとても嬉しかったですよ」
シュウに顔を向けてはっきりと告げる。
眼鏡の向こうで、シュウの目が見開かれた。
「あの頃はまだ僕も変身し始めたばかりで、自分の中にある存在のことがよくわかってませんでした。でも、シュウさんが “ウルトラマンアーク” という名前をくれて。それからはアークの力がイメージしやすく、より身近に感じられるようになりました」
まだ何もわからない力だったけれど、わからないなりに受け入れて進んでいけるようになったのは、シュウが名前を付けてくれたからだ。
「だから、僕は “アーク” という名前が大好きです」
シュウは何度か瞬きをして、それから瞳が柔らかく細められる。
「そうですか。それなら良かったです」
再び虹に視線を向けたシュウが、あ、と小さく声を漏らす。
「ユウマくん、あそこ。虹がもうひとつ出ています」
「?
……あ、本当だ!」
はっきりと浮かぶ虹の外側に、うっすらともう一本の虹が重なっている。薄い色合いなので最初は気付かなかったが、陽射しの加減か二本目もよく見えるようになっていた。
「外側の虹は、色が逆になるのですね」
「でも元の虹と同じ色です
……なんか
アークと
黒いアークみたいですね」
「え?」
「ぱっと見は違うように思えても、本質は同じというか
……」
うまく説明できなくて途中で言葉があやふやになる。
それでも言いたいことは伝わったようだった。シュウが微笑んで頷いてくれる。
「なるほど。そうですね」
一年前は一本だった虹色の軌跡が、今は二本の軌跡になった。
それは名付けられたこと以上にユウマの中で大きな力になっている。
そしてそれはきっとシュウの中でも同じはずで。
「それじゃ、調査に行きましょうか!」
「はい!」
大きく笑って、ユウマとシュウは虹に向かって足を踏み出した。
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※もうひとつ、記念SSおまけもあります。
https://privatter.me/page/68694cbee012b
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