いを
2025-06-22 17:33:22
2563文字
Public 刀神
 

まどかなる星の常/ある日の手記

青嵐
・鴨さん【yasuinokikaku】
・鉄斎さん【EBIFLY_72】
・某お方【Metol_P】
お借りしています



(ある日の手記)

 化野鴨と千葉鉄斎という、ふたりの男を知っている。
 彼らは私には分からない――見えないといったほうがよいだろうか――糸が絡まっているようだった。前者は周りから怖れられる男、後者は何者にも手を差し伸べる男。ともすれば正反対のふたりだった。どうもしない――、いや、どうもしないほうがよいのだとは思うが、目もとを隠した男にぶれる大蛇をいつか、見た。その大蛇がなにを考えているのか、なにをしたいのかは私にも分からない。分からないが、放置してはならない存在だということは分かる。彼を――化野鴨を依り代としているのか、それともただ純粋な「呪い」なのか。が、彼にも詳細は知らないと見える。知らないものを語れとはいえまい。あの大蛇がなんらかの行動をおこせば語れるのかもしれないが、化野鴨、あるいは千葉鉄斎という男にとって私という存在は特に気に掛けることもないのだろうと思う。それでも私は術師として生まれたのだから、起こりうることを無視できない。が、私も人間であるため、万能ではない。いつかかけた呪いに食い潰される日がくるのかもしれない。それもまた運命であり、この身に必要な罰だというのなら大人しく身を滅ぼそうと思う。だがその前に、彼らふたりが選ぶ結末を見届けたい。彼らがなにを選び、あるいはなにを捨てるのか。その選択の行く末を。その選択の手助けができるのなら、私は彼らを友人と呼びたい。憎しみよりも大切なものを、私はもしかすると見つけられるのかもしれない。



 おそらく私のからだは、もってあと二十年。七十は超えられないだろう。呪いをかけ、呪いを受け、破滅する我が身を私だけは肯定する。そして私の命の使い道を、私が信仰する神は肯定すると信じている。私はあなたのために死にたいのです。あなたのなにかに成れれば、それでいい。それで十分、生きた甲斐があった。いくつで死のうが、あるいは殺されようが、変わらない感情がたったひとつだけでもあれば、人間のように――情に殉じたと言えるだろうか。言えるのなら、これほど嬉しいことはない。幸せなことは、ない。幼少期に施された「人間のように生きてはならない」という呪いからようやく、脱することができるのだろう。私が愛した相手が神であろうと花であろうと、愛を知ることができたのは、私と隣り合ってきた呪術という存在と一切関係の無い、私の、ヒトである場所の、唯一の矜恃でした。あなたが愛を知っていても知らなくてもよかった。人間というものはとても傲慢です。自分さえよければ、それでいいと思ってしまう部分があるのですから。この傲慢さを嫌悪してもしなくても、私があなたに殉じることができるなら、どちらでもいい。愛させてくださって、ありがとうございます。けれどこんな言葉をこれから先、あなたにはきっと言えない。言えない言葉を、ここに書き残すことをお許しください。



 これらを記し、一旦筆を置きます。
                  雲井青嵐