万丈
2025-06-22 17:40:51
2472文字
Public 小説
 

夜明けの残滓

【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
最終決戦直前のインドラ様。
どこまでも独りなインドラ様。
。゚(゚´ω`゚)゚。

前の話→雷帝と那羅王2


インドラは、レンゲを起こさないよう、細心の注意を払って寝台を降りた。
この悪夢を、この罪悪感を、彼女に共有するわけにはいかない。これは、インドラ一人が背負い、そしていつか、その重みに潰されて死ぬべき罰なのだ。

彼は静かに衣服を整え、ゆったりとしたマントを羽織る。鏡に映る自分の顔は、血の気が引いて青白い。だが、その瞳は、いつものように感情を殺した、冷たい光をたたえていた。

向かう場所は、決まっている。夜明け前の、まだ誰一人として目覚めていない天空殿は、墓標のように静まり返っていた。

自らの足音だけが、大理石の床に虚しく響く。長い回廊を抜け、重い扉を押し開ける。その先にあるのは、天空殿の最奥。かつてヴィシュヌの祈りの場であった、神聖な大広間。

その中央に、彼女はいた。
石と化したヴィシュヌが、苦悶に満ちた表情のまま、静かに佇んでいる。
インドラは、その前に立った。
悪夢の中のように、砕け散ってはいない。頬に黒い光流が掠めた傷跡は残っているが、その神々しいまでの美しさは、損なわれていなかった。

彼は、ただ黙って、ヴィシュヌ像を見上げていた。謝罪の言葉も、許しを乞う言葉も、口にはしない。そんな資格は、自分にはない。

間もなく、シヴァ様は完全に復活なされる。そうなれば、天空界はアスラとデーヴァの全面戦争に突入し、ヴィシュヌ様は破壊の渦に巻き込まれるだろう。
わかっていた。だからこそ、彼女を守るため、手を下さねばならなかった。だが、できなかった。この手で、彼女の命を絶つことだけは。

シヴァへの忠誠と、ヴィシュヌへの恩義。その二つの間で引き裂かれ、インドラが選んだのは、石化という名の延命措置だった。それは、彼女への愛情故の、あまりに卑劣で中途半端な決断。
殺すこともできず、かといって、完全に守ることもできない。この石像は、インドラ自身の迷いと弱さの象徴そのものだった。

悪夢は、彼が犯した罪への、的確な罰だった。そして同時に、彼自身が心の奥底で望んでいる結末の現れでもあった。ヴィシュヌ像が砕け散り、その破片が自らの胸を貫く。それこそが、インドラが望む、唯一の救済の形なのかもしれない。

やがて、東の空が白み始め、大広間のステンドグラスを通して、夜明けの光が差し込んできた。光は、まるで懺悔を促すかのように、インドラとヴィシュヌ像を静かに照らし出す。

…………

インドラは、ヴィシュヌ像に背を向けた。夜明けの光が、彼の長い影を床に伸ばしている。それは、彼がこれから歩む、孤独な破滅への道のりのようにも見えた。

いつか、本当にこの身が砕け散る日まで。
その日まで、この悪夢は終わらない。この罪悪感が、消えることはない。
インドラは、夜明けの光の中で、己の運命を改めて静かに受け入れた。彼の癒えることのない孤独は、レンゲという温もりを得てなお、誰にも救われることなく、ただ、天空殿の静寂の中に深く、深く沈んでいった。