みずあめ
2025-06-21 23:00:19
1807文字
Public brmy
 

ゆづあい

この学パロゆづあいと同じゆづあいです。今回も🎞️がずっといます。
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夏に向けて衣替えをしてから、初めて皇坂先輩を見つけた。廊下の先に見えたその姿に俺はその場から動けなくなってしまった。
一緒に歩いていた恋くんが数歩先に進んでから俺が隣にいないことに気がつき振り返る。彼は目を見開いた俺の視線をすぐに辿り、ああ、と小さく呟いた。
「逢先輩か」
「な」
「ん?」
「夏服の、先輩……
白いシャツは長袖だけれど暑さからか袖を折っていて、そこから手首が覗いていた。日焼けをしていない肌は遠目からでも眩しいくらいに白い。冬服の時には分からなかった、シャツ一枚で遮られただけのしっかりした身体つきが見て取れて鼓動が早まる。
あまり見つめていては視線に気が付かれてしまうことは分かっていたのに、どうしても逸らすことができなかった。俺のところまで戻ってきてくれた恋くんがさりげなく俺の向かい側に立ち、だけど皇坂先輩を遮らないように少し体を斜めにしてくれる。
微動だにしない俺をははっと笑う声は呆れているというより楽しんでいるように聞こえた。
「去年の夏は、逢先輩のこと知らなかったんだっけ?」
「知ってたよ。もちろん知ってたけど、……好きに、なったのは、その後で」
「あ、そういえばそれ気になってたんだよな。いつからなの? なんかキッカケとかあったわけ?」
「それは……、っ! こ、こうくん、もっとこっち」
「わっ、なに?」
ぐいっとシャツを引っ張って恋くんの体を盾にする。一瞬だけ視線が重なった気がする、けど、気が付かれてしまっただろうか。
「由鶴?」
「ごめん、目が合った気がして」
「ああ、なるほど。……気のせいじゃないみたいだね。どーも、逢先輩」
「ああ。……城瀬?」
「っ、は、はい、こんにちは、お疲れ様です」
……?」
「あー、先輩、なんか用事ですか?」
俯いたまま挨拶をする俺を誤魔化すみたいに、恋くんが皇坂先輩と話をしてくれた。頬の熱が下がってくれないのは、初夏の暑さのせいだけじゃない。
……、今日の放課後、予定は?」
「俺? 今日は部活に顔出したいから生徒会は行かないけど。なんか急ぎの仕事ですか?」
「先週の雨で貸し出し用の傘がいくつか紛失している。来週も雨の予報があるから貸し出しノートと返却済みの傘を照らし合わせて返されていないものの把握を…………城瀬は、今日の予定は?」
「え!?」
「ああ、そっか、由鶴がいるじゃん。由鶴、今日空いてるよな? 生徒会長のこと手伝ってあげてくれない?」
「え、でも、他の生徒会の人とかは」
「部活が忙しい時期だし、夏休み前に片付けなければいけない雑事が溜まっていて、今日は人が出払っている。猫の手も借りたいくらいだ」
……でも、俺がお役に立てるとは」
「猫の手よりよっぽど役に立つって。てことで放課後……あー、逢先輩、連絡先教えておいていい? 俺が中継役するより楽でしょ」
……あぁ、構わない。助かる」
……!?」
「邪魔したな。また」
「はーい、お疲れ様です」
…………え? こ、こうくん? なに、どういうこと?」
「放課後、逢先輩と二人っきり〜。やったね」
「ふた……!?」
相槌もうまく打てなかったのに、それでも恋くんのおかげで会話は流れるように進んでいた。俺の認識違いでなければ今日の放課後は生徒会の仕事を手伝うことになったらしい。そしてそれは皇坂先輩と二人きりで、ついでのように連絡先まで交換することになっている。
……ね、ねつ、出そう」
「大丈夫大丈夫。ごはん食べ行こ。一人前なら奢ってあげるし」
「食べられないかも……
「はは、大丈夫、風邪のときも食欲落ちないって自分で言ってたよ。ごはん食べて、逢先輩の連絡先教えてあげるね」
……夢じゃない?」
「ほっぺつねってあげようか。ていうか赤いな、まじで熱じゃないよな? 保健室行く?」
…………ごはん、食べる」
「そ? ついでに午後の授業はサボっちゃう?」
「だめだよ。皇坂先輩に合わせる顔がなくなる……どうしよう、本当に、俺、……恋くん、一緒に来てくれないの?」
「俺に部活サボれって?」
…………ううん、ごめん。恋くんに迷惑かけてばっかりじゃダメだよね。がんばる」
「ん、がんばれ。めちゃくちゃ応援してる」
「ありがとう」
昼休みと午後の授業の間に心臓は落ち着いてくれるだろうか。目を瞑ったら皇坂先輩の顔が浮かんでまた鼓動が早くなった。